ほんのり小話23

妖「今回は裏面子のお話ですよ。…最近、主要面子空気じゃないですか?」




こ「…お姉ちゃん、」

さ「ん、どうしたのこいし?」

こ「…お、覚えてるかな…ほら。」

さ「?なにがかしら?」

こ「い、いやっ、いいのっ、何でもないのっ。」

さ「そう?いいのよ、何でも言っていいわよ。」

こ「…何でもないから。」



こ(忘れちゃってるかな…もうすぐボクが誕生日だってこと

半分無意識を操る力を手に入れちゃったから…)

別に誕生日だからって、欲しいものがあるわけでもない。

いや、性格にはあるんだけど、

嫌われ者のボクには、到底ムリなもの。

ずっと願っていたけれど、

毎年、叶えられない。

娘「あれ、こんなところでどうしたの?」

屠「お前が落ち込むなんて、らしくないな。」

こ「に、娘々にとじぃ!どうしてこんなところに…」

娘「こいしの帰りが遅いからー…ってのはウソで、たまたま通りかかったから。」

こ「…うん、だよね、まだお昼だし…」

娘「で、何かあった?お姉ちゃんとでもケンカしたの?」

こ「…ねぇ、一ついい?」

娘「なぁに?」

こ「…娘々ととじぃって、いっつもそんな感じなの?」

屠「まぁ…大体、この距離だよな。」

娘「えー、普段はもっとベッタリじゃないのー。」

屠「馬鹿っ、それはお前がくっついてくるだけで――」

こ「……そう。…―――。」

娘「え…こいし?」

こ「え、あ、ううんっ、何でもないから。それじゃ、ボクは帰るねっ…」

娘「あ、ちょっと…」

屠「…どうしたんだ?あいつらしくないというか…」

娘「…んー…よっぽどよねぇ…あの能天気お気楽者があんな調子になるなんて…」

さ「すみません、こいしは…あぁ、帰ったのですか。」

屠「さとりか。ていうかいきなり心読むなよ。」

さ「すみませんね、でも、好きで読んでるわけではないので。」

屠「で、それはさておいて。何か心当たりあるか、こいしがあんな調子な。」

さ「ありますよ。」

娘「え、あるのっ!?」

さ「分からないとでも思いました?でも、私とこいしは、姉妹でずっと一緒にいるんです、むしろ分からない方が不自然だと思うのですが。

…そういうわけで、ちょっと手伝ってください。あと衣玖さんとルナサ、あの二人もちょっと手伝ってもらうよう言っておいてください。」

娘「…具体的に、何をすればいいの?」

さ「簡単ですよ。こいし、もうすぐ誕生日なんですよ。だから、こいしを祝ってくれるだけでいいんですよ。…ムリで承知なんですが、」

屠「なぁ、何でムリとか言うんだ?仲間なんだから当たり前だろう?」

さ「…嫌われ者にとって、誰かが祝ってくれる、それは特別なことなのですよ。」

屠「ふぅん…ま、それなら乗る、というより、乗らないわけがないだろ?」

娘「そうそう、私達も手伝う…って、当たり前だよね。むしろ何で信じてくれないかなー。」

さ「え、あ、すみません…その、」

屠「いいって、言わなくて。じゃ、まずは二人を探すか。あいつらならある意味いい盛り上げ役になるしな。」

さ「…二人とも…ありがとうございます。」




こ「…結局、お姉ちゃんあれから何にも言わなかったな…忘れちゃってるんだな、きっと。」

さ「こいし、お誕生日おめでとうっ!」

こ「…!え、覚えててくれたの…?」

さ「姉妹なんだから、当たり前でしょ?」

こ「…忘れてるって思った…無意識を操る能力を手に入れちゃったから…」

さ「関係ないわ。だって、私が、ううん、私達があなたのこと忘れたことあった?」

こ「…ない…けど…」

さ「さ、みんなもう待ってるわ。」

こ「え、みん…な…?」

さ「そう、みんな。…ほら、行きましょ?」

こ「…うんっ!」


―今年の誕生日プレゼント、みんなで祝うこと―

嫌われ者が願う、けれども叶うことの無かった…―





ぐっだぐだ。