東方信風談 〜白風 3〜

遅くなりましたが更新しました。


 色々と考え事をしながら早足で向かっていると、5分ほどでつくことができた。人数は割と少なめ。それもそうだろう、クリスマスにまで実験熱心な人はそう居ない。

 私は藍の姿を探し始める。すると、塔の入り口付近にその姿を見つけることができた。

私は声をかけようとしたが、まだ少し距離があるところで自然と足が止まり、思わず言いかけた言葉も飲み込んだ。藍は一人ではなく、誰かと話していた。その人は、銀色の髪に漆黒のリボンをつけた、

「・・・妖夢・・・?」

 無意識のうちに二人の視界に入らない位置に移動した。二人の姿はここから確認することができるが、会話の内容まで聞き取ることはできない。

 しばらく雑談した後、妖夢は手に持っていたものを藍に渡す。それは私が今朝、幽香から貰ったものと全く一緒のものだった。

「・・・スノーホワイト・・・!?」

 クリスマスに好きな相手に送ると恋が実ると言われてる花を、妖夢は確かに藍に手渡した。博学な藍ならその花のことは知っているだろう。それなのに嬉しそうに受け取る。・・・ということは。

「・・・妖夢って藍のことが好きで・・・藍も妖夢のことが好きだったってこと・・・?」

 綺麗な金の髪。細長い手足。そして博学。藍に引かれる要素は挙げていけばキリがない。それに、チームのリーダーと参謀は必然的に仲良くなる。そう考えると、あの二人が出来ていたって何の不思議もない。

 このとき私はどんな感情を抱いていた?

 相手が私じゃなくて悲しい?

 たとえ私が相手じゃなくても妖夢が幸せならそれでいい?

 分からない。ただ、気が付くと私は人混みの中、無我夢中で走り出していた。




「はい、これでいいんですよね。」

「えぇ、助かったわ。・・・でもよくこれが見つかったわね。」

「だいぶ朝早くから探しましたからね。おっしゃった通り、なかなか見つかりませんでしたよ。」

 でしょうね、と笑いながら藍は妖夢が持っていったスノーホワイトを受け取る。

「ちょっと小さいけど、材料に使う量としては申し分ないわね。」

「そうですか、それは良かったです。薬を作るのにいると聞いていましたが・・・何をお
作りに?」

「ん・・・ちょっとね。」

 藍は朝、妖夢が朝食を終えるとすぐにこの花を取ってくるように頼んだ。自分は薬の仕上げの最終工程がまだ残っており、妖夢に花の捜索をさせた。もちろん、藍はこの辺ではあまりこの花が咲いていないのは知っている。だからこそ人手を増やしたのだ。

「そもそもこの花は地面の温度がかなり寒いところじゃないと咲かないのよ。だからリューン周辺で咲くには暖かすぎる。でも、希にその条件を満たす場所があって花を咲かせる。何となく神秘的だと思わない?」

「えぇ・・・って、あなたはそんな入手困難な花を私に取りに行かせたんですか!」

 妖夢の今更の驚いた顔に笑いを隠せない藍。少し悪いと思って目を逸らす。

(・・・あら?)

 表情には出さなかったが、金色の瞳は青いスカートと白いローブを纏った一つの影をとらえた。妖夢とはほぼ真逆の方向、まず妖夢は気付かないだろう。

 藍は右手の親指に顎をに乗せ、少しの間だけ思考を巡らせた。妖夢はどうかしたのかと首を傾げたが、そんなものは気にしていない。

「・・・あぁ、なるほど。これは一杯食われたわねぇ。」

「?何がですか?」

 薬が薬だったから全く気が付かなかったわ・・・まさかスノーホワイトの方だったのね。小さくため息を付いて、藍は口を開いた。

 しょうがない、そのいたずらに乗ってあげようじゃないの。

「・・・そうそう、知ってるかしら?このスノーホワイトのちょっとした噂を。」

「え、えぇ。今リューンで流行ってるあの噂ですよね。」

 ・・・間違ってはなさそうね。この花を持っていたらまず誰もが目を丸くするもの。噂話も容易に耳に入る。

 ・・・今回の黒幕さんはそこまで考えたのかしら。私よりも参謀むいてるんじゃない?

「そう、つまらないわね。今から暇ならちょっとお話してあげようと思ったのに。」

「生憎ですが、まだ用事が残っているので。」

「・・・ふぅん。ま、あなたのやることは大体読めたわ。頑張ってね。」

「え、あぁ・・・はぁ。」

 多分、黒幕の思惑通りにことが進んでいる。やることがエグいというか何というか・・・あの子らしいけど。

 それにしても・・・やられたわね。いつもならもっと早くに気づけたものを。ま、なかなか面白そうなこと考えているし、あえて便乗さてせもらうわ。