6000字しかないんだから一回で終わって問題なくね?ということで。
朝からパソコンが調子悪くて二代目を使う始末。
あと注意。あくまでも犬得での設定ね。元ネタとか今回のゲームの設定ガン無視だからね?
わたしは戦いのときに使われた。
雷がとどろくような太鼓の音色。いつしかそれは廃れ、今では見かけなくなってしまった。
…けれど、それ以前に。
わたしは…ある戦いのときに、敵軍によって壊されてしまった。
憎しみ合い、傷つけ合う世界しか見てこなかったわたしにとって、
「…これは…また、懐かしい太鼓ですね…」
その人との出会いは、わたしに『わたし』をくれた、特別なー…
ー『主人(あなた)の幸せが道具(わたし)の幸せ』ー
「いーくっ!!」
「雷鼓弾。」
「ぎゃぁぁあああっ!!」
軽いノリで衣玖に近づき、お約束のように投げ飛ばされる。何でも、彼女には『雷鼓弾』というスペカがあるらしく、わたしの名前、雷鼓にちなんでなんか、よく投げ飛ばしてくる。
そんな衣玖が可愛いからわたしはそれでいいんだけどな!
「…やれやれ。全くうるさい人…いえ、付喪神が入ってきたものです。」
わたしは最近、衣玖たちのいるところに正式に仲間入りをした。何でも最近一人抜けてしまったらしく、わたしが入ることでその数は埋め合わされたそうだ。
何があったかは知らない。基、興味がない。人が抜けることだ、それが楽しいわけがないだろう。
わたしは、楽しいこと以外興味がないんだ。
「全くですね。慣れ慣れしすぎて逆にどん引きですね。」
「さとりん冷たいなぁ。ほら、煮干しいるか?」
「要りません。バカか。」
バシッとわたしの手を払いのける。どうもあの妖怪はわたしに対して、いや、皆に対して冷たい。せっかく可愛い姿をしているのに、もったいないったりゃありゃしない。
「…心の中と行動が常に同じなのはあっぱれと賞賛しますね。」
「ははっ、そりゃどーも。」
「誉めたつもりはこれっぽっちもありませんが。」
一つため息をついて、肩をすくめる。ため息は嫌いなんだけどなー。なんかこう、幸せが逃げていくみたいで。
「…それ、寅丸さんと同じこと言ってますよ?」
「そーなのかっ!それはいいこと聞いたっ、同意見じゃないか!」
はっはっはと笑うわたしに対し、さとりんは相変わらずの冷たい視線。衣玖も少し引いている。
「相変わらずですね、貴方は。」
「そーだろっ!よしじゃあ衣玖っ、結婚しy
「雷鼓弾。」
再び投げ飛ばされる。流石に家の中だからそんなに飛距離は出ない。
え、痛くないのかって?衣玖だからっと言いたいところだけど、そういうわけではない。わたし自身も本体だが、それよりもわたしがいつも持っている太鼓があって、そっちが壊れるほうが問題なんだ。
付喪神は基本的に神より妖怪のような性質を持つ。寿命という概念はないようである。道具が壊れてしまうと、わたし達は存在できなくなる。道具そのものがわたし。だから要するに、自分自身がその道具、体を共有している。そう言ったら分かってもらえるだろうか。
あ、痛覚はあるからな。痛いもんは痛いぞ。
「そういえば…雷鼓さん、ずっと気になっていたのですが、どうして衣玖さんのことがそんなに好きなのですか?二人は昔からのお付き合いなのですか?」
「いや、初対面ですy
「あぁ、結構前から知り合ってるよ。」
わたしのこの返答に衣玖は目を丸くする。
「はあっ!?ちょっと、いい加減なこと仰らないでくださいっ!」
「?覚えてないのか?そーだな…どのくらい前かは分からないけど、ずっと前にな
「知りません!勝手な作り話はやめてくださいっ!」
「むぅ…そうか。」
まぁ、無理はないか。きっと、あの人にとったらそれは些細なことだったんだろう。
思い出させる必要なんてないから、それ以上わたしは口出ししなかった。
そのわたしの心の中を覗いてか、あるいはわたしの表情を見てかは分からなかったけれど、さとりんが怪訝そうな瞳でこちらを見つめる。
「…それ、あなたにとっては本当のことなのですね。」
「そりゃそうだ?実体験を偽る必要なんてあるか?」
「…ちょっと、何言って
「分かりました。」
何かに納得すると、衣玖の方を向きなおす。彼女の真剣な眼差しに、思わず衣玖は体を少し震わせた。
「衣玖さん、それと雷鼓さん。ちょっと今すぐ二人で話し合ってきてください。」
「…!?ちょっと、さとり!?こんなやつの言うことを信じるのですか?」
こんなやつ、は流石に酷くないか?
