キバリんへの捧げ物。

うちのオリキャラさんが出るよ。キバリんは知ってるはず。
もこけね、を目指したらなんと。






「あれ、慧音花なんて育ててたの?」

慧音の家の玄関に、一本の鉢植えがあった。茎が何本も枝分かれし、その先端に紅のような花がみっちりと詰まっいる。葉っぱは楕円形をしている。少し、不気味な感じもした。

それを見た妹紅はじっとそれを見つめる。妹紅の声に気づいたのか、家からひょっこりと慧音が姿を現した。

「それ可愛いだろ?私のお気に入りなんだ。」

「そうかな?私はあんまり可愛いって思わないんだけど…」

秋の、涼しい風が吹く。日差しはそれほど強くなく、冷涼な空気が世間を包み込んでいた。

妹紅は愛おしい人が可愛いと言った花を再び見つめる。何となく、好きにはなれなかった。

「…趣味悪くない?」

「そんなにその花が嫌いか?」

「嫌いっていうか…なんていうか、ちょっと不気味。魔法の森の中の、もっと薄暗いところに生えてそうな、そんな感じがする。」

そうか、とちょっとだけ切なそうに笑う。その笑顔を見て、少しバツが悪くなったものの、自分はこう思ったんだという気持ちからそれを謝ることは無かった。

慧音が言うには、幻想郷にはまだ珍しい花らしく、ある人に分けてもらったという。夢魔のようで厳密には夢魔ではない、感情を花にするという珍しい能力を持った妖怪がこの幻想郷にいるとのこと。

面識は無かったが、その存在を聞いて、実際に会ってみたらその花を譲ってくれたそうだ。

「ふぅん…全然知らなかった。」

「私も知らなかった。外に出てくることはほぼないそうだからな。可愛いやつだったぞ?」

「…私より?」

「妹紅よりは可愛げはあるが…私が好きなのは、妹紅だからな。」

好きと可愛いを取り違えかけている妹紅にそんな言葉を投げる。少し恥ずかしくなって、顔をそっぽに向けた。紅の花が、風になびいてゆらゆらとゆれている。

「そういえば。この花の名前、何て言うの?」

「…内緒だ。」

そう言う慧音は、少し頬が赤い気がする。それに気づかない妹紅は、何で秘密なのかと問い詰めた。

が、大した返事はくれず、自分で調べろと言って教えてくれなかった。珍しい花をどうやって調べろっていうんだと思いつつ、調べるならこれしかないなという一つの案が出てきた。

ある人からもらったというのなら、そのある人を探し出して、会いに行けばいい。そうと決めると、すぐに慧音の家を飛び出し、知ってそうな人を探しに行く。

その姿に手を振るように、紅の花が風に靡いていた。


  ・
  ・

「感情を花にする妖怪?あたしは知らないなぁ…」

「私は知っていますよ。会った事あります。」

「え、いつの間に。」

アリスの家で、穣子と衣玖を訪ねる。正直穣子を頼りにして来たのだが、意外なことに知っているのは衣玖の方だった。

どうも、気圧が不安定になっていた時期があり、その異変の調査に向かったときにたまたま出会ったらしい。確かにそれは空を泳ぎ、空気の流れに敏感な彼女しか分からない異変だろう。

「そのお方はその異変とは殆ど関係なかったのですが、黒幕…?だったお方の屋敷に住んでいまして。それで知り合うことになったのです。」

「へぇ…弱いって思ってたけど、衣玖さん、異変を解決する力あったんだ。」

凄く失礼な妹紅の一言。その言葉に少し苦笑しながら、

「…話し合いで解決してしまったのです。」

「……」

不思議と、納得させられた。

「向こうは悪気があってやったわけではなかったようなので…と、話が逸れてしまいましたね。よろしければ私が途中まで案内しますが。」

そちらの事情をむやみに聞くわけにはいきませんから。途中まで、というのが少しひっかかったが、最後まで居ないことに関しては彼女なりの優しさなのだろう。

「それじゃ、お願いするよ。私だけだったらきっとたどり着けないだろうし。」

「はい、分かりました。…穣子はどうします?一緒に行きます?」

「今度で。あたし達は二人そろって、もこたんは一人けーね先生と離れ離れとか、もこたんが可哀想じゃんか。」

これは…気遣いなのか?

何はともあれ、その妖怪のもとに案内してもらえることにはなったからよしとしよう。


  ・
  ・

案内されたのは霧の湖から入った森の奥深くだった。

ある一箇所だけ、特別な場所に続いているところがあったらしい。そこに案内され、歩いて行くと一つの大きな屋敷が見えた。

その屋敷に無断で入り、いいのかとツッコミを入れたが大丈夫と返ってきた。紅魔館よりがさつな警備なんじゃないかここ。

…実際は面倒な奴が見張りをしていて、面倒な罠があったりしてやっかいだそうなんだけど。

彼女が居る部屋の前まで行って、私は衣玖と分かれた。可愛いやつとは言っていたが、慧音の可愛いはややアテにならない。一応いつでも戦える準備をして、そのドアを開けた。

中に入ると、一人の少女が座っていた。水色の髪に、青を貴重としたケープやスカート。スカートには、何かの花があしらわれていた。小柄な体から、レミリアのような蝙蝠を彷彿とさせる翼が生え、一般的な悪魔が持つような尻尾も生えていた。

部屋は明るく、窓からは立派な庭園が見える。一人に対して大きいような気がしたが、屋敷なんてそんなものなのだろう。

「……?」

こちらに気がついて、瞳の中に私の姿を映す。きょとんとした様子で、首を傾げた。

何か用か。よう尋ねるように。

「…最近、ここに人が尋ねてきて、その人に紅のこの、ちょっと不気味な感じの花を渡さなかったか?」

「……」

首を縦に振って、そっと胸の前で手を握り締める。

「!それだ!」

すると、そこからあの慧音が育てていた花と同じものが咲いていた。どうやら、彼女が言っていた能力は本当のようだ(最も、それが感情に当てはまったものかは確かめる術がないのだが)。

「その花のことを教えてくれないか?どんな花なのか、私に教えてくれないか?」

「……」

その妖怪は、目を細めてじっと私の姿を見ていた。

見ているだけで、答えが返ってこなかった。

「…お前、喧嘩でも売っているのか?売られた喧嘩は買うよ。」

「わあああ!ちょっとタンマタンマ!!」

唐突に、後方から誰かの叫び声が聞こえる。その声の主は息を切らせながら、その妖怪の前に壁になるように突然現れた。

全体が黒っぽいカラーリングで、くるりと曲がった角とクセ毛が特徴で、身長はそこの妖怪よりも小さい。まだまだ子供といった感じだ。

「ごめんよ、ご主人、喋れないんだ…」

「ご主人…ということは、お前はこいつの従者かなんかか?」

首を縦に振り、自分は使い魔で、名をランジアだと簡単に自己紹介をする。黒羊の妖獣で、触ったものに込められた想いを読み取ることができるのだと。

対する主人に当たる人物は花咲アザミというらしい。喋れなくなった理由を尋ねたが、それは答えてくれなかった。

「じゃあいいそこの羊、この花について教えてくれ。」

少し威圧的な態度を取る。が、それならと嬉々とした様子になったところあたり、悪いやつではないらしい。主人の方は面倒くさいとは思ったが。

「その花はバラ科多年草で、秋にそんな感じに紅色で可愛い花を咲かせるんだ。外の世界では結構有名なんだけど、どうやらもっと遠い場所に咲く花らしくって、幻想郷で野生で生えてるのはまだ見たことないよ。」

