リレー小説ⅩⅥ

15話 http://sakura29.hatenablog.com/entry/2014/04/28/212616






「…あら?」

一番にそれに気がついたのは早苗だった。唐突に足を止めて、辺りをきょろきょろと見渡す。

「…どうされました?」

パンツがない故にスカートを必死に抑えながら、まだ恥ずかしそうな様子で早苗に尋ねる。

スカートが長いから飛ばない限り見えないような気はするが。

「穢れが消えたわ…いや、正確に言うと完全には消えていないんだけど…核は残ってるわ。でも、この森の穢れ、小さな怨霊の類が全部消えたのよ。」

ちょっと待ってと言って、お払い棒を握り締めて目を閉じる。しばらくの沈黙が続いた後、ふぅとひとつため息をついて、ゆっくりと目を開いた。

「…多分けーね先生の仕業ね。」

「分かるのですか?」

妖怪故に衣玖は霊力関係のことは全く分からない。いつもと変わらない森のような気がするが、やはり何か違うのか。

その辺りはやはり敏感で詳しい二柱が答えてくれる。

『霊力での浄化の跡が見つからないんだよね。本当に消えたって感じ。魔法を使ったら、そこに魔力のような跡が残るのと同じで、霊力も跡が残るの。』

「しかも霊力は人や神によって性質が異なるから、誰の霊力かっていうのが特定しやすいのよ。ま、今回はそんなもの無いから、消した、っていうのが一番正しいと思うけど。」

まるで、歴史そのものが無かったようにね、と呟く。そこまで説明されて、衣玖もようやく理解できた。

ある意味それは穣子達にとってはとてもありがたかった。穢れ故に本来の力が発揮できない穣子と早苗、地形的に不利になる衣玖。衣玖が地形的に不利だというのは、森の中では雷を打とうとしてもどうしても木に落ちてしまい、対象に上手く当たらないことがある。

また龍魚ドリルも広いところでないと扱うことができない。森の中では木が邪魔になって、振り回すに回せないのだ。

「それに衣玖さん今戦えないものね。」

「誰のせいですか。」

スカートをめくりあげようとするその手を叩く。羽衣を解かれるよりは遥かにマシなのだが。

他にどうすることも無かったというのが事実なのは認めざるを得ない。しかしそれが納得できるかといえば、そういうわけではない。

『そんじゃ、このまま核に殴りこみに行ける、けど。』

「けど?」

『…消滅させることは簡単だよ。それだけなら、早苗とあたしが居たらどうにでもなると思う。でも、妖夢がどうなるか分からない。分からない上、あの可哀想な半霊を問答無用で消すことになる。

勿論浄化はできるよ。できるけど、それは消滅ほど容易なことじゃない。わけが違うからね。坪の中に豆腐を入れて、その坪ごと壊すのと、坪だけを壊すのと。どっちが難しいか、言わなくても分かるでしょ?』

消滅させるのであれば、アンデットの類を瞬間で蒸発させられるだけの霊力をぶつければいい。霊力には大きく分けて神聖なものと邪悪なものがあり、それらが対立しており、どちらも互いが弱点となる。

