ほんのり小話 9-上

※シリアス。多分。
※グレーさん視点、6人面子、小説調、がっつりCW世界観


「声が出なくなった?」

私は頑張って身振りでそう伝えた。みんなはなかなか理解してくれないって思っていたけど、意外と幽香がすぐに状況を理解してくれた。

出なくなったのは本当に唐突だった。朝起きて、「みんなまだ寝ているのねぇ」とかって呟こうとしたらこのザマだ。何となく自分がはめられた感じがして胸糞悪い。

原因は全くの不明。朝起きたら急に声が出ませんでした、それしか分からない。

「それってつまり今ならレティをボロクソ言っても反論されないし、しかも氷付けされることもないってことですよね?」

そうほざいた妖夢を私はキッと睨みつける。思い上がってるんじゃないわよ、魔法が使えなくても寒気は操れるわ。…まぁ氷柱には出来ないけれど。あれは魔法の補正がかかっているから。

せいぜい今の私に出来ることは水を氷に変えることか、辺りの気温を下げる程度のことだ。

「…原因は本当に分からないのか?」

こくり、と頷く。藍は少し腕組をして悩み始めた。多分、今まで似たようなことがなかったかを思い出しているのだろう。

「そういえば…今日って何か依頼無かったかしら?」

「あるにゃ、魔物退治の依頼にゃ。」

あぁーそういえばそんなのがあったっけ…それもこんなタイミングに…

私は結構戦闘では役に立つ位置にいると自分では思っている。全体回復が出来るのは私だけだし、何ならアンディレイジョンレイでもぶっぱなってやる。

みんなも私が居ないと苦戦するわよね、アリスは応急処置できるくらいだし。


そう思っていた。

「んー…困りましたね…それじゃあ今回はレティはお留守番ですね。」

その一言に私は肩を震わせた。あっさり不必要と言われたことに思わず腹が立って。

でも、正直その通りだ。魔法が使えない僧侶なんてただの肉壁でしかない。分かっている、分かってはいるけれど。

それでも私は…

「そうね…この状況じゃあロクに戦えな…ん、どうしたのレティ?」

幽香の服の袖を引っ張ってじっと幽香の目に訴えかける。こんなので伝わるとは思っていない。

私情でしかないのは分かっている。みんなの足を引っ張ることになるって知っている。

ただ、私は悔しかった。

あっさりと私が居なくなることを受け入れられたことが。

「…分かったわよ、妖夢、レティは連れて行きましょう。」

「え、ど、どうしてですかっ!?」

「この子の我侭よ。別にいいじゃない、本人が行きたいって言っているんだから。」

みんなは顔を見合わせる。やがて、

「…分かりました。ただし、自分の身は自分で守ってくださいよ?」

私は静かに頷いた。