「ふぅん…で、名前は。」

「ワレモコウだよ!」

「!」

ワレモコウ。妹紅。思わず反応してしまった。

恐らく関係ないのだろうが、自分の名前が入ったその名前を聞いて、胸が打たれたような感覚を覚えた。

それだから、慧音はお気に入りと言ったのか。

「名前の由来は、『われもこうありたい』という儚い想いが込められたって説があるね。それとか…って、ちょっと!?」

それ以上は、聞けなかった。

じっと、していられなかったんだ。


「…やれやれ。なんだったんださっきの人…」

「……」

「ん、これさっき…あ、あの人の感情を出したんだ。…成る程、そういうことだったんだ。あぁ、全部分かった分かった。」

  ・
  ・

「慧音!」

「何だもこ

「さっきはごめん!!」

慧音に会うなり、すぐに謝罪の言葉が出た。

酷いことを言ってしまった。自分は慧音のことをある意味否定してしまった。

その花が、自分を考えて、そして気に入ってくれていたというのに。

しばらくポカーンとしていたが、すぐに何がどういうことか分かったらしい。ぎゅっと、私を抱きしめて言ってくれた。

「…花言葉は聞いたのか?」

「…聞いてない。もう、居ても立ってもいられなくなって。」

「そうか。それなら、教えてやるよ。」

優しく唇に触れる。懸命に背伸びをして、背の高いのそれに触れる。

「以前、お前は『私は不老不死だから、自分の時間は止まったままだ』って言っていたからな。でも、この花の花言葉は『移ろいゆく日々』。例え、不老不死だろうがお前は人間と変わらない。毎日、何かしら違う日々がやってくる。それを、この花は強く言っていて、いつか、妹紅も一緒になれたらなって。そう、思ったんだ。」

勿論、他の花言葉もあって。そこから先の言葉は慧音の口からは出てこなかった。

けど、私のことを思ってくれていることは、何よりも伝わったから。

「悪いな。その、わざわざ調べに行かせて…恥ずかしかったんだ。」

「私なんて、その慧音の想い真っ向から否定しちゃったし、それに、」

「それはもういい。それよりも、妹紅。」

 ずっと、私が死ぬまで、傍に居てくれ。

ワレモコウの花が、優しく揺れた。









けねもこでした!!
いやもうね。ワレモコウってただのもこたんじゃね?って思って、つい!
私もこうありたい、っていう願望とか、最後のワレモコウとか、今回も比喩をちらほら混ぜてみたよ!

とりあえずキバリん、お誕生日遅れてごめん、そして生まれてきてくれてありがとうっ!!















「いやーびっくりしたよ。衣玖さんのお友達だったんだね。」

「こちらこそすみません。いきなり単体でそちらに向かわせてしまって。」

数日後、アザミたちの元に衣玖と穣子が訪れた。というのも、あの慧音と妹紅とのやりとりを見て、一つ穣子は疑問に思ったことがあったそうだ。

「ねぇねぇランジア。ワレモコウの花言葉、『移りゆく日々』以外で何かない?」

「以外っていうのは?」

「けーね先生の感情かアザミさんの感情か知らないけど、そんな花言葉感情で表現しにくいだろーなーって思って。」

鋭いね、とランジアは苦笑する。アザミも少し近寄ってきて、以前妹紅の前で作ったワレモコウを取り出した。

「あの人も、こないだ来た人も、同じこと考えてたんだよ。」

「やっぱり。で、二人ともおんなじ花だったと。で、その花言葉は?」

「『愛して慕う』だよ。」









もうワレモコウはけねもこの花でいい(確信)

ほんのり小話 63

キバリんとこがキバ得2周年を迎えてたので、お祝いの小説。
何もお祝いになっていません(内容的に)。









「やった…やっとできたっ…!!」

ある昼下がりのこと。アリスの家の一室で、何やら少女が怪しげな物体を持って喜んでいた。まぁ、穣子なんだけど。

その物体は黒のような深緑色で、白っぽい粉末のようなものがまぶされている。所々怪しい桃色の塊のようなものがついていた。

「…何ですかそれ。」

あまりの怪しさに、思わず一緒に居た衣玖は恐る恐る尋ねる。

「外の世界では長い食べ物を端っこに二人が向かい合ってくわえて、それを食べてどっちが先に折るか、ってゲームが流行ってるみたいなの。それで、折角だから外の食材に疑似したものでやってみようって思って。」

「…それ、食べられるのです?それと長いですが、あまり長くないような…」

「うーんそうだね…そもそもこれ美味しいのかな…」

「話は聞かせてもらった!!」

唐突に、バッと窓が開かれる。何事かと思うと、それは珍しい客だった。

「あれ、リリーブラックじゃん。君がこんなところに来るなんてどういう吹き回し?」

「ふっふっふっ、私がそんな面白そうな話を見逃すわけないだろ?なぁなぁ、それよかったら私の方で成立するか試してきてやるぞ。永遠亭にはそういうの大好きな奴らばっかりだしな。」

「…とか、仰ってますけどどうします?」

ちらり、と衣玖は穣子の方を見る。決断は滅茶苦茶早かった。

「いいよ、寧ろありがと!こんな怪しい物体うちだと皆素直にやってくれないだろうしねー。とりあえず成立するかどうかだけまた教えてね。」

「うわ押しつけた、この人実験押しつけました。」

とりあえず作ったものの半分を麻でできた小さな袋に詰める。半分と言ってもそこそこの量があった。

一言お礼をリリーも返す。それを受け取ると、上機嫌に再び窓から飛び出し、そして迷いの竹林の方へと飛んでいった。

「はははっ、あいつら知らないんだなー!言ってたの、ポッキーゲームだってのに…あのまま二人にやらせるのは勿体ない勿体ない。これは私が…有効活用してやらないとな…」

と、言いつつも、受け取ったそれ事態が何かということはリリーも知らなかった。



  ー『口調、一人称からほぼ全員分からない事態発生』ー
「ところであれ何だったのです?」
「pickled and kelpって本には書いてあったよ?」



「さぁて皆の者ー!宴の時間だー!!」

「わわちょ、い、いきなりなんですか!?」

永遠亭に、とりあえず今居るメンバーを集合させる。今日はうどんげみすちー、てゐ、けね先生、メディ、もこたん、ぐーやがいるようだ。えーりんはちょっと手が放せないご様子。

「面白いもん手に入った!ポッキーゲームのポッキーを使わないゲーム!」

「…はぁ?」

また何か変なこと言い出したぞこいつ、といった顔をする一同。見て見ろと言って袋から出すも、殆どの人(人?)がその正体は分からなかった。

ただうどんげと慧音はそれが分かったらしい。

「…梅昆布じゃないか。」

「昆布?」

「海に生えてる肉厚な草だ。ついでに、その白いのは塩だ。また珍しい物を手に入れたな…ここには海が無いのに、どうやって取ってきたんだ?」

「穣子の奴が疑似的なものができたって。多分、大丈夫。」

「……」

あんまり信用できないような気がするが。

「でも、相手とかどうやって決めるんですか?」

「くじ引きを作っておいたから、これを一斉に引く。全部の中に印付きが2つあるから、それを引いた人同士がプレイな。」

「…!」

つまり、運が良ければ好きな人とあんなことやこんなことができると…!!

ガタァンとした人がちらほら。幸運を呼ぶてゐとしては、できれば当たりたくないかな、と控えめな様子だった。

「さあ引け!そして己のディスティニーを恨むのだ!!」

「はずす前提!!」

一斉にバッとくじを引く。あるものは好きな人と、またある人は当たらないようにと願う。引いたくじを恐る恐る見ると、今回のペアは

「あ、メディだー。」

「…私。」

メディスンと輝夜という、謎な組み合わせができました。誰得!

