※前回の続きです。
あれから10分ほど歩くと活気のある街が見えた。沢山の立派な家があり、田舎育ちの私にとってはすべてが驚きだ。
「うわぁ〜人が多いですね。建物もこんなに高くて立派だし・・・」
反対にアリスにとってはそうでも無いようだ。
「んーそうかしら?確かに都会だけど私の住んでたところもこんな感じだったからなぁ。」
聞くところによるとアリスはもう少し東の方にある街、メレンダ街に住んでいたそうだ。
色々なお菓子で有名で、年に一度お祭りを開催するらしい。
「メレンダ数え歌っていうのがあるんだけど、それがみんなメロディーは知ってるのに肝心の歌詞を覚えていないのよ。まぁ私もなんだけどね。不思議だと思わない?」
「確かに・・・アリスは不思議って思ってもそれを探ろうとはしなかったのですか?」
「んーそれよりも魔法に力を入れていたからなぁ。」
と、話に花を咲かせたところで肝心なことを思い出した。危ない、これでは何をしにきたのやら。
「そうだ、私行く所があるのでそろそろ・・・」
「ん、じゃあそこまでつき合ってあげるよ。妖夢だけだったらずっと迷子になって街をさまよってそうだし。」
「・・・う。」
反論できないところが悔しい。
「で、どこまで行くの?」
「・・・・・・」
こうなっては話すしかない、そう思うと私は素直に話すことにした。
「・・・冒険者の宿です。でも笑いますよね、こんな私が冒険者になりたいって思うのですから。」
「・・・・・・」
ガシッと森のときみたいに再び手を握られる。
「すっごい偶然!あのね、私も冒険者になりたくてここまで来たのっ!」
「え、えぇ!?アリスって冒険者じゃなかったんですか!?」
まだ未完成といいながら人形でゴブリンを倒す力、それに癒身の法まで使える。てっきり冒険者だと思っていた。
「違うわよ?ただの人形使い。ただ『ただの』で終わらせたくなくてここまで来たの。って言ってもメレンダ街からここまでそんなに遠くないんだけどね。」
そう言ってアリスはくすりと笑う。私の村からリューンまでを比べたら何処でも遠い気がするのだけど・・・
アリスはとても親切で優しい。それに組んでもバランスがとれて利点しかないと言ってもいい。
でも、一つだけ不安要素があった。
「・・・こんな私でいいんですか?こんなゴブリン一匹も倒せないような私で・・・」
それを伝えるとアリスはとても驚いた表情をし、
「当たり前よっ!だって初戦であそこまで勇敢に戦えたのよ?私なんて初めて出会ったとき怖かったから離れて闇雲に人形投げて森を燃やしたもの。」
・・・チョットマテ、どうして人形を投げて森が燃えるんだ。
「ね、妖夢と同じでしょ?」
「いーえ少なくとも同じではありません!どうして人形投げて森が燃えるんですか!?」
「え、燃えない?」
「燃えませんっ!」
どうしてそうなるんだ。理屈がおかしい。だって人形ですよね?人形が発火させたとでもいうのですかっ!
「っあっははは!」
「!?」
当然アリスは腹を抱えて笑いだした。あまりにも唐突だったので今度は私が驚かされた。
「やーごめんね、やっと妖夢の真面目っ面が剥がれたなって。」
「・・・あ。」
そういえば誰かにこんな大声でしゃべったことがない。アリスに言われてやっと気が付いた。
「・・・ねぇ、だめかな?」
「・・・・・・」
返答にはあまり時間はかからなかった。
「こんな私でよろしければ・・・」
「やったぁ!ありがとう妖夢っ!!」
満面の笑顔。本当にお礼を言いたいのはこっちなのにアリスは何度も私にお礼を言った。
「そうそう、実は目を付けてる宿があるんだけどそこでいいかしら?」
「構いませんよ。私なんて何処が宿かすら分かりませんから。」
「・・・すごいね、その行動力。」
うわぁ微妙に引かれたっ!?いや、だってしょうがない、私の村には外のことなんてほとんど情報入ってこないし!
「まぁここでこうやって話し込むより、早速宿に行こっか!」
「はい、そうですね!」
銀と金の少女はある宿に向かって歩きだした。
冒険者の宿、『幻想郷』へー・・・
「そういえばアリス、さっきの話は冗談ですよね?」
「え、実録だけど?」
「はは、やっぱり冗談でー・・・え?」
・・・幽々子様、世界は広いです。人形で森を火事にできる恐ろしい人とか初めて知りました。