ほんのり小話22-1

お久しぶりでしたー。

今回全然ほんのりじゃないです。重たい上、長い話を予定しているので、そういうのが苦手な方は注意してください。
因みにサブのお話です。



 「いっ、妹様っ!何処へ行かれるのですかっ!」

 「お、お戻りになってくださーきゃぁあっ!」

 「どうしたのメイド達っ!」

 「あっ、お嬢様っ!それが…それがっ!」





「平和ですね。」

今日は寅丸、早苗、穣子、パルスィの四人だけが集まっていた。

10人全員そろう方が多いが、かといって片方の面子だけがこうやってアリスの家にお邪魔になっているのも別に珍しいわけではない。

特にやることが無い寅丸は、椅子に座って大きなあくびをした。それを見た早苗が苦笑する。

「ったく、だらしないわね。」

「しょうがないじゃないですか、特にやることがないのですから。」

「じゃあ手伝ってよ、暗器の手入れ。」

「早苗ー、それは寅ちゃんのうっかりが働いて全部へし折られるパターンだよ。」

「しませんよそんなことっ!」

サブ面子に今日も笑いは絶えない。日々同じ空間で過ごしていると、もうお互い、誰もがこのメンバーでいることを当たり前だと思い始める。

誰一人欠けることの無い、当たり前の。

「…あら、誰か来るわ。」

幽香さんじゃないわ、と一言付け足す。客が来る前に大体早苗は誰かが来るかを察知する。誰が来るかは幽香さんか、それ以外といったざっくりしたものだが。

「…入っていいわよ。ここに到達する時間が早かったから…まぁ、人間じゃないのでしょうね。」

入ってくる前に入っていいように言う。サブ面でこういうことができるのは早苗ぐらいだ。

入ってきた人を見て、寅丸とパルスィはぎょっとした。早苗と穣子も顔をしかめる。蝙蝠のような黒い羽、淡い青みがかかった銀色の髪、そして真紅の鋭い瞳。

実際出会ったことは少ないが、存在は十分すぎるほど知っていた。

紅魔館の主、レミリア・スカーレットだ。

「…思わぬ客ね…」

戦闘態勢に入ろうとするパルスィを、寅丸が止める。種族の力量的にはあちらが上なことくらい、誰もがわかっていた。

「…突然だけど…明日の昼頃まで、ここから一切出ないで頂戴。」

「…?えらく突然じゃない。何かあったの。」

パルスィがそう尋ねたとき、早苗と穣子はレミリアの拳が固く握られていることに気が付いた。どうやら、よくないことが起こりそう、あるいは起こったらしい。

「…妹のフランが外へ出たのよ。」

「ーっ!?」

穣子だけやっぱりといった苦笑を浮かべる。昼までという条件で、大体予想は付いていたらしい。

でも、どうして昼頃までか、という仲間の問いかけに、穣子が答えた。

「ほら、吸血鬼って夜行性でしょ?だからこういう昼間は寝ているんだよ。ま、太陽の光をずっと浴びたら灰になっちゃうしね。だから、暴れだすとしたら夜。だから、その夜に妹を抑えにいくけれど、昼まで考えなきゃ絶対安全とはいえない。でしょ?」

「…えぇ、そうよ。」

言おうとしていたことを全て口にされ、レミリアは首を縦に振った。

「…?でも、そしたら昼に探せばいいじゃないですか。」

「星、それは出来ないわよ。何処へ逃げたか分からない、挙句に連れて帰ろうとして大人しく帰ってくれるとは思わない。それで、日の光の下にでてごらんなさいよ。」

「…あ…そうか…」

みんなが納得していく中、早苗だけが深刻な表情をしていた。

「…ねぇ、もしフランを連れて帰った後…あなたはどうするつもりなの?」

「…もう一度地下に閉じ込めるわ…」

「…!あんたねぇ…っ!」

「やめなよ、早苗。」

怒鳴りつけようとする早苗を穣子が止める。その瞳は真剣だった。

いつも笑いを浮かべているその顔に、今日はその笑みがなかった。

「…本人が一番分かってる。」

「……」

その場に静かに座る。怪訝そうな顔は、レミリアが帰っても続いていた。





続くよ。