明らか輝夜が嫌な顔をしているが、それに気がつかないメディ。ちょっとばかり、メディが可哀想な気がする。

「うえ何これしょっぱい!」

「そーかな?メディはけっこー好きだよー!」

ポッキーゲームならぬ梅昆布ゲーム。これには様々な惨劇が散りばめられている。

まず、味の好みが激しく分かれること。嫌いな人は嫌い、好きな人は好き。嫌いな人にとっては拷問でしかない。

第二に、

「…って、メディちっかい!!」

「最初からこんな位置だったよー?」

くわえられるけど、開始そうそう超ギリギリな距離。本当に一寸先は闇というか、ちょっと進んだらすぐに互いのファーストキッスがうば…いや、輝夜は済ませてる。メディは知らないが。

恥ずかしがり屋同士なら、この時点でのぼせること必至である。

第三には、

「ちょ、あとこれっ、噛みちぎれない!!」

「おいおい見苦しいぞー。最初っから逃げ腰かー?」

逃げようにも、昆布が堅いせいで逃げられない。

ポッキーなら簡単に折って逃げることができてしまうが、今回は昆布。それも、噛んでいるのは前歯である。どうあがいても無理だ。二人で一斉に別々の方向にソォイ!!と首を捻れば話は別だが。

因みに前歯でしっかり噛むことができるので、わりと流暢に会話はできる。ただ涎には気をつけないといけないが。

「それじゃ、いただきまーす!」

「ちょ、タンマタンマタンマァァァアアアッ!!」

ビリィッ!!輝夜はなんと、渾身の力で昆布を引きちぎった!これが不老不死のお姫様の力か!ニートの力か!!

「ゼェッゼェッ……」

「あっはははは輝夜ざまぁああwwww」

「ってんめもこぉぉおおおおおおっ!!」

ここから始まるてるもこ大戦争。というか室内で暴れられると被害は甚大無限大になってしまう。それは避けなければならない。ゲームどころではなくなってしまう。

が、そこはリリーブラック。沸点の押さえ方をよぉく知っているわけで。

「おーい、次始めるぞー。愛しのけーね先生の唇はほしくないのかー?」

「「…!」」

ギリィッとにらみ合い、そのまま座る。慧音先生は流石に苦虫を噛んだ表情になる。こいつ、イチャラブしすぎて恥じらいを忘れかけてるんじゃ。

「はいはい次!カップルだーれだ!」

「そんな王様だーれだ、みたいな…」

やっと発言みすちー。周りのテンションに付いていけず、若干空気になりかけていた。しかし何でこの子そんなこと知ってんの。

「…あ!私た!」

「おぉっ、もこたんとお相手はー?」

「…わ、私だ。」

妹紅と慧音先生。ベストカップルの奇跡が起きた。

「イヤァッホホォォォオオオオオオオオイ!!」

「も、妹紅そんな大げさな…」

「あらあら、そう言う慧音先生も顔真っ赤ですよ?」

くすくすいたずらっぽく笑ううどんげ。てゐやミスティアは不思議そうな顔をしているが、結構ここにいる奴らは二人の関係を知っている。

とりあえず昆布をくわえるもこたんとけね先生。妹紅の方はもう、超期待して瞳からビームでるんじゃというくらいキラキラしている。

「それじゃ、いただきまーす!」

「ちょ、もこはやっ…むぐぅっ!!」

開始1秒すら経たない内に、二人の唇が接触する。更に妹紅の勢いが良すぎてそのまま慧音を押し倒す形になってしまい、絵面適にとても大問題なことになってしまった。

更に二人の勢いは止まることを知らない。

「むっ…ん…んぅっ…!」

そう、昆布とは恐ろしいものである。ひたすら、噛みちぎれないのだ。

ゴールまでいっても終わらない、それがこのゲームの最大の恐ろしいこと。口の中は塩辛いのに、もの凄く甘い光景が繰り広げられる、世にも恐ろしいゲーム。

ぴちゃぴちゃと、互いの唇がふれ合う嫌らしい音。もうこれは流石に

「アウトォォオオオオオ!!」

「ちょっと貴方たちそれは可愛い子供が居るのにダメですよぉぉおおおおお!!」

「え、いっつも二人はあんなことしてるよー?」

「へー…って何で知ってるの!?」

しかし二人はザ・ワールド 〜貴方と私だけの世界〜 に入ってしまっている。これは完全に聞こえていない。

塩辛いはずなのにくっそ甘ったるい事故。平気で行われるから腹が立つ。

「…放っておこう。次。」

「…あ、私ですね。」

そして、ここでも奇跡というものは起きるわけで。

「…!!」

うどんげと、お相手はミスティアミスティアうどんげに片思いをしていることは周知されているので、これには皆流石にガタンと音を立てる。

「これは…これは面白くなってきたぞ!」

「あ、う…その、れ、鈴仙さんっ…」

上目遣いでじっと鈴仙を見つめる。さっきの輝夜みたいなあんな表情をされていないか心配になったのだろう。

そこは紳士・うどんげ。にっこりと微笑んで

「大丈夫ですよ。私は気にしません。」

一度ポッキーゲームを頼まれたことがあるからか、相手が自分に対して嫌だと言われているかもしれないという想いはなかったようだ。

その返事に、ぱああと顔が明るくなる。横ではまだもこけねがイチャラブしているが、完全に皆からはもう蚊帳の外だ。

「では。」

(…うっ、これ、凄くマズい…)

口に入れた瞬間、嫌悪感を覚える。自分の食べてきたものの中でも、かなり上位に入るマズさだ。

吐き出したい、けれど、目の前には鈴仙がいる。ここで逃げては、せっかくのチャンスが台無しになってしまう。

「…って、本当に噛み切れませんねこれ…かったい…!」

「…う、ぅ…」

殆どゼロ距離にまで唇を持っていく。ほんのちょっとだけしか距離は開いていない。今ならいけるっ!

「…ダ、ダメっ…もう…」

「…へ、ダメっtきゃぁああああああ!!?」







「やっほー報告に来たぞ。」

「あ、どうだった?成立した?」

穣子は再びやってきたリリーブラックに尋ねる。表情はとても面白いものが見れたという、満足そうなものだった。

食べられたと聞かないところは、恐らく実際に食べてみたのだろう。

「もうあれ…すっごい面白かった…ははっ…うどんげザマァ…」

「うわー性格悪いなぁ…そうか、えーりん居たら何とでもなるか。」

「ん?そっちもやったのか?」

「うん、やったよ。」

しれっと答える。てっきり自分はやらないものだと思っていたので少し驚いた表情になる。
ただ、目を逸らし、死んだ魚の目のようになっている。何があったし。

「…橙の前歯が飛んだ。」

「何があった。」

痛い人たちがチュッチュペロペロし合っても、そんな末恐ろしいことにはならないはずなのだが。

何をどうしたらそうなった。

「あ、あと。屋外でやんなきゃ家が壊れるね。」

「……」

本当に何があったのかはわからない。聞いてはいけない気がした。


とりあえず、ポッキーゲームのポッキーを昆布に変えると面白いのでやってみよう。

これが、今回のリリーの教訓だった。







というわけで、キバ得が2周年ということで遅れながらお祝いです。4000字ほどのギャグ小説だけど…許せ!

今回痛感したこと。一人称、二人称って意識しないとわからないもんだね…!それと全員はキャラ把握できてないから…許せ!!主要になってるキャラは大体出したと思う!!

とりあえず、こんなgdgd話で許してくださいすいませんっした!!


あ、あと面子全体で思ったこと。
うちの子らは下ネタ知識疎いけど、キバリんとこは物凄く敏感なイメージがある。うちでポッキーゲームとか言ったら何か違うものになるしね!
静葉「私王様ゲームしたいです。」
衣玖「死人が出るのでやめましょう。」

ほんのり小話 62-4

倉庫の方でリレー小説19更新しましたー。
 http://wankoro.hatenablog.com/entry/2014/07/23/203010
なので今回皆得のタグもつけときますね。







Ⅳ『超越』





「仏教です!」

「神教だ!」

道教でしょう!」

人里でそんな喧噪の声を聞きながら、静葉は一つの大きな木の上に上ってじっと空を見ていた。時々その喧嘩を見るため視線を下にやるが、しばらくするとまたそれを上に戻すのである。