が、浄化となるとその性質を変えてやることを意味する。正しい手順で行わないと、それはできない。

相手が同意してくれるのならともかく、襲ってくる相手となるとなかなか難しいのだ。

「…でも。」

どうする?と尋ねるような穣子の声に対し、早苗と衣玖は微笑んで、

「やるのでしょう?」

にやり、と答えた。

その表情に、思わず穣子は笑い出す。最近あたし達に似てきたんじゃない?と小言を混ぜながら。

『ははっ、だよねやっぱり。聞くまでも無かったか。』

愚問だったよ、忘れて。その声には申し訳なさそうにする色は全く無かった。

「それじゃあ、歩きながら手順を説明するわ。…いや、やっぱりタンマ。他のメンバーにも伝えられないかやってみるわ。」

そう言って、霊力をこめる。穣子も彼女の中で力を貸す。

それをじっと見つめる衣玖。森の中でふわりと優しい光を纏う彼女の姿はとても幻想的だった。

「…準備できたかしらね。神相手なら上手く行くんだけど。」

『しかも一方的な送りつけしかできないから、伝わってるかどうか分からないってのが難点だね。』

伝えられる可能性があるものとして、まず妖怪、魔法使いの類ではないこと。また、幽霊の類にも伝えられない。

人間か、神。あるいは、霊力を少しでも持つ者。その条件が当てはまるものには比較的届きやすいが、そうでないものにはなかなか伝わらない。

また、距離にもよる。当たり前だが、自分から近い方がよっぽど届けやすい。

「それじゃあ準備もできたし…二人とも、ちょっと黙っててよ。」

黙ってて。それが、今から衣玖に大してどれだけの苦行を強いられることになるか、このときの彼女には勿論分からなかった。

「やっほー幻想郷一の美少女、甘辛ミックス☆ミ男前ロリータの早苗ちゃんだヨ☆」

「ちょっと待ってください。」

「衣玖さんは黙ってて雑音が入る。」

『すでに入ってると思うよ?』

穣子に至っては思っただけで口にしてないのだが、それもしっかり反映されてしまってる。

すでに3行分くらいは雑音が入ってしまっている。

「あのまな板を浄化させる方針で動くとして意義、反論、および反感は認めないとして、とりあえず聞こえたやつはこのことを皆に伝えてほしいの。衣玖さんはノーパンだっt

「ヲイコラァッ!!」

だから黙っててよ、と早苗は衣玖を睨み付ける。が、まぁ、勿論顔は笑っているわけで。

「ってのは実話だからいいとして。で、浄化するにはあたし達神が浄化用の結界を作るから、そん中に誘導して、しばらくその中に居てもらわないとだめなのよね。で、あのレーズンオンザウォール、くそすばしっこいでしょ?だから皆の協力が必要なのよね。ってことで、見つけても殺っちゃだめよあぁすでに死んでたわあれ。対象消去させちゃだめよ、の方がよかったわね。聖水とかぶっかけて消しちゃったら

『伝わらないネタはやめようね?』

やはりツッコミなしにはいられない。早苗のボケというのは末恐ろしいものだ。

「ってことで、まぁ、適当によろしく!」

伝え終わったとみていいのか、光が消滅し、かと思えば四方八方に散乱していった。光自体は綺麗なはずなのに、込められたメッセージというのは酷いどころの話ではない。

「……」

「?何かものすごく納得がいかないって顔をしてるわね。何か問題だったかしら。」

「…私のパンツ情報に何か意味が

「無いわよ?」

デスヨネー、と穣子がくすくす笑う。衣玖も最早何か言う気力は無かった。

『それにしても、ほんっとうにあたし達緊張感無いよね。』

「だって緊張して体強張っちゃったら元も子もないじゃない?」

「でも無さ過ぎると思いますよ?」

付き合いが長いせいか、それとも皆が居れば大丈夫だという確かな想いか。あるいは、ただの頭が悪いだけの緊張感が無い奴なだけか。

多分、どれもが当てはまるのだろう。

そこには、確かな信頼の二文字が見える。どんな苦難に出会っても乗り越えられる、確かな絆。それが、この場の誰にもある。

だから、こんな中でも馬鹿を言い合い、笑っていられるのだろう。

と、穣子は思うのだ。

「…また、嬉しそうにしちゃってるわね。」

『そうかな?…うん、そうだね。』

その声は、とても明るく、とても素敵な声だった。

『…ほんっと、いいよね、こんな仲って…』

「…当たり前じゃないですか。何をいまさr

『あのまな板がすぐそこに居るっていうのに、こんなにも笑っていられるもん。』

「そうね……え?」

ここで、早苗は自分の行いの過ちに気がついた。

霊力は幽霊に感知される。幽霊も霊力を持つため、隠すことはできない。

そう、伝えられなくても、見つけることはできる。

「…北から凄い勢いで近づいてきてるわね。」

「…どうするのです?」

「どうするって…ねぇ?」

決まってるじゃない、と再びにやりと笑う。


「…リアル鬼ごっこよ。」










3105字!今回短め!
リアル鬼ごっこよ、って無駄にかっこよく言っちゃう早苗さん素敵すぎるわぁww
しかし今回は回ってくるの早かったね。いいことだいいことだ!

 リレーやってる人以下リードミィ
人間、神にしか伝わらないってなってるけど、全員に伝えちゃってください。こちらのネタバレになってしまう(このリレー小説じゃない)ので理由はいえないんだけどね。一応理由は下に白文字で書いておくけど、多分見ても「?」にしかならないかと…
「あれ何で伝わってきたんだろ?」って疑問を抱かせるのは任意で。

理由:みのりんは霊力、魔力、妖力、全部の力を隠し持ってます。だから衣玖さんに霊力を分け与えて治癒できた。



おまけ。そのころのらっこさん。

雷「…ぜぇぜぇ。」

幽「これで治ったかしらね?」

レ「っていうかいっつもお腹壊してるんじゃないでしょうね?」

雷「え、結構壊すよ?」

レ「おいあの殺人未遂龍魚。」

幽「ふっ、甘いわね…私みたいにゲテモノを食べても壊さない頑丈な内臓w

レ「幽はお願いだから本当にちょっと黙ってて。あともう食べないで。」





以下、忘れていたコメ返。
<sassa さん
ティーダさん…でしょうか?間違ってたらすいませぬ!
そうですよ寝たら死にますよw冗談抜きに死にますよ(親が)w