「私のサードアイは真実を映す瞳。あなたにとって、その事実が嘘であるのが真実だというのと同時に、雷鼓さんにとってはその事実が本当であるのが真実。私はどちらが真実か、そんなもの知りませんよ。ただ、何かしら思うことはある。それでしたら、いっそそれを互いにぶつけてみては。そう思っただけです。」
くすり、と笑ってみせる。わたしは黙って衣玖の出方を伺った。わざわざ自分から首を突っ込むべき問題でもない。
秒針が何回動いた後だろうか、衣玖はゆっくりとそれに答えた。
「…まぁ、さとりが言うのであれば…」
「よーし、二人きりだな!それじゃ、早速行こうかっ!」
「え、あ、ちょ、きゃぁぁあああぁ…」
しぶしぶ承諾するのを見るやいなや、わたしは衣玖の腕を掴んで外に出た。その去り際に、さとりんの小さく行ってらっしゃいという声が聞こえた。
・
・
「よーし、ここなら二人きりだ!」
「…何でこんな遠いところまで…」
わたしがひっぱってきたのは湖から下流に行ったところ。ここから少し離れたところに魔法の森が広がっている。
ここに来たのには理由がある。ある意味、ここはわたしにとって、一つの思い出の場所だったから。
「ここまで来ても思い出せないか?わたし達、ここで初めて出会ったんだぞ?」
「…だから、勝手なこと仰らないでください。それに、初めて出会ったのは山の中腹ではありませんでした?太鼓を叩いていて、それで私が踊っているのを見た。私は知りませんでしたが、これが貴方にとっての私との初めての出会いだったのでは?」
「それは、わたしが『わたし』になってからの初めての出会いだ。」
「…はあ?」
言っていることが分からないといった様子で首を傾げる。その声からは早く帰らせろという意味が入っていた。
「…あー、じゃあ一から説明か。衣玖、ここで壊れた太鼓を拾ったの覚えてない?」
「太鼓…?…そんなもの、拾いましたっけ。いつのことですか?」
「知らない。」
あ、ものすごく衣玖が怖い表情してる。今にも遊泳弾を打ってきそうな、そんな表情。
っといっても、しょうがないんだよな。知らないとしか答えられないし。
「そう怖い顔するなって。」
「…帰っていいですか?」
「分からないんだって。そのとき、わたしはまだ『道具』だったんだ。」
「…道具?」
道具の状態では、時間の感覚などとても曖昧なもの。自分が今どんな状態か、どうなっているのか、壊れかけているのか直されているのか。大切にされているのかぞんざいに扱われているのか。それだけが、何となく分かるだけのちっぽけな自我。
それを説明すると、少し聞く耳を持ってくれて、わたしの方を向きなおしてくれた。
「…いつの時代かは分からないけれど。わたしは、ある国の戦争で使われていた太鼓なんだよ。」
「…!」
敵軍に攻め入るときに鳴らす太鼓でね。その音色はまさに、わたしの名前と一緒で雷のような音色でさ。雷がとどろくように太鼓を鳴らすことを雷鼓って言っていたらしいけどね。
酷いもんだったよ。船に積まれてたんだけれどさ…いくつもの船が燃え上がって、人々の阿鼻叫喚の声。見たくなくても、感じるんだよ。むごい戦場が、な。
「…それで…貴方は…気が狂わなかったのですか?」
おそらく、わたしの今の性格からすると、そのような惨事の中を生きていた(道具としてな)ようにはとても見えない、そう思っての質問だろう。
「さーな。自我なんてちっぽけなもんさ。ただ、人間は殺戮を繰り返すだけの醜い存在。それが、わたしの中では当たり前だった。」
「…そう…ですよね。」
「だから、それが正しい行動か、むごい行動かなんてそんときのわたしにゃ分からない。わたしは、戦争のために作られ、戦争のために使われる。…そんな風にしか思ってなかったし、それが当たり前だった。」
軽い口調で話すも、話題が話題なのでどうしても空気が重くなってしまう。あんまりこういう暗い話は好きじゃないんだけどなぁ…
「…で、あるとき何があったかは分からないけれど、船と一緒にわたしは壊された。多分、敵軍の攻撃だったんだろうな。わたしは最後まで使われていたから。」
それでわたしの役目は終わった。そう思って、自分の意識も殆ど消えた。そのまま、流れて、どのくらい流されていたのかは知らないけれど、ここに流れ着いた。
そして、そこで一人の天女に拾われた。
「…あっ!そういえば…」
「ようやく思い出した?」
そう、それが衣玖との初めての出会いだった。
意識ははっきりとしていなかった。けれど、不思議としっかり覚えている。