この眺めが好き。こののんびりした時間が好き。一つ大きな欠伸をして伸びをする。ポキポキという軽い音が自分の耳に届いた。

「お姉ちゃん、こんなところで何してるの?」

刹那、自分の隣に誰かが座る。今座っている木は人二人乗せた程度ではびくともしない大木だった。

ふわり、とその金色の髪と赤いエプロンを靡かせる。妹の穣子だった。

「あら、穣子ちゃんどうしたの?」

「お姉ちゃんがここに居たから、何してるのかなって。」

その質問に、少しだけふぅむと悩む。喧嘩の声はまだ止みそうにない。

風が二人をくすぐり、思わず目を細める。そのときの静葉の表情は笑っているようにも見えた。

「ねぇ。」

唐突に紅葉の神が口を開く。

「穣子ちゃんは、あれを何だと思う?」

そう言って、未だ論争を続けている三人を指さす。誰も一歩も譲る様子は無く、少しずつその声はヒートアップしていっているようだった。

「何って…尼と、神様と、道士、でしょ?」

「そうね。そしたら、誰の言い分が正しい?」

勿論、誰が正しいってわけじゃない。信じるものの違いで、その違いのぶつけ合い。そこに正しい間違いなんてない。

豊穣の神はそう思った。口にした。それと同時に、紅葉の神様は笑いだした。

「そうね、その通りだわ。」

けれど、と逆説の言葉を投げかけ、器用にその場をすっくと立つ。目線は3人を見つめたままだった。

その議論はまだまだ終わりそうにない。

「私と、ちょっと考え方が違うわね。」

「へぇ、お姉ちゃんはどう思うの。」

幼い神は、その場を座ったまま、ただじっと上を、小さな神を見つめた。

「私たちはね、生まれたときは何でもないの。ただの空っぽの、無、なの。」

不意に葉っぱを一枚むしり、それをくるくると指で回し始める。

「その無の中にね、いっぱい、色んなものを詰めていくの。いっぱいにならない、底が恐ろしく深い瓶をいっぱいにしようとするの。」

幼い神は、ただじっと、その言葉に耳を傾ける。

「けれど、どうしても、中身がどうなっているのか知りたくなるの。知りたいけれど、知らないままやっぱり詰めていくの。」

討論はまだまだ続いている。

「…ひっくり返せばいいじゃん。」

「そう。それで、人はひっくり返すの。ひっくり返して、ようやく、今まで自分の詰め込んできたものが何だったか理解するの。その瞬間、人は人に、あろうとしたものになるの。」

ちょうど、あの3人がなろうとしているようにね、とくすくす笑う。じっと聞いて、ぽつりと口にする。

「3人は、まだひっくり返せてないんだね。」

「ひっくり返せるのは一回だけ。そして…ひっくり返したという話は、私は聞かない。」

「どうして?」

「死ぬもの。」

その言葉と同時に、くるくる回していた葉っぱが指から抜け、ふわりと風に乗って飛んでいった。

春の、なま暖かい風がその場を支配する。

「…それってさ。走馬燈だよね。」

苦笑する神。思わず眉間にしわがよった。

走馬燈、って言っちゃえば本当にそれだけって、感じがしない?ただ、死ぬ前に見るものって感じがして、お姉ちゃんは好きじゃないわ。」

「じゃあ、どう言うの。」

少し首をひねって、それを戻してからまっすぐ見て言った。

「…無から人みたいな何か。何かは人に、あるべき、目指すべき姿になろうとする。やがて生を終えるとき、振り返って、すべてを許して、不思議な気持ちに包まれる…そのとき、人は、人になる…ううん、越える…超越するの。」

「……」

「…そう言えば、ゾクッと来ない?」

決してたどり着けない境地。たどり着けば、後戻りはできない。

あぁ、それはどのような感覚なのか。砂漠で水を見つけたときのような感覚なのだろうか。それとも、溺れて必死にしがみつく藁が沈んだときのような感覚なのだろうか。

分からないし、分かってしまえば終わってしまう。だからこそ、人々はそれに焦がれ、目指そうとする。ちょうど、あの3人のように。

「…無縁な話だけどね、あたしたちには。」

「そうね…興味はわくけれど、味わえそうにはないわね。」

気がつくと、3人の姿はそこには無かった。終わって、帰ってしまったのだろう。

それでも名残惜しそうに、二人の神様は先ほどまで彼女らが居たその場所を、静かに見つめ続けていたのだった。








静ちゃん理論。人は死ぬとき人を越える。



リレー小説のバトルのテンポが個人的に本当なんか気に入ってじたごろしてましたえへ!
それにしてもうごでこの話が一番評価されたのが個人的にやっぱり謎なんです。

リレー小説ⅩⅥ

15話 http://sakura29.hatenablog.com/entry/2014/04/28/212616






「…あら?」

一番にそれに気がついたのは早苗だった。唐突に足を止めて、辺りをきょろきょろと見渡す。

「…どうされました?」

パンツがない故にスカートを必死に抑えながら、まだ恥ずかしそうな様子で早苗に尋ねる。

スカートが長いから飛ばない限り見えないような気はするが。

「穢れが消えたわ…いや、正確に言うと完全には消えていないんだけど…核は残ってるわ。でも、この森の穢れ、小さな怨霊の類が全部消えたのよ。」

ちょっと待ってと言って、お払い棒を握り締めて目を閉じる。しばらくの沈黙が続いた後、ふぅとひとつため息をついて、ゆっくりと目を開いた。

「…多分けーね先生の仕業ね。」

「分かるのですか?」

妖怪故に衣玖は霊力関係のことは全く分からない。いつもと変わらない森のような気がするが、やはり何か違うのか。

その辺りはやはり敏感で詳しい二柱が答えてくれる。

『霊力での浄化の跡が見つからないんだよね。本当に消えたって感じ。魔法を使ったら、そこに魔力のような跡が残るのと同じで、霊力も跡が残るの。』

「しかも霊力は人や神によって性質が異なるから、誰の霊力かっていうのが特定しやすいのよ。ま、今回はそんなもの無いから、消した、っていうのが一番正しいと思うけど。」

まるで、歴史そのものが無かったようにね、と呟く。そこまで説明されて、衣玖もようやく理解できた。

ある意味それは穣子達にとってはとてもありがたかった。穢れ故に本来の力が発揮できない穣子と早苗、地形的に不利になる衣玖。衣玖が地形的に不利だというのは、森の中では雷を打とうとしてもどうしても木に落ちてしまい、対象に上手く当たらないことがある。

また龍魚ドリルも広いところでないと扱うことができない。森の中では木が邪魔になって、振り回すに回せないのだ。

「それに衣玖さん今戦えないものね。」

「誰のせいですか。」

スカートをめくりあげようとするその手を叩く。羽衣を解かれるよりは遥かにマシなのだが。

他にどうすることも無かったというのが事実なのは認めざるを得ない。しかしそれが納得できるかといえば、そういうわけではない。

『そんじゃ、このまま核に殴りこみに行ける、けど。』

「けど?」

『…消滅させることは簡単だよ。それだけなら、早苗とあたしが居たらどうにでもなると思う。でも、妖夢がどうなるか分からない。分からない上、あの可哀想な半霊を問答無用で消すことになる。

勿論浄化はできるよ。できるけど、それは消滅ほど容易なことじゃない。わけが違うからね。坪の中に豆腐を入れて、その坪ごと壊すのと、坪だけを壊すのと。どっちが難しいか、言わなくても分かるでしょ?』

消滅させるのであれば、アンデットの類を瞬間で蒸発させられるだけの霊力をぶつければいい。霊力には大きく分けて神聖なものと邪悪なものがあり、それらが対立しており、どちらも互いが弱点となる。

