ほんのり小話24 下

(…素直になれ、っていうのもおかしいわね…)

ついさっきの幽香の話を聞いて、少し複雑な気持ちになっていた。

何と言えば分からない彼女の気持ち。好きだけど、迷惑はかけたくない。どちらも本心であるが故、かける言葉がなかなか見つからなかった。

レティ自身、かなり欲望に忠実に生きるタイプ。けれど、幽香の場合はそうでありながら、どこか人を想う節がある。あのドSの称号は何処へいったのやら。

「…あの、レティ、今一人?」

不意に声をかけられて考え事を一旦やめる。後ろから声がし、振り返ると、そこにはアリスが居た。

その表情は少し暗い。また恋愛のお悩み相談かしらね。みんながあまり恋愛に興味ないせいで、よく相談が私の元に飛んでくる。

「えぇ、何かしら。」

「レティはずっと幽香と一緒だから分かるかなって思って…その、幽香がどうして私にくっついてこなくなったか知ってる?」

これまた意外な相談。てっきりあの虫けらが振り向いてくれないだとか、そういう類だと思ったのに。

もちろん理由は知っている、さっき聞いたのだから。けれど、彼女の本心を聞くため、あえてどうしてそんなことを聞くかと尋ね返す。

「…自分でもよく分からない。ずっと迷惑だと思って、半ば離れられることは諦めてたんだけど…でも、いざ離れられると…」

「…寂しい、って?」

「…うん…」

想いが完全すれ違っている。幽香はくっつと迷惑だと考え、アリスはくっついてこられないと不安を覚えたと。

失って始めて気付くものは少なくない。これは典型的な一例だ。レティは小さくため息をついて、

「…その想い、直接言ってきたら?案外、自分の思い通りになるかもしれないわよ?」

「…え、でも…」

「ま、こればっかりは、私から言うより自分から確認しに行った方がいいと思うわ。…お互いの想いを知ったから。」

「…?」

微笑んで見せて、その場を後にする。アリスはしばらくその後姿を見ていた。

さっき見せた微笑み。私を応援するために浮かべたものなんだろうけれど。

けれど、どこか。

どこか彼女も、寂しそうだった。





(…はぁ、だめね、これじゃ)

幽と出会って、次会うときは彼女のために何か恩返しをすると決めて彼女と別れ。

案の定、また出合ったとき、彼女は恋心を抱いていて。

それを一途に応援する、彼女の為に、そうやって今まで動いてきた。

けれど、動けば動くほど、

…幽が自分から離れていくような錯覚を覚えてしまう。

関わりすぎたのだ、あの、

太陽のように輝いて、そして一つの可憐な花に。

太陽を前にして、雪は溶けるしかない。

雪は花に覆いかぶさり、その存在を隠してしまうしかない。


…恋ではないと知っていながら、

彼女に依存している、そうはっきり分かっていた。

はっきり分かってしまったからこそ、


…寂しい。離れたくない。










どんどん主要面子の関係がドロドロしてきたって思うのは気のせい?