いいから早く決着着けろって?
ネタが無いんです。
※シリアスです。
私はポルターガイスト。
生まれたときからバイオリンを手にしている、ただの騒霊。
私はこの音楽でみんなを楽しませることが出来たらなって、ずっと思っていた。
妹のメルラン、リリカはそんな思いはあまり無いだろう。二人はこの三人で、仲良く音楽を奏でたいだけ。
初めはそれでいいって、思っていた。
けれども気が付いた。
私一人では誰も喜ばせることが出来ない。
私のつかさどる音は『鬱』の音だから。
今日、妹達と喧嘩をした。
原因は私の性格にあったと言ってもいい。私の、悲観的な性格の。
「私は、みんなと演奏することをやめる。」
二人とも私を止めた。どうして?と、ただ尋ねるばかり。
「私は…私は誰も楽しませることが出来ない。」
メルランは言ってくれた。私達の音楽は誰かに聴いてもらう為じゃなくて、自分達が演奏したいからただ演奏するだけだって。
私は逆に、その言葉に腹が立った。
私は誰かを幸せに出来る、そんな曲を奏でたいだけなのに。
ただ、私が歌って、それで皆に笑顔になって欲しいだけなのに。
それを、自分達の為の演奏だって?
…分かっていない。いや、誰も分からない。
私のこの気持ちなんて。
私はバイオリンを持って天空に来た。
騒霊である以上、音楽から、音から離れることなど出来ない。
ここでなら誰も聞きはしない、誰も悲しみはしない、誰も気分が落ち込まない。
それに、もしかしたらいつかは私が望む曲を奏でられるのでは。
そんな願いもあった。
その微かな期待を胸に、私はバイオリンを弾き鳴らした。
…馬鹿らしい。
私は5分も立たない内にやめた。
誰も私の曲を聞いても笑顔にならない。どんなに足掻いても、どんなに練習しても。
それじゃあ、こうして一人で練習する意味って何?
…帰ろう、そう身を翻したときだった。
「あら、やめてしまわれるのですか?」
誰も居ないと思っていた私は酷く驚いた。振り返ると、そこには美しい衣を身にまとった人が立っていた。髪の毛は青紫色で、この大空の青にも負けずによく映えている。
「…っと、すみません。空を渡っているときに素敵な音楽が聞こえたので…思わず聞き入ってしまいました。」
そう言ってその人は微笑みを浮かべる。優しくて、温かい笑顔を。
「…私の曲なんて…どうせ…」
「…何かあったのですか?酷く落ち込んでいるようですが…」
「…私は…私はただ、皆を楽しませる曲を奏でたいだけなのに…ただ、皆を楽しませたいだけなのに…」
……
僅かな時間、不思議そうな表情を浮かべていたが、やがて、
「私は貴方のその曲に惹かれました。紛れも無い事実です。…私は大好きですよ、その音楽が。」
「っ!!」
…この人も何も分かっていない。
私がどれだけ苦悩してきたかを。
この人は知らない。
私がどうしてここに居るのかを。
「貴方は何も分かっていない!私がどれだけ苦悩しているかを!私は人を暗くさせる音楽しか奏でられないのに!それが…それがっ!!」
私は思わず胸倉を掴んで怒鳴りつけた。初対面だということもお構いなく。
しばらくじっと私の目を見ていたが、やがて微笑んで、
「でも、惹かれてきたのは紛れも無い事実です。それに、好きになった音楽を好きと言って、何かおかしいでしょうか。」
屈託の無い笑顔で、その人は私に言った。
嘘は付いていない。確信を持ってそう思った。
それが嬉しくって。
初めて言われた言葉が嬉しくって。
私はただただ、泣き崩れた。
「…私の名前は永江衣玖と申します。…貴方は?」
「…ルナ…サ…ルナサ…プリズム…リバー…」
これが私と衣玖さんの、初めての出会いだった。