が、浄化となるとその性質を変えてやることを意味する。正しい手順で行わないと、それはできない。

相手が同意してくれるのならともかく、襲ってくる相手となるとなかなか難しいのだ。

「…でも。」

どうする?と尋ねるような穣子の声に対し、早苗と衣玖は微笑んで、

「やるのでしょう?」

にやり、と答えた。

その表情に、思わず穣子は笑い出す。最近あたし達に似てきたんじゃない?と小言を混ぜながら。

『ははっ、だよねやっぱり。聞くまでも無かったか。』

愚問だったよ、忘れて。その声には申し訳なさそうにする色は全く無かった。

「それじゃあ、歩きながら手順を説明するわ。…いや、やっぱりタンマ。他のメンバーにも伝えられないかやってみるわ。」

そう言って、霊力をこめる。穣子も彼女の中で力を貸す。

それをじっと見つめる衣玖。森の中でふわりと優しい光を纏う彼女の姿はとても幻想的だった。

「…準備できたかしらね。神相手なら上手く行くんだけど。」

『しかも一方的な送りつけしかできないから、伝わってるかどうか分からないってのが難点だね。』

伝えられる可能性があるものとして、まず妖怪、魔法使いの類ではないこと。また、幽霊の類にも伝えられない。

人間か、神。あるいは、霊力を少しでも持つ者。その条件が当てはまるものには比較的届きやすいが、そうでないものにはなかなか伝わらない。

また、距離にもよる。当たり前だが、自分から近い方がよっぽど届けやすい。

「それじゃあ準備もできたし…二人とも、ちょっと黙っててよ。」

黙ってて。それが、今から衣玖に大してどれだけの苦行を強いられることになるか、このときの彼女には勿論分からなかった。

「やっほー幻想郷一の美少女、甘辛ミックス☆ミ男前ロリータの早苗ちゃんだヨ☆」

「ちょっと待ってください。」

「衣玖さんは黙ってて雑音が入る。」

『すでに入ってると思うよ?』

穣子に至っては思っただけで口にしてないのだが、それもしっかり反映されてしまってる。

すでに3行分くらいは雑音が入ってしまっている。

「あのまな板を浄化させる方針で動くとして意義、反論、および反感は認めないとして、とりあえず聞こえたやつはこのことを皆に伝えてほしいの。衣玖さんはノーパンだっt

「ヲイコラァッ!!」

だから黙っててよ、と早苗は衣玖を睨み付ける。が、まぁ、勿論顔は笑っているわけで。

「ってのは実話だからいいとして。で、浄化するにはあたし達神が浄化用の結界を作るから、そん中に誘導して、しばらくその中に居てもらわないとだめなのよね。で、あのレーズンオンザウォール、くそすばしっこいでしょ?だから皆の協力が必要なのよね。ってことで、見つけても殺っちゃだめよあぁすでに死んでたわあれ。対象消去させちゃだめよ、の方がよかったわね。聖水とかぶっかけて消しちゃったら

『伝わらないネタはやめようね?』

やはりツッコミなしにはいられない。早苗のボケというのは末恐ろしいものだ。

「ってことで、まぁ、適当によろしく!」

伝え終わったとみていいのか、光が消滅し、かと思えば四方八方に散乱していった。光自体は綺麗なはずなのに、込められたメッセージというのは酷いどころの話ではない。

「……」

「?何かものすごく納得がいかないって顔をしてるわね。何か問題だったかしら。」

「…私のパンツ情報に何か意味が

「無いわよ?」

デスヨネー、と穣子がくすくす笑う。衣玖も最早何か言う気力は無かった。

『それにしても、ほんっとうにあたし達緊張感無いよね。』

「だって緊張して体強張っちゃったら元も子もないじゃない?」

「でも無さ過ぎると思いますよ?」

付き合いが長いせいか、それとも皆が居れば大丈夫だという確かな想いか。あるいは、ただの頭が悪いだけの緊張感が無い奴なだけか。

多分、どれもが当てはまるのだろう。

そこには、確かな信頼の二文字が見える。どんな苦難に出会っても乗り越えられる、確かな絆。それが、この場の誰にもある。

だから、こんな中でも馬鹿を言い合い、笑っていられるのだろう。

と、穣子は思うのだ。

「…また、嬉しそうにしちゃってるわね。」

『そうかな?…うん、そうだね。』

その声は、とても明るく、とても素敵な声だった。

『…ほんっと、いいよね、こんな仲って…』

「…当たり前じゃないですか。何をいまさr

『あのまな板がすぐそこに居るっていうのに、こんなにも笑っていられるもん。』

「そうね……え?」

ここで、早苗は自分の行いの過ちに気がついた。

霊力は幽霊に感知される。幽霊も霊力を持つため、隠すことはできない。

そう、伝えられなくても、見つけることはできる。

「…北から凄い勢いで近づいてきてるわね。」

「…どうするのです?」

「どうするって…ねぇ?」

決まってるじゃない、と再びにやりと笑う。


「…リアル鬼ごっこよ。」










3105字!今回短め!
リアル鬼ごっこよ、って無駄にかっこよく言っちゃう早苗さん素敵すぎるわぁww
しかし今回は回ってくるの早かったね。いいことだいいことだ!

 リレーやってる人以下リードミィ
人間、神にしか伝わらないってなってるけど、全員に伝えちゃってください。こちらのネタバレになってしまう(このリレー小説じゃない)ので理由はいえないんだけどね。一応理由は下に白文字で書いておくけど、多分見ても「?」にしかならないかと…
「あれ何で伝わってきたんだろ?」って疑問を抱かせるのは任意で。

理由:みのりんは霊力、魔力、妖力、全部の力を隠し持ってます。だから衣玖さんに霊力を分け与えて治癒できた。



おまけ。そのころのらっこさん。

雷「…ぜぇぜぇ。」

幽「これで治ったかしらね?」

レ「っていうかいっつもお腹壊してるんじゃないでしょうね?」

雷「え、結構壊すよ?」

レ「おいあの殺人未遂龍魚。」

幽「ふっ、甘いわね…私みたいにゲテモノを食べても壊さない頑丈な内臓w

レ「幽はお願いだから本当にちょっと黙ってて。あともう食べないで。」





以下、忘れていたコメ返。
<sassa さん
ティーダさん…でしょうか?間違ってたらすいませぬ!
そうですよ寝たら死にますよw冗談抜きに死にますよ(親が)w

ほんのり小話 56

ごめん…後書きの前にこれやりたくなったから、明日か明後日にくらい後書きやります。
そして…キバリんごめん!とてつもなくごめんっ!!
あとある意味IF話なので、本編には全く関係ないです。空想話ですはい。
ドシリアスやりたかったんです…!!
ついでに、みのいくは今よりは発展した関係、早苗ちゃんは神設定で。






この間、慧音が死んだ。

分かってた。自分は不老不死だから、いつかはこうなる日が来るって。

いや、分かってたじゃなくって、分かりたくなかった。

あぁ、なんて。


なんて神様は、残酷なんだろう。




「……」

私は人と会わなくなった。会ってしまえば、自分の飼っている獣を放しそうで怖かったから。

慧音が死んで、私の中には一つの魔物が住み着いた。まるで呪いのように私を蝕んで、自分を壊していく。

その魔物は手当たり次第人を、妖怪を、獣を襲った。私がそれを手懐けなくてはいけないことは分かっている。

しかし、それはあまりにも強大で、凶暴すぎた。

私は、これを飼い慣らすことができない。

できない以上、身を引くしかない。

だから私は竹林に籠もった…いや、帰ってきたという方が正しいのかもしれない。

時々もう一人の不老不死とその医者が私を探しに来たが、とても会えたものじゃない。

私は静かに、その二人から隠れるようにその中に閉じこもった。


それが、どのくらい続いただろうか。ひょっこり、私は恨んでいるものと出会ってしまった。

「…やぁ、一人?」

この世の理を作り、我々を弄ぶ、一人の、いや、一柱の神。

勿論すべての神がそのような偉大な力を持っていないことは知っている。彼女は比較的力の低い、名の知られない小さな豊穣の神。

…だが、今の私にはそんなものは関係ない。

神である以上、私の中の魔物は牙を剥くのだった。

「お前が…お前のせいで慧音は…慧音は…っ!!」

弾幕を不意打ちのように繰り出す。怒りにすべてを任せた、デタラメな弾幕

密度は十分、低級な神ならば即被弾。反則レベルなその弾幕を放った。

つもりだった。

「…大丈夫、あたしは独りだから。」

当たらない。これはおかしい。器用にひょいひょいと避けられてしまう。

ちょっと冷静になってよ、と声を投げられたので、我を忘れつつも弾幕を放ちながら自分の弾を見た。

…高密度、と言ったのは嘘だったか。それは、ムラができていた。ある場所ではとても高密度なのだが、ある場所は殆ど弾という弾がない。酷く隙があることは認めざるを得なかった。

「うるさいっ!お前が…神なんかがいるから私はまた…独りになったんだっ!」

死ねない因果、死ぬ定め。この神が作ったわけではないと知っていながら、なおも攻撃をやめることはできなかった。

難しいようで簡単なその弾幕。よけながら、幼い神は言葉を紡ぎ始めた。

「それはおかしいね。君は一人だけど、独りじゃあない。本当に独りなのは、あたしの方だ。」

「慧音を…慧音を返せ!この人殺しっ…どうして…どうして私だけ死ねない体にしたんだこの悪魔め!」

悪魔、か。とふふっと小さく笑った。

その笑顔は、とても悲しそうな笑顔だった。

やめろ、そんな表情をするな。私は何も間違っていない。間違っているのはお前の方で、私が正しい。

だから…だからそんな顔をするなっ!

