火〜土と一週間やる予定です。
今回は寅パルで、甘いものを。
「…作った、はいいけれど…」
私は星に対して本命チョコを作った。それを渡そう渡さないかで悩んでいるときに気が付いた。
作ったはずのそれがないのだ。
私は確かに自室のテーブルの上においていた。大切なものだもの、忘れたり間違えたりするはずがないわ。
また東風谷や秋の仕業かしら。全く…一体どういうつもりなのかしら。
「え、あたし知らないけれど。」
「っ!?」
唐突に東風谷の声がする。声がした方を向く。
…なんと、そこはベッドの下だった。しかも、秋とセットで。
「嘘って思ったかもしんないけど、残念ながら、あたし達は本当に知らないよ。…じゃないと、こんなところで君と寅ちゃんの行く末を見届けようとか、考えたりしないでしょ?」
「…あんた達、そんなこと考えてそんなとこに居たの。」
「あっちゃー思わず口が滑っちゃったかーあははっ。」
…確信犯だ、こいつ今わざと口を滑らした。
わざとらしくバレたことを演じる秋を見て、思わずため息をつく。横で東風谷もくすくす笑ってるし、ホントもう何なの。
「…じゃあ、もういっそ寅ちゃんに聞いてきたらいいじゃないの。自分の寅ちゃんにあげる用のチョコ知らないかって。」
「ばっ、い、言えるわけないじゃないのっ!」
「?どうしました呼びました?」
タイミング悪く、星が入ってくる。純粋な目は、今やった自分の罪に一切合切気が付いていない。
対して東風谷たちは大爆笑。腹を抱えて笑ってやがる。…星の前じゃなかったらスペルカードの一つくらいくらわせてやるのに。
「ま、あたし達は、これで、出て行くわ…っ、それじゃ、お二人さん、仲良くねーww」
東風谷笑いすぎ。…二人にバレたから、この場に居ても私達を気にして美味しい展開が生まれないだとか、そういうことだろうと思うけど。
…でも、あれ絶対どっかで聞いてるわ。気配隠すの上手いから腹が立つ。
「…しょ、星…あの、」
「そうだ、パルスィに言いたいことがあったのです。」
その星の言葉を、誰が予想しただろうか。
「…チョコレート、美味しかったですよ。」
「…へっ、…え、…えぇっ!?」
屈託の無い笑顔。それに対し、私の顔は赤くなるばかり。思わず口をパクパクさせる。
「ちょ、ちょっと、待って…私、渡してないっ!」
「だって…早苗から聞きました。チョコレート失敗したから当日は渡さないとおっしゃっていた、と。」
「言ってないわよそんなこと!」
「へっ、そ、そうなのですかっ!?」
…成る程、嵌められたことに気が付いた。
まず。東風谷が前日に、星にあたしが作った本命チョコを渡さないと星に陰口。
それを勘違いして、星が捨てられる前に回収。
その光景を見て、東風谷と秋がニヤニヤする、と。
…全くあの二人は…!
「…でも。」
そんな策略に、彼女はいまいち気が付いていないご様子で。
「…捨てようとはしなかった、本当に否定できますか?」
「…そりゃあ、捨てようか…迷ったけれど…」
俯いた私を見て、やっぱりと言いたげに笑う。
「私への想い…そう簡単に、捨てさせませんよ。たった一つだけの、特別な形。…捨てさせるわけにはいきませんからね。」
「…星…」
何時の間に、星はこんなにも独占欲が強くなったのだろうか。
普段は仲間全員に優しさを配る。けれど、それでも私のことはしっかりと、見てくれている。
…改めて、今日分かった。
「…勝手に取ってしまったことは流石に謝ります。しかし
「ううん、いいの。」
星の胸の中に自分の顔を埋める。やっぱりあったかい。ちゃんと、実感できる。
「…よかった、ちゃんと、伝わって。」
「…当たり前じゃないですか。」
私の背に、手を伸ばす。
…今日の空は、妬ましくなるくらいの青空だ。
…甘いか?