ほんのり小話 63

キバリんとこがキバ得2周年を迎えてたので、お祝いの小説。
何もお祝いになっていません(内容的に)。









「やった…やっとできたっ…!!」

ある昼下がりのこと。アリスの家の一室で、何やら少女が怪しげな物体を持って喜んでいた。まぁ、穣子なんだけど。

その物体は黒のような深緑色で、白っぽい粉末のようなものがまぶされている。所々怪しい桃色の塊のようなものがついていた。

「…何ですかそれ。」

あまりの怪しさに、思わず一緒に居た衣玖は恐る恐る尋ねる。

「外の世界では長い食べ物を端っこに二人が向かい合ってくわえて、それを食べてどっちが先に折るか、ってゲームが流行ってるみたいなの。それで、折角だから外の食材に疑似したものでやってみようって思って。」

「…それ、食べられるのです?それと長いですが、あまり長くないような…」

「うーんそうだね…そもそもこれ美味しいのかな…」

「話は聞かせてもらった!!」

唐突に、バッと窓が開かれる。何事かと思うと、それは珍しい客だった。

「あれ、リリーブラックじゃん。君がこんなところに来るなんてどういう吹き回し?」

「ふっふっふっ、私がそんな面白そうな話を見逃すわけないだろ?なぁなぁ、それよかったら私の方で成立するか試してきてやるぞ。永遠亭にはそういうの大好きな奴らばっかりだしな。」

「…とか、仰ってますけどどうします?」

ちらり、と衣玖は穣子の方を見る。決断は滅茶苦茶早かった。

「いいよ、寧ろありがと!こんな怪しい物体うちだと皆素直にやってくれないだろうしねー。とりあえず成立するかどうかだけまた教えてね。」

「うわ押しつけた、この人実験押しつけました。」

とりあえず作ったものの半分を麻でできた小さな袋に詰める。半分と言ってもそこそこの量があった。

一言お礼をリリーも返す。それを受け取ると、上機嫌に再び窓から飛び出し、そして迷いの竹林の方へと飛んでいった。

「はははっ、あいつら知らないんだなー!言ってたの、ポッキーゲームだってのに…あのまま二人にやらせるのは勿体ない勿体ない。これは私が…有効活用してやらないとな…」

と、言いつつも、受け取ったそれ事態が何かということはリリーも知らなかった。



  ー『口調、一人称からほぼ全員分からない事態発生』ー
「ところであれ何だったのです?」
「pickled and kelpって本には書いてあったよ?」



「さぁて皆の者ー!宴の時間だー!!」

「わわちょ、い、いきなりなんですか!?」

永遠亭に、とりあえず今居るメンバーを集合させる。今日はうどんげみすちー、てゐ、けね先生、メディ、もこたん、ぐーやがいるようだ。えーりんはちょっと手が放せないご様子。

「面白いもん手に入った!ポッキーゲームのポッキーを使わないゲーム!」

「…はぁ?」

また何か変なこと言い出したぞこいつ、といった顔をする一同。見て見ろと言って袋から出すも、殆どの人(人?)がその正体は分からなかった。

ただうどんげと慧音はそれが分かったらしい。

「…梅昆布じゃないか。」

「昆布?」

「海に生えてる肉厚な草だ。ついでに、その白いのは塩だ。また珍しい物を手に入れたな…ここには海が無いのに、どうやって取ってきたんだ?」

「穣子の奴が疑似的なものができたって。多分、大丈夫。」

「……」

あんまり信用できないような気がするが。

「でも、相手とかどうやって決めるんですか?」

「くじ引きを作っておいたから、これを一斉に引く。全部の中に印付きが2つあるから、それを引いた人同士がプレイな。」

「…!」

つまり、運が良ければ好きな人とあんなことやこんなことができると…!!

ガタァンとした人がちらほら。幸運を呼ぶてゐとしては、できれば当たりたくないかな、と控えめな様子だった。

「さあ引け!そして己のディスティニーを恨むのだ!!」

「はずす前提!!」

一斉にバッとくじを引く。あるものは好きな人と、またある人は当たらないようにと願う。引いたくじを恐る恐る見ると、今回のペアは

「あ、メディだー。」

「…私。」

メディスンと輝夜という、謎な組み合わせができました。誰得!

