ほんのり小話18

妖「裏6人+アルファです。いや、実際衣玖さんとルナサしか出てこないです。」


穣「ねぇ、思ったんだけどさ、ルナサって幽霊なんだよね?実体あるの?」

あぁ、そういえば。でもさ、実体無かったらさぁ…




あるところに一人の少女がいました。

その少女は見た目は普通の人間でしたが、騒霊という種族の為、体を持っていませんでした。

人に姿が見えても、触れること、触れられることは出来ませんでした。


あるところに美しい衣を纏った一人の女がいました。

その女は地震が起こることを人々に伝える妖怪でした。

人々を助けたい、けれども人々からは『厄病神』と言われ、嫌われ、石や塵(ごみ)を投げつけられ続けていました。


少女は人に愛されることは出来ました。

しかし、触れることが出来ない、自分のぬくもりを相手に伝えることが出来ない。

少女は人を愛することが出来ませんでした。


女は人を愛することは出来ました。

しかし、人に嫌われ、やがて愛される、その感情を忘れ、人から受ける感情に恐怖を覚えるようになってしまいました。

女は人に愛されることが出来ませんでした。


少女は嘆きました。

どうして自分には体が無いのか。

体があれば女を救うことが出来るかもしれないのに。

自分の思いを伝えたい。

けれどもそれが出来ない。

少女はただ、虚空に向かって泣きじゃくることしか出来ませんでした。


女は隠しました。

自分が疫病神であることを。

伝えると、また独りになると思いました。

女は懸命に振る舞い、自分の弱さを隠しました。

けれども臆病な心はどうしても隠せない。

女はただ、誰も居ない部屋で声を出さずに泣くことしか出来ませんでした。


少女は知っていました。

その女が疫病神と言われていることを。

けれども、それでも少女はその女が大好きでした。

何故なら、自分と似ていて、反対だったからです。

人から愛され、人を愛することが出来ない騒霊と、

人を愛し、人から愛されることが出来ない妖怪と。


女は気が付きませんでした。

確かに、少女から愛されていることを。

女は実際、その感情から逃げていました。

怖かった、ただ、それだけ。

本心はとても嬉しかったはずなのに。

女は素直になれない自分がとても嫌いでした。



「ごめんね…ごめん…ね…」

少女の泣きじゃくる声。これは何度目だっただろうか。

女は自分が居るからだと思っていました。

自分が嫌われ者だから。

けれど、それは違いました。

「…体が無いから…貴方に…本当のぬくもりを…教えることが出来ない…」

ようやく気が付きました。

確かに泣いているのは自分の為。

けれども、自分が嫌われ者だからではない。

自分が、少女の存在を心の中で否定し続けたから。

「…ごめんなさい…」

女も謝りました。

「…今まで、貴方の存在を否定していて…」


女はすり抜けないように、触れない体をそっと抱いて、

「…ようやく…気が付きました。私はただ、貴方が傍に居てくれなくなる、そう思っていました。

それが、貴方の存在を否定していました。

けれども、分かりました。

たとえ、貴方に体が無かったとしても、

私には、貴方の存在が必要だということを。」



少女は女を愛することが出来ました。

女は少女から愛されることが出来ました。


今までどうしても出来なかった、

自分の想いを伝えることが――…






一発ネタじゃねーか。
いや、書きにくいってこれから。やっぱ実体持ってて。