東方CW小説(やっと) 東方信風断-初風 1-

妖夢視点です。
※無駄にシリーズ物予定。続かないって知ってても(更新日は未定。気まぐれ)
※世界観はすべてCW(Card Wirth)に基準されています。
※キャラおろか設定崩壊。本家の設定何一つしとして無い気がする乙
※文章力皆無


庭に咲いている桜の葉が散り始め、少しだけ肌寒い空気が晩秋を告げる。まだ早いがこれから雪が降るのではないかという錯覚まで思わされるほど今日は寒い日だった。

「では行ってきますね、幽々子様。」

「えぇ、気をつけて。」

そんな日、一人の少女(?)は一人旅だった。

これからの未来に希望を抱いて。



ー東方風信談 初風ー



今日、あの人の家をでる。その決心が早速折れそうになってきた。

というのもやはり風が強く、寒い。それもいきなり寒くなったので自分の体がなかなか慣れない。

(いえ、そんなこと言っていては私は冒険者になれっこない・・・)

満月のような銀の髪に、夜空のような黒いリボン。新緑の緑のスカートを風になびかせる少女、妖夢は少し重い足取りで歩いていた。

目指すはリューン。自分の村から一番近く、そして冒険者が一番集まる街でもあった。

私は冒険者になるつもりでその街に向かっている。理由は冒険者という職柄へのあこがれもあったが、一番の理由はこうだった。




妖夢、あなたは私の側に付きたいと言ったわね。」

「はい、それが今の私の望みです。」

私は西行寺家に仕えるものとして、幼いときからずっとそこで暮らしてきた。

西行寺家はとても大きな屋敷で、庭園には必ず満開にならない美しい桜の木がある。その木は有名で大半の人は知っていた。

「そうね・・・あなたは少し、世間を知らなさすぎるわね。」

「・・・?どういうことですか幽々子様?」

西行寺幽々子西行寺の令嬢のようなもの。空色と桜色の和服に包まれたその姿は、穏健ながらも凛とした美しい女性だった。

「あなたも今年で人間でいえば16・・・もう十分外の世界を知ってもいいはずよ。」

幽々子は戸惑っている私に扇を向け、そして、

「少し外の世界を見てきなさい。そうね・・・冒険者にでもなって。」

「・・・!?」

「世界は広いわよ。そんな中あなたは一流の冒険者になれるかしら?」

そう言って幽々子様はくすくすと笑った。

挑発混じりの口調。少しカチンときたけど、ここで断っては一生この人の側につけやしない、そう思うと、

「なれます、いえ、なってみせますっ!」

「あら、いい返事じゃない。楽しみにしてるわ、その時を。」

さっきと同じように笑いながら、その人は扇を私から離した。




とまぁこれがほとんどの理由。あの人は全く外の世界を知らない私に知る機会を与えてくださった。

そのことに私は感謝しなければならないと思っている。桜のようなあの人にー・・・
そう思ったときだった。

「・・・っ!?」

森の近くに着き、草むらから二つの陰がいきなり現れた。

「・・・グヘヘ・・・」

「ゴ、ゴブリン・・・」

本で見たことがある。だが実物はとても汚く、とても臭く、とても怖い。

「・・・くっ!」

私は持っていた刀を構える。手が震えているのが自分でもよく分かった。

(大丈夫、相手は下級魔族・・・)

実を言うと実践は一度もしたことがない。剣の練習は毎日していたのだが・・・

「キィイイーッ!」

キィインと金属の堅い音が鳴り響く。思っていたよりも重い一撃に少し戸惑った。

(でも、これくらいならー!)

私は一気に体重を乗せ、相手の剣をはじき返す。が、

「ーぅっ!」

もう一体のゴブリンがその隙をついて切りかかる。回避が遅れ、肩に生々しい切り傷ができた。

それも利き手の方をやられた。刀を振りたくても振れない。

「キィイイーっ!!」

「っ!!」

避けれない。そう思って思わず目を瞑った。

が、

「・・・?」

剣が振りおろされてこない。それどころか、

「・・・ギ・・・」

バタリ、と、二体のゴブリンは同時に地面に倒れた。

「・・・!?」

なにが起こったのだろう、戸惑っていたがその疑問はすぐに消えることになった。

「大丈夫!?」

森の中からこちらに走ってくる、妖夢と同じくらいの子が目に映った。金髪で赤いカチューシャ、更に蒼い目と、まるで人形のような女の子だった。

「・・・え、えぇ、大丈ーっ」

肩に激痛が走る。血が溢れんばかりに吹き出していた。

「大変っ、『癒身の法』っ!」

その少女は傷の所に手をあて、短く詠唱する。少しばかり光ったかと思うとさっきまであったはずの傷はすっかり無くなっていた。

癒身の法、治癒能力を一気に急増させて傷を治す魔法だと聞いたことがある。

「・・・ふぅ、もう大丈夫よ。」

「あ、ありがとうございます!」

妖夢は急いで頭を下げる。その少女は微笑んで見せた。

「あっと、そうだ、ちょっとごめんね。」
ゴブリンの所まで歩いておもむろにしゃがんだと思うと、ゴブリンをまじまじと観察し

始めた。

「んーやっぱりまだ傷が浅いか・・・」

「えーと、何をなさってー・・・」

「ん、あぁ、『リトルレギオン』の効果見てたの。まだまだ習得したっては言えないなぁこれじゃあ。」

「リ、リトルレギオン?」

聞いたことのない魔法だった。魔法が使えなくても名前と効果だけは知っておこうと頑
張っているのだが・・・

「知らなくて当然よ。そもそも私みたいな『人形使い』事態滅多に見ないもの。しかも自分で作った技だし。」

そうか、それなら知らなくて当然だ。むしろ知ってたら怖い。

人形使いは、魔法使いの中で主に人形を扱い、まるで本物のように操ることができる人達のことを言う。

人形使いですか・・・珍しいんですか?」

「珍しいもなにも・・・私以外に見たことある?」

「あ、いえ、そもそも私村から出たことが無かったので・・・」

「・・・なるほど、てことは魔物に出くわしたのも今回が初めてなんでしょ?」

「・・・はい。」

少し目線を下げながら返事をすると、妙に納得したように頷く。

「やっぱりね、腰引けてたもの。実際に戦うの初めてだったんでしょ?」

「・・・はい。」

「それであそこまで粘ったんだからすごいわよ。なかなか筋があるんじゃないかしら。」

「・・・そうでしょうか?」

はっきり言って今の私にそんな自信は無かった。

井の中の蛙』とはまさにこのことだ。

「・・・あ、そういえば何処まで行くの?良かったらそこまで一緒に着いていくけど?」

「えっと、リューンですが・・・同行なんて悪ー・・・」

「偶然ね、私もそこに行く途中だったのよっ!」

いきなり満面の笑みを浮かべたかと思うと私の手を握ってブンブン振ってくる。正直肩痛いんですけど・・・

「旅はみちずれっていうじゃない。すぐそこまでだけど一緒に行こう?」

断る理由は無い。街まで時間はかからないようなものだけど、私はこくりと頷いた。

「ありがとう!私はアリス、アリス・マーガトロイド。あなたは?」

妖夢です、魂魄妖夢。」

これが初めての村の外の人との出会いだった。