ほんのり小話22-3

※グロい表現ありますひぎぇあ。

弾幕勝負には二種類ある。

一つは遊びとして考え出されたもの。

もう一つは。

相手と戦うために、生み出されたもの。



「『九字刺し』っ!」

「『スターボウブレイク』っ!」

二つの弾幕が相殺し合い、お互いに吹き飛ばされる。すぐに着地し、相手の次の攻撃に備える。

どちらが優勢か、それは見ればすぐに分かる。

「あははははっ!もっと遊ぼうよっ!『レーヴァティン』っ!!」

時計の針のような、大剣のような棒を振り回し、そこから無数の炎が生まれる。それをギリギリのところで避けていくが、避けきれずに無数の火傷が生じる。

あくまで目的は、相手を殺すことではない。問題は、いかに相手を止めるか、ただそれだけ。

いや、もっと別の目的が早苗の中にはあった。

「背中がお留守よっ!」

持ち前のすばやさで、フランの背後に入る。

「ざーんねん、もうあなたの後ろに居るよ?」

―速いっ!振り返らずに前に避けようとするも、吸血鬼の攻撃はそれよりもコンマ数秒早い。

「…ぅあっ…っ!」

突き刺さるような、抉り取られるような痛み。腹部に剣が突き刺さり、口から赤銀の花が飛び散る。

「…『八坂の神風』っ!」

淡く優しい光が早苗を包む。警戒して後方に引き、無数の殺すための弾幕を作り出す。

「『フォービトゥンフルーツ』!」

紅の弾幕を次々と避ける。さっきより動きが格段と上がっているのはあの吸血鬼にもすぐに分かった。

「はぁああぁっ!」

「―っ!」

フランの懐に真っ直ぐ飛び込み、そして、

―早苗は、フランを優しく抱いた。

「…なっ、何を

「楽しい?こうやって人と遊ぶのは…そうよね、今まで誰とも遊んでもらえない、一人ずっと、閉じ込められていたんだから…」

「……」

暴れる様子は無かった。

「…うん…楽しい…初めて人と遊んだ…」

「…そう。よかった…寂しかったのよね、誰かと遊びたかったのよね。その感情が爆発して、思わず外に出た。暴れたいというより、誰かと一緒になりたかった。…そうよね?」

「…うん…」

「…大丈夫、あなたは独りじゃないもの…」

「…う…ん…っ」

気が付くと、その吸血鬼の目からは温かい涙がこぼれていた。

人のぬくもりを感じたのはいつ以来だったか。

狂気の吸血鬼は、人間の手の中で純粋な子供のように泣きじゃくっていた。

「…フランっ!」

「早苗っ、大丈夫ですかっ!?」

後方から声がする。振り返ると、そこにはいつもの仲間と、レミリアが急いでこちらに駆けつけていた。

「…お姉さまっ!」

「フラン…ごめんなさい…本当に…っ!」

「…様子を見る限り、レミリアの説得、やってくれたみたいね…」

早苗の呟きに、穣子が首を縦に振る。早苗がやろうとしていたことは、『姉妹』としての関係を取り戻させること。フランがもう、独りにならないように。

それを見越して、早苗を助けるイコールレミリアの説得を試みることとした穣子はそう寅丸に提案した。案の定、彼女の望んだ形になったわけだ。

「…早苗、お疲れ様でした。」

「…えぇ…ほんとに…ね…」

突然、糸が切れたかのように早苗はその場に倒れこむ。

「早苗っ!?」

「あー…神風の効果、切れちゃったみたいね…ははっ…もう一歩も動けないわ…」

すぐに気が付いた。腹部からの出血が致死量であることに。そして、内臓がえぐれていて、到底助からないことに。

「…もう、助からないわね。」

パルスィは首を横に振る。

「…なによ…みんなそんな暗い顔して…」

「馬鹿っ!どれだけの時をあなたと過ごしたと思っているのですかっ!あなたが私達にとってどれだけ大切な存在か…分かっているでしょう…!」

ボロボロと零れ落ちる涙。その横で、穣子だけは平然な顔をしていた。

「…馬鹿らしい、今そう思ったでしょ…?」

「別に。それが君の信条による行動だったら、それは立派な意味がある。死ぬことより、信条に背くことの方が許せなかった。ただ、それだけでしょ。」

「…あんたらしいわね…全く…」

ゆっくりその目が閉じられる。序々に周りの声が聞こえなくなっていた。

「…早苗。」

 ― 「決めるのは、君の仕事だからね。」 ―





思ったより暗くないのな。

後。弾幕の説明は犬得設定だからねw公式違うからねw

一応最後の分は白文字だから、ドラッグしたら見れるZE☆ネタバレかもしれないし、そうじゃないかもしれない。