「…人が死ぬことには、理由が言えるかな。それは、神が死ねないからだよ。」

「っ……」

その一言で、私は弾幕を止めてしまった。

飼っていた獣が、その一言によってすべてを降伏してしまった。

あれほど暴れて言うことを聞かなかった魔物が、たった一つの言葉だけであっさりと消えてしまった。

…それほど、その言葉はおもいものだった。

「…お前も、独りなのか。」

「違うよ。君は一人、あたしは独り。」

その意味が分からなくて、何が違うのかを問う。悩まずに、その神は答えた。

「君には永遠に生きる友人が居る。たとえ仲が悪くても、それでも悲しみは同じ。だから、君は独りじゃなくて一人。同じ境遇に立って、本当に苦しみを分かってくれる人が居る。…うらやましいな。」

そう言って、またあの悲しそうな笑顔を見せる。

壊れそうだ。今にも。

この神も死ねないというのか。でも神に生まれた以上、その覚悟はあったはずだ。私のように始めは人間だった。

そうじゃない。彼女は、元から不死だ。

「…お前には、沢山仲間が居ただろ。お前だって一人じゃないだろ?」

少なくとも、知る限り死なない存在は沢山いたはずだ。思念体も居れば、神だって居る。姉も居たはずだ。

それなのに、自分を独りというのか。

「…妖怪はいつか死ぬ。亡霊はいつか成仏する。仙人はいつか死神に殺される。思念体はいつか維持する魔力が尽きる。道具はいつかは壊れる。…そんなバランスで、この世は巡り巡る。」

それは、たった短い一言で済む言葉。あえて長く言うが、それはたった、たった一文で終わってしまう、あまりにも残酷な現実。

…皆、居なくなった。

その、悲しい定めの説明には十分すぎた。

「愛しい妖怪も死んだ。最後まであの人はあたしを見てた。いつか別れが来ることが分かってたから、特に涙も出なかった。

お姉ちゃんは、力を持ちすぎた。だから、ここを離れて遠いところに行った。会おうと思っても、今どこにいるか分からない。

最後に最愛の神が消えた。力が無くなって、消えそうなあたしを守る為にその力を使った。その代償に、彼女は消えた。それは彼女なりの正義だった。」

「……」

私は、神を呪った。

この神ではなく、運命の神を呪った。

あまりにも残酷だったのだ、彼女の言う運命が。

本来なら互いに生きるはずの者でさえ、彼女は失ってしまったのだ。

そう、だからこそ、彼女は本当の意味での、

独り、なのだ。

「困ったことに、最愛の神にはもう会えそうにない。神は輪廻の輪の中に居ない。だから…もう二度と、絶対に会えない。奇跡的に驚くくらいのそっくりさんが生まれたとしても、彼女の魂は…いや、彼女にはもう会えない。」

でも、それでいいんだと彼女は言う。そこには、もうあの表情は無かった。

巡り、消える。それが定めなら、それを愛すると。永遠のものなどこの世にはありはしない。

終わり無き命でも、いつかは意外な別れがやってくる。

そして、意外な出会いがまたやってくる。

そう言って、彼女は去った。




私は神が嫌いだ。この理を作った神が許せない。

だから私はお門違いだと分かっていても、あの幼い神も呪うことにしてやった。

消えないように、自分の中で一生彼女の姿を記憶してやる。

これ以上に無い、あの神への冒涜だろう。

…さて、久々にあの竹林のお姫様に会ってやるか。

いつの間にか、獣は死んで、朽ち果てようとしていた。








いやさぁ、互いに死ねない同士なんかいい感じのシリアスになるんじゃないかって思って。
あと、『…それほど、その言葉はおもいものだった。』の『おもいもの』。これ掛詞のつもりだったからあえて平仮名にしています。『重いもの』と『思い物』。ポメラさんが変換ミスしてくれなかったら思いついてなかtt((

何はともあれ、慧音の死ネタを無断でやっちゃったからキバリんに怒られそうだ。

コメ返。
<キバリん
何でそこからピーンと来るのwあれ実録だったのに何でそこでピーンと来るのww
藍しゃまは長編小説じゃあ本当に要る存在だからなぁ…汚れ役(!)も買って出てくれるしねぇー。
正確に言うとカメムシの仲間なんだけどね。あのカメムシじゃなくって、もっと細長い感じのタイプ…でも、あの一般的なカメムシにそっくりなやつ居たし、嫌いになっても道理だなぁと思うわけでしてw
ってことで、今回のあの小説、本当に無駄なものが何一つないというね。カメムシが米の天敵ってことだけ話の中で出てこないけど、それ以外はほぼ推測できるというね!
でもキバリんを完全に騙せなかったのは悔しいなぁ…

早「因みにハーブ嫌いな人ー。」
藍・橙・寅丸・パルスィ・娘々 「はーい。」
穣「パルスィと娘々が意外な件について。寅ちゃんは寅だから納得。」
パ「星が嫌いなものは私も嫌いだわ。」
寅「パルスィ…」
娘「死体の臭いと混じってえげつない臭いになるから嫌い。」
衣「こいつら。」
わたしゃミントとジャスミンかな。名前はサフランとクミンとカモミールが好き。

シジミじゃりぃの奇跡は自分でも傑作のネタww

ラストのみのいくはね!もうね!こいつらやっとかよっていうそんなね!!
そして何よりびっくりなのは『本格的に仲良くなってから6年が経とうというのにスタートラインにすら立ってない』ってとこなwww
果たしてこいつらは無事リア充になれるのだろうかwww

おめありっ!私も嬉しい(そりゃな)!!

私は何か、春休み伸びた!5日くらい!
私立の方だったら2日から学校だったけど…公立8日からだったんよwお陰でもうちょっとゆっくりできる!

ほんのり小話 55-4

倉庫にてリレー小説更新しましたー!こっちじゃあこれやってるから公開させれなかったんよね^^;
故に皆得にも入れてます。


http://wankoro.hatenablog.com/entry/2014/03/27/202455
↑ここからジャンプできますよー





「?そんなに驚く顔でもないだろう。」

早苗と雷鼓が目にしたもの、それは穣子が母乳を出すようになってから、いやそれよりも前からここへ遊びに来なくなっていた九尾の狐、藍の姿だった。

時期が時期だったので、早苗は藍が何か関係しているのではないか、あるいは無くても何か分かるのではないかと思っていた。

家にあがるなり、藍は疲れた様子で椅子に座る。ふぅ、と一つため息を付いた。

何かありそうだ。直感的にそう感じた早苗は、やや強気な態度で藍に話しかけた。

「あんた、一枚噛んでるわね。」

「…?何のことだ。」

「とぼけても無駄よ。みのりんの母乳が止まらなくなったの、あんた知ってるでしょ。」

「知らん。私が居ない間にそんなことになっていたのか?」

「……」

…アレ?オモッテタノトチガウゾ?

