キバリんへの捧げ物。

うちのオリキャラさんが出るよ。キバリんは知ってるはず。
もこけね、を目指したらなんと。






「あれ、慧音花なんて育ててたの?」

慧音の家の玄関に、一本の鉢植えがあった。茎が何本も枝分かれし、その先端に紅のような花がみっちりと詰まっいる。葉っぱは楕円形をしている。少し、不気味な感じもした。

それを見た妹紅はじっとそれを見つめる。妹紅の声に気づいたのか、家からひょっこりと慧音が姿を現した。

「それ可愛いだろ?私のお気に入りなんだ。」

「そうかな?私はあんまり可愛いって思わないんだけど…」

秋の、涼しい風が吹く。日差しはそれほど強くなく、冷涼な空気が世間を包み込んでいた。

妹紅は愛おしい人が可愛いと言った花を再び見つめる。何となく、好きにはなれなかった。

「…趣味悪くない?」

「そんなにその花が嫌いか?」

「嫌いっていうか…なんていうか、ちょっと不気味。魔法の森の中の、もっと薄暗いところに生えてそうな、そんな感じがする。」

そうか、とちょっとだけ切なそうに笑う。その笑顔を見て、少しバツが悪くなったものの、自分はこう思ったんだという気持ちからそれを謝ることは無かった。

慧音が言うには、幻想郷にはまだ珍しい花らしく、ある人に分けてもらったという。夢魔のようで厳密には夢魔ではない、感情を花にするという珍しい能力を持った妖怪がこの幻想郷にいるとのこと。

面識は無かったが、その存在を聞いて、実際に会ってみたらその花を譲ってくれたそうだ。

「ふぅん…全然知らなかった。」

「私も知らなかった。外に出てくることはほぼないそうだからな。可愛いやつだったぞ?」

「…私より?」

「妹紅よりは可愛げはあるが…私が好きなのは、妹紅だからな。」

好きと可愛いを取り違えかけている妹紅にそんな言葉を投げる。少し恥ずかしくなって、顔をそっぽに向けた。紅の花が、風になびいてゆらゆらとゆれている。

「そういえば。この花の名前、何て言うの?」

「…内緒だ。」

そう言う慧音は、少し頬が赤い気がする。それに気づかない妹紅は、何で秘密なのかと問い詰めた。

が、大した返事はくれず、自分で調べろと言って教えてくれなかった。珍しい花をどうやって調べろっていうんだと思いつつ、調べるならこれしかないなという一つの案が出てきた。

ある人からもらったというのなら、そのある人を探し出して、会いに行けばいい。そうと決めると、すぐに慧音の家を飛び出し、知ってそうな人を探しに行く。

その姿に手を振るように、紅の花が風に靡いていた。


  ・
  ・

「感情を花にする妖怪?あたしは知らないなぁ…」

「私は知っていますよ。会った事あります。」

「え、いつの間に。」

アリスの家で、穣子と衣玖を訪ねる。正直穣子を頼りにして来たのだが、意外なことに知っているのは衣玖の方だった。

どうも、気圧が不安定になっていた時期があり、その異変の調査に向かったときにたまたま出会ったらしい。確かにそれは空を泳ぎ、空気の流れに敏感な彼女しか分からない異変だろう。

「そのお方はその異変とは殆ど関係なかったのですが、黒幕…?だったお方の屋敷に住んでいまして。それで知り合うことになったのです。」

「へぇ…弱いって思ってたけど、衣玖さん、異変を解決する力あったんだ。」

凄く失礼な妹紅の一言。その言葉に少し苦笑しながら、

「…話し合いで解決してしまったのです。」

「……」

不思議と、納得させられた。

「向こうは悪気があってやったわけではなかったようなので…と、話が逸れてしまいましたね。よろしければ私が途中まで案内しますが。」

そちらの事情をむやみに聞くわけにはいきませんから。途中まで、というのが少しひっかかったが、最後まで居ないことに関しては彼女なりの優しさなのだろう。

「それじゃ、お願いするよ。私だけだったらきっとたどり着けないだろうし。」

「はい、分かりました。…穣子はどうします?一緒に行きます?」

「今度で。あたし達は二人そろって、もこたんは一人けーね先生と離れ離れとか、もこたんが可哀想じゃんか。」

これは…気遣いなのか?

何はともあれ、その妖怪のもとに案内してもらえることにはなったからよしとしよう。


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  ・

案内されたのは霧の湖から入った森の奥深くだった。

ある一箇所だけ、特別な場所に続いているところがあったらしい。そこに案内され、歩いて行くと一つの大きな屋敷が見えた。

その屋敷に無断で入り、いいのかとツッコミを入れたが大丈夫と返ってきた。紅魔館よりがさつな警備なんじゃないかここ。

…実際は面倒な奴が見張りをしていて、面倒な罠があったりしてやっかいだそうなんだけど。

彼女が居る部屋の前まで行って、私は衣玖と分かれた。可愛いやつとは言っていたが、慧音の可愛いはややアテにならない。一応いつでも戦える準備をして、そのドアを開けた。

中に入ると、一人の少女が座っていた。水色の髪に、青を貴重としたケープやスカート。スカートには、何かの花があしらわれていた。小柄な体から、レミリアのような蝙蝠を彷彿とさせる翼が生え、一般的な悪魔が持つような尻尾も生えていた。

