ほんのり小話 48

よーしキバりんのリクエストの『甘ったるい話』をやるぞ!!
妖「少しリクエストの内容変わってませんか?」

時系列的には雷鼓さん加入後。みのいくで。




それはある秋の昼下がりのこと。小さな事件の勃発。

「こんにちは、穣子に会いに来ました。」

「おじゃましまーす!」

いつものように屠自古たちのところへ顔を出した後、穣子に会うためにアリスの家へと向かう衣玖と、それに同行する雷鼓。それを早苗が出迎えて、中へと手招きする。

「今日は遅かったわね。もう来ないと思ったわ。」

「少し色々ありましてね…よく分かりませんが、さとりに説教をくらっていました。」

この人は一体何をしたんだ。温和な彼女が何かやらかすとは思えないんだけどな、と早苗は心の中で呟く。それを読んでか、苦笑しながら衣玖は答えた。

「大したことではありませんよ。時々頂くお小言の少し長いものです。」

「はぁ…まぁ、それだったら深くは聞かないけど…」

などと雑談を交わしながら、皆が集まるリビングに入る。今日は結構人が多かったが、目当ての人はすぐに見つかった。

みのりん、いつものお客さんよー。」

「…っ!」

いつもならいらっしゃいの一言が飛んできて、そのまま会話に花を咲かせて。

今日はどんな話をしようか、そんな考えも束の間。驚いたように衣玖を見つめると、そのまま勢いよく立ち上がり、そのまま急いで外へ出て行ってしまったのだ。

「え、ちょっと、みのりん!?」

そのやりとりは仲間の誰もが驚く。しばらく静寂に包まれたが、それをレティが破った。

「…あんた、何か穣子を怒らせるようなことしたんじゃ?」

「し、してないです!してませんよ!…多分。」

もしかして、自分の知らないところで彼女を怒らせてしまったのでは。

遅く来たから?時々会いに来ない日があるから?…いや、それとも。

…鬱陶しいと思われているのか。来ないと思っていたのに来たから、迷惑でしかない私を無視したのか。

マイナスの考えが始ると止まらない。自分で自虐を繰り返し、そのまま自己嫌悪に陥る。

「い、衣玖っ!まだみのりんが何であんな行動を取ったかは分からないぞ!単純に照れ隠しかもしれないし!」

「何に照れてるかは謎だけれど…しょうがない、追いましょ。あんまり大人数で行くわけにはいかないから、あたし、衣玖さん、雷鼓。先に戻ってきてた場合、幽香さんが呼びに来て…ください!」

「私!?な、何で私限定!?」

「だって、愛の力で分かりますから!」

そう言って、頭の跳ねた毛がぴょこぴょこ動く。そういえば『幽香さんレーダー』とかいう代物とか本人は言っていた。半径49.195kmの範囲なら幽香がどこに居ても分かるという…そんな。

ストーカーもびっくりな追尾能力である。嘘だと信じたいが、実際その跳ね毛は常に幽香の方に向いている。

「…冗談に聞こえないのよね。」

「冗談じゃありませんか

「はいはい行ってらっしゃい。」

これ以上話していても疲れと気持ち悪さしか伝わってこない。ため息を一つついて、幽香はさっさと行けと手を振った。

それを見て苦笑する衣玖。もの惜しそうに見つめる早苗を引っ張り、雷鼓を携えて捜索に出かけた。

  ・
  ・

 それじゃあ、別れて捜索しましょ。


そう言ったのは早苗だった。その数分後、目の前には今回の目的の人が。

早苗に親友が何処にいくのかが分からないはずがない。その上何処に行ったか分からなくなっても、霊力のある方へ歩いていくと必然的に穣子の元にたどり着ける。

ではどうして別れてなどと言ったのか。すぐに分かるのなら、3人ですぐに行けばいいのに。

「……」

「…あたしからは逃げないのね。無言のままではあるけれど。」

衣玖が来るまで一緒に居て、逃げ出さなかった穣子なら、自分には何があったか話してくれるのでは。衣玖が要因だとしたら、自分なら大丈夫だろう。そう思って、一人で会うためにわざわざこんな提案をしたのだ。

ふっと、鼻でため息をつく。それから服の中から紙と鉛筆を取り出し、何かをカリカリ書いて早苗に見せる。

「『衣玖さんに会わせるのはもうちょっと待って』?また、何で。」

「っ……」

それを尋ねると、少し気恥ずかしそうに目線をそらせる。それと同時に、早苗はもしかしてと手を叩いて、

「まさか子供ができt

ゴッ!!!

