輪廻之理 おまけ話

おまけ。

※今日の記事は二つあります。こちらが後なので、先に下の記事を読んでください。
※5日分すべての話のネタバレをします。読んでいない人は先にそちらをどうぞ。





「やっほー、ご苦労様。上手くいったみたいだね。」

穣子は夜遅くに帰ってきた友人にそう声をかける。首尾は聞かなくても分かっていたようだ。

信頼があってか。それとも他の要因か。

「えぇ、蛍が見られる最適条件、見事奇跡を起こしてクリアしてきたわよ。」

手を腰に当て、胸を張る。相変わらずいい仕事をする、と穣子は思わず笑いをこぼした。

「で、あんた、その羽衣はどうするのよ。」

「明日衣玖さんに返しに行くよ。勝手に取っちゃったことに反省はしていないけれど。ま、相手は衣玖さんし、捜し物はこれじゃないって言ったらすぐに下がってくれるよ。」

「そう…ね、衣玖さんだもんね。その羽衣の細工には気づかないでしょうね。」

細工、時の干渉を受けず、一定の時間が流れるようにするもの。はがれることがなければ、効果も一生。便利なのかよく分からない細工だったけれども。

この細工は穣子が提案したもの。せっかくまた出会って、すぐに別れてを繰り返していたら、お互いの想いが薄れるかもしれない。それに、すぐに別れなければいけないのも後味があまりよくない。そう考え、今まで試行錯誤していたのだった。

「でも、そのうち気がつくんじゃないかな?」

「あのメイドと対峙したときとか?」

「それはあるかもしれないね。」

最も、こっちから紅魔館へ出向くことは滅多にないけれど。

「気がつかなかったらさとりさんに言ってもらおう、心を読んでくれるって本当に便利だよ。言葉にしなくてもひそひそ話ができるんだよ?」

「一方的なひそひそ話だけど。」

「自分が読めたら立派に成立するさ。」

痛感したのは衣玖さんとさとりさんが二人で話してた、あのときだったかな。まさか言えないでしょ、みんなに衣玖さんが死んだってこと伝えてだなんて。

「それ、同意してくれなかったらどうしてたの。」

「するって分かってた。さとりさんも、私ほどじゃあないけどひねくれ者だからね。」

他人の性格まで悪用する。穣子が性格が悪いという一つの要因でもある。

彼女は論理的思考にもとずいた考えをすることもあれば、他人の思考にもとずいて動くことも多い。両立させるからこそ、恐ろしい程の狡猾さを発揮するのだ。

「…そうそう、今更だけど…あんたの行動、所々読めなかったのよ。今聞いてもいいかしら。」

「うん、いいよ。」

穣子は多分長くなると思い、早苗に座るように言う。けれども早苗はそれを断った。だろうね、と彼女はくすりと笑う。



「さとりに何聞いてたの、あの衣玖さんとさとりが並んでしゃべってるとき。」

「あぁ、あれ?単純なことだよ。衣玖さんはルナサのことが好きか、ただそれだけ。」

「…それだけって…そりゃ聞かなくても分かるじゃない。」

「衣玖さんは絶対肯定するさ。でも、よく考えてごらんよ、自覚がないってこと、よくあるじゃん?」

忘れたとは言わせないよ?とにやりと笑ってみせる。もちろん早苗は覚えていた。

「…幽香さんのことは認めるわよ。つまり、第三者から見て、本当に好きか思ってるかを調べたかったの?」

「違うかな。私はあくまでさとりさんに聞いたんだよ。」

つまり、さとりでなくてはいけなかった理由がある。早苗は数秒考え、やがて、

「…心の中が読める、読んで、奥深くまで読んで、本当に思っているかを調べてもらって、ってこと?」

「そう。あの人の前じゃ、仮染めの想いなんて、すぐにあばかれちゃうからね。」

改めて考えると恐ろしい能力である。嫌われるのも仕方ない、と早苗は苦笑した。

「…それと、あそこでそれを聞いた理由なんだけど。あれはもう私の好奇心だったかな。お互いが思い合っていると、輪廻転生後またお互いに出会う。じゃあ、片方が不老で死なない、そんな人と普通の生者。そうした場合、輪廻転生は早く行われるのか。憶測では普通よりも数年早くなる程度だったんだけどなぁ。」