「…しかし、あれは私の知り合いの龍宮の使いに引き渡したはず…」
「あぁ、引き渡した。けれど…んー…順を追って話させてくれ。あと、その前に聞きたいことがある。…ずっと疑問に思っていたんだ。君はどうしてあんなわたしを拾ってくれたんだ?」
大破していて、原型なんて殆ど分からなかったはず。直す気なんてとても起こらないような壊れ方。
でもそれを衣玖は直した。それが今までずっと気がかりだった。
「私にもよく分かりませんが…何か惹かれるものがあったのでしょう。覚えてらっしゃるかは分かりませんが、拾った太鼓を道具の名前等が分かるお方の元へ持っていったのです。そしたらとても懐かしい太鼓だと分かり、それで直したのです。」
「ただ直したいと思った、それだけかい?」
目をつぶって、少し言いづらそうに話す。少しだけ笑っていた。
「とてもくだらない理由だと思いますよ。その人に、雷のような音がする太鼓だと教えてもらって、自分が雷のスペルカードを使うのでとても親近感が沸いたのです。」
期待した理由ではないでしょう、と当時の記憶を想起しながら彼女は笑った。正直言うと、理由は何だってよかった。
わたしは直してくれた恩もあるけれど、もう一つ、衣玖にとても大切なことを教えてもらったから。
「…そんなことない。それよりもさ、直して何人かの前でわたしを叩いてくれただろう?」
「えぇ。その音色を聞いていただきたくて、数人の天女と総領娘様の前で奏でさせていただきました。」
その叩き方は素人だった。それもそうだろう、本人は全くの初めてだと言っていたしな。
…でも、どうしてかその叩き方がすごく自分にとっては心地よくって。
理由を考えて、初めて分かった。
「総領娘ってのは…あの衣玖の隣にいた青い髪の子か。あー。感想今でも覚えているよ。」
「…『普通の太鼓ね。』でしたね。…申し訳ありませんでした。」
叩き方が下手だったのと、あの人の無礼をわびた謝罪の言葉だろう。後者は責めるつもりなんて全くないんだけどな。
けれど、前者は…むしろ、感謝している。
「わたしさ。衣玖が叩いてくれたから、今のわたしがあるんだよ。」
「…?どういうことでしょうか。」
「わたしは…人を楽しませるために叩かれたことがなかった。」
奏でる音は、攻め入るための土気を高めるためのもので。
荒々しい音と共に繰り広げられる殺し合い。それしか見てこなかったわたしが、初めて人を楽しませるために使われた。
そこで、わたしは初めて人を楽しませることを学んだ。わたしが皆を楽しませることができる。
「…そのお陰で、このわたしがある。ずっと衣玖に使われたい、そう思ったよ。」
「そう…でしたか。…すみません、他の人に渡してしまって。」
まさかそんな太鼓で、そんな風に思われているとは微塵にも思わなかった、そんな口振りだった。
正直言うととても悲しかったさ。これから新しいご主人に、新しい使われ方をしてもらえるって思った矢先に引き渡しだったからな。
…けれど。それも、わたしを思ってのことだって知っている。
「衣玖。君は言ってたよな、『使われない道具に価値なんて無い』って。それはわたしのことを考えてくれてた証拠だと思うんだ。」
「はい。使われず、そのまま放置される道具は道具の役目を果たされていません。使われて初めて道具と呼べるのです。…ですから、私は…自分が太鼓を自分の手元に置いていても、なかなか使わないだろうと思い…」
「それで十分だよ。それは…わたしたち、道具のことを何よりも思ってくれた証拠だ。」
まぁ、今わたしが付喪神になっている時点でどんな扱われ方だったか分かると思うけどな、と声をあげて笑う。
しかし、反対に衣玖の表情は暗いままだった。多分、自分のせいで付喪神にしてしまった、あるいはもっと気持ちを分かってやればよかった、そんな気持ちの表れだろう。
…本当、何一つ気に悩むことなんて無いのに。
「付喪神になったの。理由、もう一つあるんだ。…どうしても、衣玖のところに帰りたかったんだよ。」
「…そういえば、付喪神って持ち主に悪さをすることで有名でしたね。」
「そうだね。別に祟るつもりなんてなかったさ。帰れるのなら、何だってよかった。」
結果的にその思いが自分を付喪神にし、その持ち主のところから逃げ出すきっかけとなった。そこから後は、衣玖が聞いている通り。
だから、わたし自身の願いは満たされたんだ。衣玖の元に戻りたい。付喪神になるという形でだけど、わたしはそれが何よりも嬉しかったから。