部屋は明るく、窓からは立派な庭園が見える。一人に対して大きいような気がしたが、屋敷なんてそんなものなのだろう。

「……?」

こちらに気がついて、瞳の中に私の姿を映す。きょとんとした様子で、首を傾げた。

何か用か。よう尋ねるように。

「…最近、ここに人が尋ねてきて、その人に紅のこの、ちょっと不気味な感じの花を渡さなかったか?」

「……」

首を縦に振って、そっと胸の前で手を握り締める。

「!それだ!」

すると、そこからあの慧音が育てていた花と同じものが咲いていた。どうやら、彼女が言っていた能力は本当のようだ(最も、それが感情に当てはまったものかは確かめる術がないのだが)。

「その花のことを教えてくれないか?どんな花なのか、私に教えてくれないか?」

「……」

その妖怪は、目を細めてじっと私の姿を見ていた。

見ているだけで、答えが返ってこなかった。

「…お前、喧嘩でも売っているのか?売られた喧嘩は買うよ。」

「わあああ!ちょっとタンマタンマ!!」

唐突に、後方から誰かの叫び声が聞こえる。その声の主は息を切らせながら、その妖怪の前に壁になるように突然現れた。

全体が黒っぽいカラーリングで、くるりと曲がった角とクセ毛が特徴で、身長はそこの妖怪よりも小さい。まだまだ子供といった感じだ。

「ごめんよ、ご主人、喋れないんだ…」

「ご主人…ということは、お前はこいつの従者かなんかか?」

首を縦に振り、自分は使い魔で、名をランジアだと簡単に自己紹介をする。黒羊の妖獣で、触ったものに込められた想いを読み取ることができるのだと。

対する主人に当たる人物は花咲アザミというらしい。喋れなくなった理由を尋ねたが、それは答えてくれなかった。

「じゃあいいそこの羊、この花について教えてくれ。」

少し威圧的な態度を取る。が、それならと嬉々とした様子になったところあたり、悪いやつではないらしい。主人の方は面倒くさいとは思ったが。

「その花はバラ科多年草で、秋にそんな感じに紅色で可愛い花を咲かせるんだ。外の世界では結構有名なんだけど、どうやらもっと遠い場所に咲く花らしくって、幻想郷で野生で生えてるのはまだ見たことないよ。」

「ふぅん…で、名前は。」

「ワレモコウだよ!」

「!」

ワレモコウ。妹紅。思わず反応してしまった。

恐らく関係ないのだろうが、自分の名前が入ったその名前を聞いて、胸が打たれたような感覚を覚えた。

それだから、慧音はお気に入りと言ったのか。

「名前の由来は、『われもこうありたい』という儚い想いが込められたって説があるね。それとか…って、ちょっと!?」

それ以上は、聞けなかった。

じっと、していられなかったんだ。


「…やれやれ。なんだったんださっきの人…」

「……」

「ん、これさっき…あ、あの人の感情を出したんだ。…成る程、そういうことだったんだ。あぁ、全部分かった分かった。」

  ・
  ・

「慧音!」

「何だもこ

「さっきはごめん!!」

慧音に会うなり、すぐに謝罪の言葉が出た。

酷いことを言ってしまった。自分は慧音のことをある意味否定してしまった。

その花が、自分を考えて、そして気に入ってくれていたというのに。

しばらくポカーンとしていたが、すぐに何がどういうことか分かったらしい。ぎゅっと、私を抱きしめて言ってくれた。

「…花言葉は聞いたのか?」

「…聞いてない。もう、居ても立ってもいられなくなって。」

「そうか。それなら、教えてやるよ。」

優しく唇に触れる。懸命に背伸びをして、背の高いのそれに触れる。

「以前、お前は『私は不老不死だから、自分の時間は止まったままだ』って言っていたからな。でも、この花の花言葉は『移ろいゆく日々』。例え、不老不死だろうがお前は人間と変わらない。毎日、何かしら違う日々がやってくる。それを、この花は強く言っていて、いつか、妹紅も一緒になれたらなって。そう、思ったんだ。」

勿論、他の花言葉もあって。そこから先の言葉は慧音の口からは出てこなかった。

けど、私のことを思ってくれていることは、何よりも伝わったから。

「悪いな。その、わざわざ調べに行かせて…恥ずかしかったんだ。」

「私なんて、その慧音の想い真っ向から否定しちゃったし、それに、」

「それはもういい。それよりも、妹紅。」

 ずっと、私が死ぬまで、傍に居てくれ。

ワレモコウの花が、優しく揺れた。









けねもこでした!!
いやもうね。ワレモコウってただのもこたんじゃね?って思って、つい!
私もこうありたい、っていう願望とか、最後のワレモコウとか、今回も比喩をちらほら混ぜてみたよ!

とりあえずキバリん、お誕生日遅れてごめん、そして生まれてきてくれてありがとうっ!!















「いやーびっくりしたよ。衣玖さんのお友達だったんだね。」

「こちらこそすみません。いきなり単体でそちらに向かわせてしまって。」

数日後、アザミたちの元に衣玖と穣子が訪れた。というのも、あの慧音と妹紅とのやりとりを見て、一つ穣子は疑問に思ったことがあったそうだ。

「ねぇねぇランジア。ワレモコウの花言葉、『移りゆく日々』以外で何かない?」

「以外っていうのは?」

「けーね先生の感情かアザミさんの感情か知らないけど、そんな花言葉感情で表現しにくいだろーなーって思って。」

鋭いね、とランジアは苦笑する。アザミも少し近寄ってきて、以前妹紅の前で作ったワレモコウを取り出した。

「あの人も、こないだ来た人も、同じこと考えてたんだよ。」

「やっぱり。で、二人ともおんなじ花だったと。で、その花言葉は?」

「『愛して慕う』だよ。」









もうワレモコウはけねもこの花でいい(確信)