思っていた以上にかなり早かった。いや、早いどころの騒ぎではない、瞬間と言っても過言ではないだろう。わずか15年程でまた二人は出会ったのだ。

それも、変わらないあの姿で。いくら龍の住む世界の時の流れが早いからといって、これほど早く出会うことは前代未聞だった。

「衣玖さんに後悔の念を持たせていたのが効いたかな。死んですぐ転生だなんて聞いたこと無いよ、それもちゃんと記憶を持ったまま。」

「そういえばたまに記憶を持ったまま転生する人も居たんだっけ。」

「そう。あんまり多くはないけれど、決して少なくもないんだよね。うーむ、何か方程式みたいなのがたてればいいんだけど。」

もちろん、それができないことは穣子もよく分かっている。

感情、思考、そんな形の無い、また、定義付けもできずはっきりと表せないもの。そんな不安定なもので、人の心は成り立っている。不安定なものを数式になんてまず出来やしない。

「…さてと、このくらいかな?」

「いいや、一つ、まだ本題が残っているわ。」

いきなり真面目な顔になる。思わず穣子の表情から笑みを消した。珍しく少しだけ驚いている自分が居る。

「…目的は大体分かったわ。想いの強さがどれほど転生の早さに影響するかの実験。それはそうなのでしょうね。

…じゃあさ、昨日ルナサに会いに行った…あれ、衣玖さんの羽衣を奪うことが目的だったのでしょ?」

「何で衣玖さんがあそこに来るか分かったって?あの人って人間の里に行くとき、まず湖に降りてくるんだよ。多分目印に適してるんだろうね。」

昔の行動パターンだったらの話だったのだけど、と苦笑してみせる。けれども早苗は首を横に振った。

「私が聞きたかったのはそこじゃないわ。穣子、あんた帰ってくるときわざわざ待ち伏せしてまでルナサに会ってたわよね?あれは…あなたのシナリオの中にあったわけ?」

別にあそこで会う必要なんて無かったわよね、と鋭く追求する。知ってたんだ、と苦笑した後に人差し指を頬に当て、しばらく考えた素振りを見せ、

「…それは、答えられないかな。」

「へぇ、珍しく情が移ったわけ。あんたにしちゃ、珍しいんじゃない?」

からかうように笑ってみせる。少しむっと来たが、すぐにつられて笑いだした。

「…しょうがない、似てたんだ、私と。」

「そうね、似ていたわ。…大丈夫よ、笑わない、っていうかそこで情が移らなかったら本当に悪魔だわ。」

「悪魔、か。ふふ…、まだひねくれきれてないっか、私も。」


信仰されなくなって、今にも消えそうになって。

潰えることを覚悟したとき、君に会った。

だから、ね。



私、思うんだ。


またいつか、なんて幻想。


抱くのはきっと、悪くない。


巡り巡ってほら。


先のことで、よくは分からないけれど。


けれど、確かに、きっと。


巡ってやってくる運命がある。
















おつかれしやーしたぁぁぁああぁぁぁああぁあぁあああっ!!!!!

あぁぁぁああもっぉぉおおおほんっっとうっとおしかったわこの話!何回泣くねん!もうえぇっちゅうねん!!


ていうか穣子いい仕事しすぎなんの。レティさんの上位版だよ、ある意味w

意外とさとりが便利なんよね。あと困ったときのこいしちゃん。あれ、屠自古と娘々は?あの二人は隅っこでリア充してればいいよ。


というかね、サブ面が自由度高いの。主要と裏は混じらないけれど、サブはどっちにも関われる、そんな感じ。

とりあえず一言、リア充めパルパルパルパルパルパルパルパr((




えーと、はい。この一週間、こんな重っくるしい話に耐えてくださった人が居ましたら、本当に心から感謝しますっ。

ていうか居るか…?絶対胃もたれ必須じゃんか。

月曜日からまたいつも通りの話になります。