明らか輝夜が嫌な顔をしているが、それに気がつかないメディ。ちょっとばかり、メディが可哀想な気がする。

「うえ何これしょっぱい!」

「そーかな?メディはけっこー好きだよー!」

ポッキーゲームならぬ梅昆布ゲーム。これには様々な惨劇が散りばめられている。

まず、味の好みが激しく分かれること。嫌いな人は嫌い、好きな人は好き。嫌いな人にとっては拷問でしかない。

第二に、

「…って、メディちっかい!!」

「最初からこんな位置だったよー?」

くわえられるけど、開始そうそう超ギリギリな距離。本当に一寸先は闇というか、ちょっと進んだらすぐに互いのファーストキッスがうば…いや、輝夜は済ませてる。メディは知らないが。

恥ずかしがり屋同士なら、この時点でのぼせること必至である。

第三には、

「ちょ、あとこれっ、噛みちぎれない!!」

「おいおい見苦しいぞー。最初っから逃げ腰かー?」

逃げようにも、昆布が堅いせいで逃げられない。

ポッキーなら簡単に折って逃げることができてしまうが、今回は昆布。それも、噛んでいるのは前歯である。どうあがいても無理だ。二人で一斉に別々の方向にソォイ!!と首を捻れば話は別だが。

因みに前歯でしっかり噛むことができるので、わりと流暢に会話はできる。ただ涎には気をつけないといけないが。

「それじゃ、いただきまーす!」

「ちょ、タンマタンマタンマァァァアアアッ!!」

ビリィッ!!輝夜はなんと、渾身の力で昆布を引きちぎった!これが不老不死のお姫様の力か!ニートの力か!!

