東方小説 『偽心暗気』 上

※神子様は道教を、布都は道教と仏教を足して2で割ったようなものを、屠自子は仏教を(でも関心は低い)この時点では信仰してます。




人なんて、信じるだけ無駄。


そんなことより、自分のために利用してやった方が得。


いつしか私は、人と接するとき、自分の利益をしか考えなくなっていた。


だって、人なんて信じたら必ず、


…必ず、裏切るもの。



ー『偽心暗気(ぎしんあんき)』ー



私の名前は霍青娥。もうかれこれ千年以上は生きている邪仙。周りの人は私を恐れて出てきやしない。

私は少しそのことが自慢だった。だってそれは、私の力が周りに認められているってことだから。邪仙と呼ばれるくらいにね。

でも、そろそろ退屈してきたのよね。私の力を誰かに見せつけたいのに、誰一人としてよってこない。せいぜい周りに居るのは私の意志で動かせる死体だけだし。

そうだ、いっそ誰かを弟子にして、もっとこの力のすばらしさを一緒に伝えていくのも面白いかもしれないわね。仙人は自分から弟子をとったりしない、だって仙人は自分の為にしか力を使わないもの。

それならあえて、私は自分の為に他人を使うわ。やっぱり私はそこらの仙人と考えることが違うわ、ちょっと自分で自分を誉めてあげる。

さてと、誰がいいかしらね。うっかり腑抜けなんて拾っちゃったら、それこそ大損するもの。できれば力を持っていて、そうね…

あまり人間に好かれていない独りの人、かしら。

ここで私はふっと一人の人を思い出した。

豊聡耳神子。かなり昔に手を出してやったことがあったわ。今でも道教を信仰しているのかしら。そう思うと、別にこの考えに至ったのが初めてじゃないということに気がつく。あんまり古い出来事だったから忘れてたわ。

今は二人の従者がいるのだったわね。確か物部布都と、蘇我屠自古。布都は仏教にいつまでもすがっていて、挙げ句に順応性が皆無に近い。そんな奴弟子にしたって面倒なだけに決まってるわ。

もう片方は布都にはめられて亡霊になったのよね。それで人に怨みを持つ怨霊になった。私はそこまで思い出してにやりと笑った。

それなら布都に騙されたということを根にもっていたっておかしくはないわ。持っていなくても、心のどこかでそれは残っているもの。それで道教を信仰して、奴を見返そう、そう思ってくれるかもしれないわ。

それに、彼女もまた人にあまり好かれていない。自分の周りに雷を落とす、それも怨霊ときた。そんな彼女が好かれるわけがない。

そうと決まれば早速会えるチャンスを伺いにいきましょ。私は壁を通り抜けれる、どこにいたって関係無いわ。


  ・
  ・
「…誰だ。」

意外と彼女が一人になるのは早かった。押しつけられた雑用をこなしに人里に降りてくる途中、私は屠自古に話しかけた。

「あら?私のこと知っていると思ったんだけど…?」

「…あぁ、そういえば神子様に道教を教えたの…お前だったそうだな。」

あまりこっちのことを良くは思っていないみたいね。まぁ大体自分と関わってくる奴を全体的に面倒だとは考えてるようだけど。

「えぇ、ほら、知ってるじゃない。」

「だから、そんな奴が私に何の用がある。」

早くしろ、あるいはさっさと帰れ、そう言いたいのが手に取るように分かる。ちょっとこの態度は失礼だと思うんだけど。

でも、そんなところ、私嫌いじゃ無いわよ。

「簡単よ、道教を信仰してみない?」

「…は?私がか?何の冗談だ。」

「私は本気よ。知ってるわ、あなたは布都にはめられて怨霊になった。それでこんな姿になったのよね?」

ここまで言って、彼女は一つため息をつく。

「私はこの姿を嫌だとは思っていない、むしろ体など無い方が何かと便利なんだ。だから勝手にこんな姿と言われる筋合いは

「誰もそんなこと言ってないわ。私が言いたいのは、布都を見返したくない?ただこれだけよ。」

屠自古の口元に人差し指を当て、言葉を遮る。少し後ずさったが、私はそんなこと気にはしない。

「…悔しくない?腹が立たない?むかつかない?憎くない?そんなこと無いわよね、それじゃああなたが怨霊になるはず無いもの。道教の力なら、彼女を簡単に葬ることができるわよ…?」

怪しくにやりと笑ってみせる。けれども屠自古は全く動じず、私を真っ直ぐ見て強く言い放った。

「断る。」

「なっ…」

鬱陶しそうに私の手を払いのける。心が微塵も揺れていないのがはっきりと分かる。そ
れどころか、余計に鬱陶しく思われている。

「私は誰の力も頼らない。もし私があいつに見返しを考えるのなら、そのときは自分一人でやってやる。…ただ、それだけだ。」

もう用は済んだな、そう確認することなく彼女はこの場を離れた。私はただ彼女の後ろ姿を呆然と見ていた。

なによあいつ、人が折角親切に道教のすばらしさを教えてあげようと思ったのに、あんなにあっさりと断って…

段々腹が立ってきて、悔しくなって。

自分のプライドが傷つけられたのは他の誰が見たって一目瞭然だ。

「こうなったら意地でも教えてやる、道教のすばらしさを!」

もうあんな強がりなんて言わせない、もう不必要だなんて言わせない、

道教のすばらしさにその心を沈めてあげるわ!




コメ返事
<みぃちゃん
いや、早苗さんはそこを取っても普通の人じゃないわwうちの早苗さん暗殺得意だから(え)w
うちの早苗さんの性格も他では滅多に見ないんだろうなぁ…w


専茶の時間のことおっけー。
日曜日の夜は普通に犬得チャットだから気楽にどうぞー^^*
ただ今回はちょっと人数少ないかと思われ;;