「…貴方にはたくさん詫びることがありますね。挙げ句に貴方のことを忘れてしまっていましたし。」
「しょうがない。誰も自分が直した道具が付喪神、妖怪になって帰ってくるなんて思いもしないだろう?」
そうなのですが、と口ごもる。言葉が返ってこなかったので、こちらから言葉を投げかけた。
「気にしなくていいさ。わたしは、大好きな衣玖の元に帰ってこれた。わたしの一番望んだ形かもしれないしね、これが。」
雷鼓弾って言って投げ飛ばされるのも楽しいしな、と再び笑う。
しばらく黙っていたけれど、衣玖はようやく口を開いた。
「…もう一つ。すみません…私、貴方の期待には答えられません。私には…すでに好きな人が…」
「分かってる。けど、わたしはあくまで『道具』が『主人』を好きになるって意味で衣玖のことが好き。だから、恋愛対象じゃない。ただ衣玖の側にいれたらいい。わたしはあくまでも道具だからな。」
だから、これからも側に置いてくれるだけでいい。それで、わたしが何か力になって、衣玖に笑ってほしい。道具にとって、それが一番幸せなことだ。
拾われて直されたときに、衣玖が本当の主人だって決めたから。昔戦で使われていたときとは違う、新しい主人を。
「…分かりましたよ…って、これ、そしたら私なんて呼んでいいのか分かりませんね…道具、なのでしょう?」
「雷鼓でいいよ。そんな改まった関係になる必要なんてないし。」
「それもそうですね。では、雷鼓さん。」
「いーや、雷鼓で。君は自分の道具に敬称を使うのかい?敬語は皆に使ってるみたいだからいいけど。」
「…それでしたら道具の貴方が主人に対して敬語を使わないのも変な感じがしますが。」
それはそれ、と適当に笑ってごまかす。それにつられて、衣玖も思わず苦笑を漏らした。
「…では、雷鼓。…これからよろしくお願いしますね?」
「よしっ!それじゃあ衣玖っ、早速けっk
「雷鼓弾。」
本日三回目の投げ飛ばし。けれど、その表情は先ほどまでの暗い表情ではなく、笑っていた。
それでいい。堅苦しい関係なんて不必要。わたしは君が教えてくれたことを胸に毎日を過ごしていく。
わたしは楽しいことにしか興味が無い。そういったのは、わたしが楽しいことを伝えていく側になりたいから。
悲しいことに感化されてばっかりじゃあ、前になんて進めやしない。皆で涙を流し続けるくらいなら、皆でずっと笑い合っていたいから。
人を楽しませること。それが、堀川雷鼓の生き方だからな。
「…けれど、衣玖。」
もしも、わたしが本当に不必要だって思ったら。
わたしのこと、もう要らないって思ったら。
…そのときは、わたしを壊してくれ。
他の主人なんて、もう耐えられないからさ…
雷鼓さんの最後の独白で「雷鼓さぁぁぁぁあああああぁっ!!」ってなったの犬だけ?
…そういえば。とじにゃん過去話は7000字を3回に分けたっけ。…あれ、蓮華草でかなり毒された?
長い話に慣れるって怖いね!
あと、分かったわ。雷鼓さん、早苗とレティを足して二で割った感じだ。
因みに時代は赤壁の戦いとか、その辺の時代。
コメ返。
<キバりん
え、雷鼓さんの胸はデカいよ?
いやいや、ロリコンみたいにデュフフ言わないからねwただの純粋な子供好きだからねw
わーいキバりんに受け入れられたーやったね雷鼓さん!でも好き嫌い分かれるよねこの性格は。
犬得とは色々属性被ったwべべーんとやつーんのあの被り様なw
過去話は赤壁の戦い思い出したら5秒で脳内プロットできたb
けねいく急がなくっていいからね!でも全力期待!
<つらねん
そーだよ!雷鼓さんEXだよ!そーいやつらねはEX好きだったねー。
犬は基本的に1ボス(と5ボス)が好きだがな!1ボス万歳!わかさぎ姫も可愛いよ!
雷鼓さんは強さ変動タイプかな。主人(衣玖さん)に手を出そうもんなら付喪神の祟る力で妖力跳ね上がるっていうね。でも普通でも犬得で3番目くらいには強いんじゃないかな?
…おい、衣玖さんより強いよ。え、従者(?)の方が強いの?何それ萌え!!
因みに。犬得で一番強いのは幽香さんですよ?
もうロリコンには突っ込まない。
過去話はこんな感じで。よくこんな話が5秒で考えれたなって今では思う。
わんこはシリアス過去が大好きでっふ!シリアス過去じゃないの多分早苗だけだよ!
あぁ、衣玖さん入れなかったのは、単純に呼び捨てだったからだよ。あだ名衣玖さんだけつけないからさあの人。衣玖さんは特別な人だから、あえてちゃんとした名前で呼ぶそうです。主人って理由もあるんだろうけどね!
え、面子公開またやんの?あれからまた増えるの?