穣子の腹パン。ツッコミの意であるため大した威力ではないが、それでも痛いものは痛い。

「ゲホッ…じょ、冗談よ…そ、そんな殴らなくても…」

一つ深呼吸。ふざけたことを言いつつも、察せたのは本当のことだったらしい。

「…そうね。夕方くらいかしらね。っていうか、それ巫女専用の技なんだけど。」

「……」

また何か紙に書き始める。その表情は、とても嬉しそうに。

「…へぇ?それは…ふふっ、あんたも素直じゃないわねぇ。」

ニヤニヤする早苗と、少しバツが悪そうにする穣子。幼い神の頬は、少し赤くなっていた。

  ・
  ・
日が沈み始めるころ、衣玖は雷鼓と共にまだ穣子を探していた。

早苗が見つけたことを知らない衣玖は、その表情にかなり焦りが出ていた。また、それに気が付かない雷鼓ではなく、彼女もまたそんな衣玖を心配していた。

「穣子…何処、ですか…」

「衣玖…きっと、見つかるよ。」

確信はないけれど、そう励まし続けなければ衣玖が潰えるような気がして。

そっと背中を叩く。何度そうしたかは分からない。けれど、自分にはこのくらいしかできない。分かっているから、傍に居て、励まし続けた。

「…雷鼓。私は…穣子に、ついに拒絶されてしまったのでしょうか。」

「そんなことないよ。…一緒に居て分かる、みのりんはそんなことしたりしないって。」

「では…今日のこれは、何だというのですか?」

「…それは。」

その質問に返答をすることは出来なかった。分かるはずがない、長く付き合っている衣玖でさえ分からないのだから。

途方に暮れていると、どこからかこちらを呼ぶ声が聞こえる。それはよく知った声だった。

「衣玖さんっ!らっこさん!二人見つかったわよ!」

「っ!本当ですかっ!?」

嬉しい、というよりも不安や恐怖といった感情の方が強いことを早苗はすぐに感じた。

少しだけ考えて、真面目な顔をして答える。

「…衣玖さんだけでおいでって。そこを真っ直ぐ行ったところに居るわ。行ってあげて。」

「…………えぇ。」

返答までの不自然な間は、自分が行っても大丈夫かどうか考えていたのだろう。

自分は拒絶されているのでは。そうだとしたら、もう会わないほうがいいのでは。

そう、感じていたのだろう。

最初は戸惑っていた足も、やがて早くなり、すぐに彼女の元へと走りだす。

直に問いたい。彼女にとって、私は迷惑でしかなかったのか、そうではないのか。


「さ、あたしたちも行くわよ。面白いものが見れるから。」

「…なぁ、みのりんはどういう気持ちだったんだ?」

「ん?思ってるよりもっと軽くて愉快なものよ。見たら分かるわ、とてもくだらないから。」

  ・
  ・

「穣子っ…!!」

その声に、待ってましたとばかりににやりと笑う穣子。夕日のその暗い明るさが、逆に相手の表情を映すかのようにぼんやりと輝く。

「…ねぇ、どうして…私から逃げたのですか…?」

「……」

聞くのが怖い。けれど、聞きたい。

そんな矛盾した本心が分からない穣子ではない。

だから。

「…紙?…『こういうことだよ』…?」

その刹那、素早く衣玖との距離を詰め、そのまま強く体を押す。

「きゃあっ…!!」

倒れた体に乗り、逃げられない姿勢を作る。にっこり笑う穣子に、まだ怯えた表情は消えない。

そして、そのまま。

「…っ…ん、んぅっ…!!」

口と口が触れ合う。思わず体を震わせるが、彼女のなすがままにされてしまう。

不意に、何か熱いものが流れ込んでくる。それはどこか甘くて、味わったことのあるような味だった。

「…っ…ん……っ…!」

その正体は分からない、けれど、体が火照っているのは分かる。

それは、このせいか、それとも。

「…っぷはぁっ!!あーやっと喋れる!結構時間かかってびっくりしたよーもー。」

すべて流し込み終わったのか、嬉しそうな顔で穣子は顔を離す。唇同士は銀色に輝く糸でまだ結ばれていた。

「ごめんね、驚かせたよね。まさかそんなに焦燥にかられてるとは思わなかったよ…?」

様子がおかしいことに、いち早く気が付く。どうしたのか覗き込むと、そのまま体に優しい痛みがほとばしった。

「ひゃあぁっ…あの、衣玖さん…?」

強く抱きしめられて、気が付いた。

自分が一つ、大きな失態をしてしまったことに。

「…バカ……寂しかったのですよ…貴方に…拒絶されたんじゃないかって…」

「……」

嬉しいような、恥ずかしいような。少しくすぐったいと思いながらも、罪悪感がしなかったわけではない。

だから。

「うん…ごめんね。」

そのまま、衣玖になすがままにされることを決めた。




「…ね?くだらなかったでしょ?」

「えーと?口噛み?だったけ。それがやりたかっただけ?」

口噛みというのは、加熱した穀物を口でよく噛み、唾液の酵素で糖化、野生酵素によって発行させてお酒を造ったという話である。

巫女だけが行うそうだったのだが、一度早苗が穣子にやったときにそれを衣玖さんにやりたくなったらしく、そのままこんな形になったそうだ。

「で、よく考えたら衣玖さんお酒に弱かったからこんなんになっちゃったわけ。」

「なーんだ。それだったら言ってくれればよかったのにー。」

そう言いながらも彼女の顔は笑っていた。そんな彼女に、分からないようにぽつり。

「…それはね、あんたの言ってた照れ隠しそのものよ。」

くすくすと笑う早苗の声。それは静かに森の中に消えた。










…ナニコレ。無駄に長い。
っていうことで、対して甘くなかった気がするけど以上!…ムリだった!ごめんキバりん!!

それからちいちゃんさん、コメ返明日しますねすいません!!