きょとんとして早苗を見つめる藍。仕草を観察しても、とても嘘を付いているようには思えない。

この九尾は人を騙すことに関わっているととても楽しそうな表情をする。が、今回はそんなものは一切無い。本当に心から何言ってんのこいつ、と言いたげな表情だった。

「…本当に知らないわけ?」

「知るも何も、私は冬眠前のあのクソババ…紫様のせいで振り回されっぱなしだったからな。やれ結界の調査だのやれ大掃除だの…いつもこの時期になると1、2週間ほどぱたりと来なくなるだろう?」

確かに、と納得する。雷鼓は知らないので、そーなのかーという顔をしている。

ということは、完全に藍は白だということになる。

「…あっ、そうださなっさん、これ、さっき言ってたみのりんの牛乳!」

「もうツッコまないわよ。それじゃ、ちょっとそれ貸して。」

雷鼓が穣子の母乳が入ったコップを早苗に渡すと、彼女は目を瞑って何か小さく呟いた。ほんのかすかにその液体が光り、その後早苗はテーブルにそれを置いた。

「…やっぱりね。これ、霊力でできてるわ。」

「霊力って…みのりんの力の本質だっけ。」

そうよ、と早苗が短く答え、それについて少しだけ説明をする。

それは神の本質であり、身体そのもの。能力を発揮するためにもそれは必要で、使いすぎると体を維持できなくなる。信仰によって霊力を得ることができ、その力を使って人々を幸せにする。そのサイクルによって成り立つのが神だった。

「つまり、これが流れ出るってことは、穣子の霊力が自然と減ってるってこと。しかもこれはかなり濃いから…そろそろ限界が来るころだと思うのよ。」

だから早く止めないと、と焦る早苗。その会話を聞いていた藍が横から口を挟む。

「…とりあえず、事態は分かった。しかし、人間にとっては別に珍しいことでもないぞ?しかも母乳じゃない。」

「そうなの!?」

やはり知らなかったかともう一つため息。神や妖怪はどうだか知らないが、と藍は人差し指を立てて説明を始めた。

「ストレスが溜まってホルモンバランスが崩れると出るようになる。そんな大量ではないらしいが。神は人形(ひとがた)を操るようなものだから、人体的には影響が出ない。恐らく、ストレスが溜まり、神自身の方に影響が出て、そんなことになった。というのが一番考えられると思うが。」

ま、あいつがストレスを溜めるようなもの、私が知りたいがなと言って席を立つ。お茶を入れるためで、道具を探して手に取っていった。

その話を聞いて、じっと考える早苗。もしかして、と推論を立てる。

「…あの臭いかしら。始めはあの臭いそのものがみのりんに影響を与えるものだって思ってたけど…それだったら衣玖さんも止まらなくなるはずよね。」

「しばらく嗅いでいなければならない、という事態も考えられるから一概にそうだとは言えないがな。」

と、早苗の推理に一言付け加える藍。確かに、と納得する。それを聞いた雷鼓は、先ほどの藍の言葉を受け取って考えを言った。

「それじゃあ…普段甘い臭いをさせてたのに、違った臭いをさせるようになってストレスが溜まってた、ってことは?」

「ありえるわ。…でも、一つそれじゃ解決しないことがある。」

それは、と言おうとしたところで、ここに入る為のドアが大きく開かれた。

バンッと大きな音を立てた方を見る。そこには息を荒げる竜宮の使いの姿があった。

「たっ、大変ですっ…穣子が…穣子がっ!!」

「…その様子だと、倒れたようね。」

奇跡の神は冷静だった。こうなることが読めていたから。

そのことを知っていたのか。知っていて、そのままにしていたのか。そう荒声で問いつめようとする衣玖に、早苗は先に謝った。

「ごめんなさい、あたしが盲点だった。さっき気が付いたのよ。あれは霊力の濃いものだった。倒れるなと予想できたのは本当についさっき。」

早口でそう言いつつ、自分の商売道具のお払い棒を探し、服の中から一枚の札を取り出す。それから穣子が一緒でないのを確認してから、寝かせた部屋に案内するように頼んだ。

流石に、あの問題のある臭いがする部屋の中でそのままにしているとは考えられなかったから。

早苗の真剣な表情と、すぐに出てきた謝罪によって、衣玖もいつもの冷静さを取り戻し、早苗に歯切れ悪く謝る。

「…あの、すみません。酷い言葉を浴びせようとして。」

「気にしないで。今の流れじゃあ誤解くらいするわ。あたしにも非があるのが事実だもの。」

そう言って、にやりと笑ってみせる。安心させるための笑顔だった。

衣玖はその言葉に少し罰悪く感じながらも、早苗を穣子を寝かせた部屋へと案内する。その後を雷鼓と藍は付いていった。

案内されたのは早苗がよく使っている部屋。さっきまで居たところの隣にあるが、臭いは入ってきていなかった。

早苗は部屋に入るとすぐに穣子の状態を確認した。息はほとんどしておらず、体は氷のように冷たい。

人間であれば、かなり危ない状態だった。

「……」

先ほど取り出していた札を、穣子の胸元に張り付ける。それからお払い棒をその札に当て、目を閉じて小さく呪文をつぶやいた。

その刹那、それに応じるかのように札が淡く輝く。ふわり光が浮かび上がり、数回瞬いた後、穣子の体の中に入るように消えていった。

「それは?」

「霊力の流れを遮断させる札よ。自分の中から霊力が出ていかないけれど、自分の中にも入ってこないわ。」

それでは穣子はずっと目を覚まさないし、よくならないのでは。そう衣玖が尋ねようとして、部屋の外からなるほどな、とやや明るいトーンの狐の声が聞こえた。

「賢明な判断だな。それは、霊力を損なわないためではなく、彼女を起こさないための札だな。原因が特定できていないのに彼女が先に起きてしまっては、また同じことを繰り返す。だからそれを取り除くまでは寝ていてもらう。いやはや、見事見事。」

少し笑いが混じった声に、どうもと短く、小さく返す。悪気はないのだろうが、遊ばれている感じがしてあまり気持ちのいいものではない。

衣玖も雷鼓も、その早苗の気遣いに納得する。それには特に何も触れなかった。

「でもおきつさん、何で中に入ってこないんだ?」

「決まっているだろ。そこの豊穣の神と竜宮の使いがハーブ臭いらしいからだ。」

狐にとって、いや、人間以外の動物にとってはハーブの臭いは毒である、と藍は説明する。妖獣は元が動物だから、ほぼ全員がその臭いを苦手とするらしい。

「ま、妖怪や神様は知らないがな。妖怪はものによっては苦手意識があるんじゃないか?」

「…毒、ねぇ。」

動物と同じように、穣子にとってもそれが毒になっていたかという考えが浮かんだが、それはすぐに消えた。

それならば、神である自分もその臭いにやられているはずだ。

「…考えられることは二つ。一つは、穣子にとって臭いがストレスで出るようになった。ストレス案は、さっき藍がストレスから母乳もどきが出ることがあるって教えてくれたから、そこから。もう一つは、その臭いが母乳もどきを出すように促すものだったか。しばらく嗅いでないと効果が発揮されない、みたいなね。」

どっちでも筋は通ると思うけれど。人差し指で自分の顎を触りながら、じっと眠る幼い神様を見つめ続けた。

その顔に、表情は無かった。

「…みのりんってさ、こう…わたしやおきつさんみたいに、本能的に苦手なものとか無いのかな。太鼓が水に弱いから水が本能的に怖い、動物はハーブの臭いが毒だからハーブが本能的に怖い、とか…そんな感じのもの。」

「むしろ私が知りたいな。」

穀物、豊穣、それが敵になるようなものがぱっと思いつかない。もしかしたら何かあるのかもしれないが、少なくとも穣子がそれを見せたことは一度もない。

「…あるいは、知らない間のストレスという方針で考えて、そこの竜宮の使い、とかな。」

「ーっ!?」

藍の表情は部屋の中からでは伺うことができない。ちょうど入り口からは見えないところに立っていた。

声から表情を考えるとすれば、多分不敵に笑っている、そんな感じなのだろう。

「ストレスとは知らない間に溜まるもの。無自覚のうちに溜めて、やがて自身を殺す。ある意味、それは本当に恐ろしい、恐ろしい毒の一種だ。そんな毒に、そこの竜宮の使いはなっていたのではないか?」

私の知ったことではないがな。その冷たい言葉に、衣玖はただ目を見開く。小刻みに震えて、嫌な汗をかいていた。

そんな藍に対して早苗が強く怒鳴る。

「やめなさいよ!今この状況でそんな縁起でもないこと言う!?ただでさえ愛しい人が倒れて不安になっているところだっていうのに…簡単に弄ぶんじゃないわよ!」

「ま、待って!ここで喧嘩しちゃダメだよ!!」

雷鼓が仲裁に入るも、早苗は藍の居る方向を、まるで彼女を壁ごと貫くかのような鋭い瞳で射抜く。多分、藍はそのまま一歩も動かなかった。

しばしの沈黙がこの場を支配する。この中で一番先に動いたのは衣玖だった。

「…衣玖、何処に?」

「すみません…少し、席を外させていただきます。」

瞼を伏せて、消え入りそうな声でそう呟く。部屋を出て、藍の横を通り、そして外に出ていった。

しばらくじっと後ろ姿を見ていた雷鼓は、困惑した表情を浮かべながらも、やがて同じところを目指す。

「…追うつもり?」

励ます言葉も、何を言うべきなのかさえも分かっていないのに?