「ゼェッゼェッ……」

「あっはははは輝夜ざまぁああwwww」

「ってんめもこぉぉおおおおおおっ!!」

ここから始まるてるもこ大戦争。というか室内で暴れられると被害は甚大無限大になってしまう。それは避けなければならない。ゲームどころではなくなってしまう。

が、そこはリリーブラック。沸点の押さえ方をよぉく知っているわけで。

「おーい、次始めるぞー。愛しのけーね先生の唇はほしくないのかー?」

「「…!」」

ギリィッとにらみ合い、そのまま座る。慧音先生は流石に苦虫を噛んだ表情になる。こいつ、イチャラブしすぎて恥じらいを忘れかけてるんじゃ。

「はいはい次!カップルだーれだ!」

「そんな王様だーれだ、みたいな…」

やっと発言みすちー。周りのテンションに付いていけず、若干空気になりかけていた。しかし何でこの子そんなこと知ってんの。

「…あ!私た!」

「おぉっ、もこたんとお相手はー?」

「…わ、私だ。」

妹紅と慧音先生。ベストカップルの奇跡が起きた。

「イヤァッホホォォォオオオオオオオオイ!!」

「も、妹紅そんな大げさな…」

「あらあら、そう言う慧音先生も顔真っ赤ですよ?」

くすくすいたずらっぽく笑ううどんげ。てゐやミスティアは不思議そうな顔をしているが、結構ここにいる奴らは二人の関係を知っている。

とりあえず昆布をくわえるもこたんとけね先生。妹紅の方はもう、超期待して瞳からビームでるんじゃというくらいキラキラしている。

「それじゃ、いただきまーす!」

「ちょ、もこはやっ…むぐぅっ!!」

開始1秒すら経たない内に、二人の唇が接触する。更に妹紅の勢いが良すぎてそのまま慧音を押し倒す形になってしまい、絵面適にとても大問題なことになってしまった。

更に二人の勢いは止まることを知らない。

「むっ…ん…んぅっ…!」

そう、昆布とは恐ろしいものである。ひたすら、噛みちぎれないのだ。

ゴールまでいっても終わらない、それがこのゲームの最大の恐ろしいこと。口の中は塩辛いのに、もの凄く甘い光景が繰り広げられる、世にも恐ろしいゲーム。

ぴちゃぴちゃと、互いの唇がふれ合う嫌らしい音。もうこれは流石に

「アウトォォオオオオオ!!」

「ちょっと貴方たちそれは可愛い子供が居るのにダメですよぉぉおおおおお!!」

「え、いっつも二人はあんなことしてるよー?」

「へー…って何で知ってるの!?」

しかし二人はザ・ワールド 〜貴方と私だけの世界〜 に入ってしまっている。これは完全に聞こえていない。

塩辛いはずなのにくっそ甘ったるい事故。平気で行われるから腹が立つ。

「…放っておこう。次。」

「…あ、私ですね。」

そして、ここでも奇跡というものは起きるわけで。

「…!!」

うどんげと、お相手はミスティアミスティアうどんげに片思いをしていることは周知されているので、これには皆流石にガタンと音を立てる。

「これは…これは面白くなってきたぞ!」

「あ、う…その、れ、鈴仙さんっ…」

上目遣いでじっと鈴仙を見つめる。さっきの輝夜みたいなあんな表情をされていないか心配になったのだろう。

そこは紳士・うどんげ。にっこりと微笑んで

「大丈夫ですよ。私は気にしません。」

一度ポッキーゲームを頼まれたことがあるからか、相手が自分に対して嫌だと言われているかもしれないという想いはなかったようだ。

その返事に、ぱああと顔が明るくなる。横ではまだもこけねがイチャラブしているが、完全に皆からはもう蚊帳の外だ。

「では。」

(…うっ、これ、凄くマズい…)

口に入れた瞬間、嫌悪感を覚える。自分の食べてきたものの中でも、かなり上位に入るマズさだ。

吐き出したい、けれど、目の前には鈴仙がいる。ここで逃げては、せっかくのチャンスが台無しになってしまう。

「…って、本当に噛み切れませんねこれ…かったい…!」

「…う、ぅ…」

殆どゼロ距離にまで唇を持っていく。ほんのちょっとだけしか距離は開いていない。今ならいけるっ!

「…ダ、ダメっ…もう…」

「…へ、ダメっtきゃぁああああああ!!?」







「やっほー報告に来たぞ。」

「あ、どうだった?成立した?」

穣子は再びやってきたリリーブラックに尋ねる。表情はとても面白いものが見れたという、満足そうなものだった。

食べられたと聞かないところは、恐らく実際に食べてみたのだろう。

「もうあれ…すっごい面白かった…ははっ…うどんげザマァ…」

「うわー性格悪いなぁ…そうか、えーりん居たら何とでもなるか。」

「ん?そっちもやったのか?」

「うん、やったよ。」

しれっと答える。てっきり自分はやらないものだと思っていたので少し驚いた表情になる。
ただ、目を逸らし、死んだ魚の目のようになっている。何があったし。

「…橙の前歯が飛んだ。」

「何があった。」

痛い人たちがチュッチュペロペロし合っても、そんな末恐ろしいことにはならないはずなのだが。

何をどうしたらそうなった。

「あ、あと。屋外でやんなきゃ家が壊れるね。」

「……」

本当に何があったのかはわからない。聞いてはいけない気がした。


とりあえず、ポッキーゲームのポッキーを昆布に変えると面白いのでやってみよう。

これが、今回のリリーの教訓だった。







というわけで、キバ得が2周年ということで遅れながらお祝いです。4000字ほどのギャグ小説だけど…許せ!

今回痛感したこと。一人称、二人称って意識しないとわからないもんだね…!それと全員はキャラ把握できてないから…許せ!!主要になってるキャラは大体出したと思う!!

とりあえず、こんなgdgd話で許してくださいすいませんっした!!


あ、あと面子全体で思ったこと。
うちの子らは下ネタ知識疎いけど、キバリんとこは物凄く敏感なイメージがある。うちでポッキーゲームとか言ったら何か違うものになるしね!
静葉「私王様ゲームしたいです。」
衣玖「死人が出るのでやめましょう。」