今回はとじさとで。
ビターだけに苦い話を。
どうして、このようなものを作ってしまったのでしょうか
彼女には、青娥が居るといいますのに
それでも、気がついたときには
目の前に、たった、一つだけのチョコレートがあったのです
私は、彼女が好きです
結ばれないと分かっていても、好きになってしまったのです
結ばれない、分かっているから、
私は、ただひたすらに彼女を突き放そうとするのです
けれど、どう想いを偽ろうとしても
…本心というものは、嘘をついてくれないのです
「…おや、あなたも本命チョコレートを…ですか?」
たまたま通りかかった衣玖さんが物珍しそうに、私の作ったチョコレートを見つめる。去年は作っていなかった、力の入ったラッピング。
…誰がどう見ても、本命とすぐに見破るだろう。
「…えぇ。けれど…これは、捨てるものです。」
「?こんなに力を込めて作ったものをですか?」
私は衣玖さんとは目を合わせなかった。合わせると、何となく自分の本音を、偽ろうとしている本心を見透かされそうだったから。
届かなければ、意味がない。どうせ報われないのに、それだったら作る意味は一体何?
それならばどうして作ったのか。…そんなもの、私に分かるわけがない。
「……」
しばらくの静寂。一分もなかったのだろうが、私はその時間が異様に長く感じた。
額をなぞると少し汗をかいていた。…本心を暴かれないよう、必死に隠しているのが自分でも嫌になるほどよく分かる。
「…それでは、そのチョコレート、こちらが頂いてもよろしいですね。」
「えっ…」
驚いたと同時に、彼女がどうしたいか、読んでしまった。
私の想いなど、とうの昔にばれていたのだ。
誰にも悟られないように、振る舞ってきたはずなのに。
「…相手、知っていたのですか。」
「はい。…すみませんね、無理しているの、かなり前から気がついていました。」
わざと距離をおこうとしていたことすら、衣玖さんにはバレていたらしい。
仲間として、一緒に居る時間が長くなればなるほど、その分隠し事が通用しなくなる。それは、今の私たちのように。
彼女は、私の代わりにチョコレートを屠自古に渡すつもりのようだ。
想いを偽り、無駄にするのを見ていられなくて。それで、何か自分に出来ることは。それは、代わりに渡すこと。
あるいは、思いなおさないか、自分がもらうと言って、やっぱり私が屠自古のために作ったものだからあげれないと、そういうことを狙っている。
…そんなもの、ただのお節介だ。私には、必要のない。
「…貴方のことです、私の考えなどすでにお見通しでしょう。…想いを偽ることはしなくていいと思うのです。自分の想いを偽ることほど、苦しいものはないでしょう?」
「…なんですか、それでは…あなたは本命を渡せばすべてその想いが伝わるとか、そんな考えを持っているのですか?」
あえて、棘のついた言葉を投げかける。彼女は少し苦笑して、
「流石に、そんなことは思っていませんよ。ですが…必ず、その行為は何かを変えてくれると信じています。少なくとも、何もしないよりはずっと、意味がありますよ。」
「…そう。…ふふっ、あなたらしいですね。」
乾いた笑みを浮かべる。全く、あなたは何も分かっていない。
…自分で渡すのも嫌だから。あなたに代わりに渡されるのも嫌だから。私はテーブルの上の自分のチョコレートを手に取り、そして、
「…っ!」
地面に叩きつけ、更に力いっぱいに踏みつけた。
中身が砕け散る音が部屋に響き渡る。その一瞬で、費やした時間がすべて無駄となった。
「…言葉というのは本当に怖いものでして。心の中が分かっていても、実際その言葉が口に出されると、とても辛いものなのです。心を読んで、彼女が私のことを想っていないと嫌というほど思い知らされ、挙句に、受け取れないと、一言言われてごらんなさい。…私は、耐えることができません。」
中身は外に出ていない。私はそれを拾い上げて、思わず見つめた。
どんなに傷ついても、決して外に出ようとしないその姿が、少し私に似ているなと思った。
「…しかしっ…」
「いいですよね、あなたは。心が読めないと、もし伝わったらという、イフという幻想を見ることができます。ですが、私のように心が読めると…そんな幻想すら、このチョコのように崩れ去ってしまいます。」
…だから、結局は。
…好きになってしまった、私が馬鹿なのですよ。
伝わらない想いを捨てきれず、ただ一人、立ち往生をしている。
そんな自分が、何よりも腹立たしく、馬鹿らしい。
今回はそれっぽい。
コメ返。
>つらね
寅ちゃんも最初妖夢系で、恋愛感情には疎かったのにねー、気が付いたらこんなキャラんなっちゃったよww
今回は確かにイケメソだわーというかもう寅パル甘い、両想い甘いww
感想いっつもありがとう!もし良かったら今日もよろしk((