早苗の短い言葉。その言葉で一度立ち止まり、俯く。が、すぐに前を向いて、

「…分からなくても、側には居てやれる。」

再び歩きだして、そう言った。

「……」

酷く長い沈黙が続いた気がする。

気がつくと、藍は身を翻し、皆が集まる部屋へと戻っていった。

早苗はまだ、そのまま親友の寝顔を見ていた。

やはり、無表情のままだった。

  ・
  ・

昔、黒猫が見つけた、幼い神が愛する花が咲き乱れる小さな花畑。

そこにあるのは、季節外れに咲く無数の紅紫の花の群れ。

だが今はまだその姿を見せていない。いつも不思議な環境が作り出すその姿は、どうやら冬でしか見られないようだ。

そこにふらりと、一人の竜宮の使いが誘われる。花畑の中心で立ち止まり、何をするわけでもなく、ただじっと立った。

気づけば時刻は夕方だった。山は紅色に染まり、明日がまた晴れることを告げる。雁が群れを作って空を横切るが、一匹だけ群れから外れていた。

それが、自分の姿と重なった。かつてそうだったような、自分の姿。

壁を作り、誰とも打ち解けようとしなかった。しかしその壁は、幼い神の手によって容易に壊された。その壁の先は、自分の焦がれたものが沢山あった。

それに触れることさえも、私には許されないのか。温かさはあくまでも、私を拒むのか。

一度は手にした。手放さないようにしっかりと掴んだ。もう二度と、放さない。

それが、いけなかったのか。

それが、いつの間にか彼女を拘束していたのか。

本心を決して晒さない、小さな神様。彼女が何を思って、何を感じているのか。

…私は、その半分も分かってやれなかったのか。

それを、誰に問えばいい?その答えを、どうやって見つければいい?

見つからない答え。手探りに探しても、それは出てこない。自分の知らない、深い深いところにそれはある。

手を伸ばしても届かない。それなら、どうすればいいというのか。


「…衣玖…」

気がつけば、後を追ってきた一人の付喪神。その小さな声は、心なしか震えていた。

竜宮の使いの後ろに立つ。表情は互いに見えない。しかし、何となく互いに表情は言わずとも、見ずとも分かった。

…いっそ、この付喪神に答えを問うてみようか。答えのない質問をしてやろうか。

そんな考えが脳裏をよぎったが、馬鹿馬鹿しくなってすぐにやめた。

見つからなければどうすればいいか。それは、自分がよく知っている。

気が付けば、言葉を紡いでいた。

「…私。ずっと穣子の側に居られたら。そう考えていました。」

しかし、彼女は拒んでいたのかもしれない。

自分でも気が付かないうちに、私のことが嫌いになったのかもしれない。

都合のいい解釈をしているかもしれない。自分が傷つかないようにという、そんな無意識の守りなのかもしれない。

でもそれは、すべてイフでしかない。

どれもが可能性。絶対のありえない可能性。

だから。

「…そうでない、その可能性はあります。そうだ、という可能性もあります。だから私は私で、好きなようにすればいい。よく分かっています。

もしも、このまま原因が分からず、私が原因ということになりましたら…私は二度と、彼女の前には現れないつもりです。未来永劫、彼女には一切関係しない、と。」

私は彼女のことが好きだ。心の底から、どうしようもなく。

だから、彼女が自分のせいで傷つき、苦しんでいるというのなら、それは自分が一番耐えられない。

大好きな人を、自分の手で壊す。これ以上に残酷な所行があるだろうか。

そう言って、衣玖は振り返る。

その顔は、儚い、とても儚い、

 ――笑顔だった。

「……」

その笑顔を見て、雷鼓は何も言えなくなった。

優しい、けれど、悲しい笑顔だった。

その言葉はきっと、彼女の中にある真実なのだろう。

答えが見つからないのならば、考えればいい。自分で作ればいい。

考え抜いて、作り上げた真実。

その笑顔は、すべてを物語っていた。

が。

「……違う…」

聞こえない、小さな小さな声でぽつりと呟く。

何が違うのか。そんなもの、分からない。

けれど、絶対にそれはおかしい。違う。

…そう、何かが囁く。

自分の知らない何かが、耳元で囁く。

それは虚言だ。それはただの道化の作った戯言だと。

作り上げたのは真実ではない。自分を正当化するために、仕方なく作った嘘の言葉。

でも、一体何が嘘なのか。

きっと、本心だ。

しかし、彼女は心から、そんな風には望んでいない。

それならばどうすればいい。

どうすれば、一番望む結果になる。

…それが、分からない。分からないから、それ以上言葉が紡げなかった。

静かに、ただ静かに。

付喪神は、その笑顔から目を逸らしていた。







シリアスいやっほぉ!!
さて、明日でラスト更新しまーす!皆さんは犯人分かったかなー?

チートじゃね?

妖「さなみのいくですよー。…リレー小説の反省会ですね。」




早「衣玖さんが弱いって話は置いといて。」

衣「それはもう前回やりましたからね…と、大きなお世話ですよ!!」

早「気になったのはもう一つ。…みのりん、色々とチートじゃない?」

穣「やっぱり?」

衣「え、何がですか何がですか。」

早「崖から落ちて即死しないとか。」

穣「憑依して生きてるだとか。」

早「傷ついても割りと早く治るとか。」

穣「お姉ちゃんの妹補正は…あんまり無いか。」

衣「…それは神の性質だから仕方ないのでは…そして最後のはなんですか。」

穣「それはまたその内更新するだろう中ニ病小説で。んで。弱い立場になるはずが、結構なチートをやらかしてることに気が付いた。」

早「1ボスがこんなに高性能でいいのか。」

衣「…高性能だからこそあんな無茶した描写ができたのでは。」

穣「そうなんだけど考えてみなよ。これが一般ピーポー常識パーポーだったら耐えられると思う?」

衣「まず人間と神のスペックを比べてはいけませんよ。」

早「と、まぁ色々思って、再度思ったのよ。」

衣「…今度は?」

早「キバリさんとこ、もこたん不死身だから後ろから心臓貫かれてもびっくりするだけ。即行治る。」

穣「つらねさんとこ、フラン悪魔の妹の異名だけあって、腕で刀を受け止めちゃう始末。」

早「…だったら、このくらい別にいいんじゃって思ってきた。」

穣「キバリさんとこEX道中(きもってるから)とボス、つらねさんとこEXの中でも最強と主人公。…で、あたしらは5ボスと1ボス?」

早「もう衣玖さんみのりんより弱いから1ボス道中でもいいんじゃない?」

衣「なんてボロクソ言われよう!そして本当に私達弱いですね!」

穣「それはいいんだけどね。で、結論。」

 まずみのいくだけが敵わないとして逃げてるんだから、力の差はフツーに出てるんじゃない?

衣「…そうですね!!」








えぇそうですよ。ちょっとみのりん補正強すぎたかなっていうのと、最後の展開が気に入らなかったんですよ…!!字数制限って怖い!!