みのキス話三日目ラストです。
今日は穣子がここに来るのが遅くて、フランや魔理沙、大妖精と一緒にお話をしてた。
「でさ、こういうこと言われたらどう?」
からかいの意をこめて、穣子の真似をするフラン。私はもう、顔を赤らめて突っ伏すしかしなかった。
もう、彼女のこと以外は考えられない。わけが分からないくらいに、彼女のことで頭を埋め尽くされる。
「あ、キスメさん死亡しましたーw死因、穣子さんww」
連れの大妖精がくすくす笑う。死んで、ない。まだ、なんとか、死んではない!
「死因あたしってどういうことよ。」
不意打ちで穣子と衣玖さんが入ってくる。少し不機嫌そうな顔だった。
「ほら、穣子が来たわよ?」
「っ…!!」
「?何があったのさ。」
フラン達がニヤニヤしているのに対し、私は動揺するしかない。穣子は何が何だか分からないようだけど、衣玖さんは大体察せているようで、くすりと笑う。
「いやぁねぇ、穣子の妄想して死んでんのよ、キスメが。」
「なっ、し、死んでないっ、死んでないって!」
考える素振りをして、やがて納得したようなリアクション。もしかして…ようやく気が付いた!?
「ごめんね、流石に…やりすぎちゃったんだね。」
かと、思ったら。
「まさかあまりにも恐怖対象になって、あたしが幻覚としてまで出てくるようになっちゃったなんて。」
苦笑しながら、けれど、一応は申し訳なさそうに。
バカにしてるのか、って言おうとしたけれど。…彼女は、本気だった。
「あー違う違う、穣子、だからn
「もういいよっ、穣子のバカッ!!」
思わずその場から駆け出した。もう…この場にいるのは辛かった。
届かない、そう思ってしまったら。
想いを伝えることなんて、無駄なだけにしか思えない。
辛くて、苦しくって。
…どうすることも、出来なかった。
「ちょ、キスメっ!あぁもうっ、追いかけてくる!フラン、お前もっ!それからえーと、藍!」
「え、わ、私もなのかっ!?」
今日始めて来ていた藍にまでとばっちりをくらう。引きずられるようにして連れて行かれた。
この場に残ったのは穣子と衣玖と大妖精だけだった。
「…なんっで、なんっであたしが、バカとか言われなきゃならないわけ…?」
穣子はかなりバカという一文字が頭に残っていたようだった。そういう意味でないと何度も言うのだが、全く聞く耳を持たない。
「…衣玖さん、お願い、何とか説得してあげて。」
「無茶ですよ流石に…」
しかし、この幼い神様はこれほどにまで鈍感だっただろうか。
狡猾で腹黒く、人をからかうのが大好きで、心を読むことに長けている、この神様が。
「…あぁ、そういうことですか。」
それは、独りだったから身に付いたもの。
独りが嫌で、仲良くなろうにも、どうしていいか分からなくって、せめて人の心が読めるようになれば、と。
推測して動き、そして、それが気持ち悪いと思われる。
…そんな幼い神様は、
「…私と、同じなのですね。」
愛されるということを、知らない。
自分にはもっとも似合わない言葉と。
いつの間にか、そう割り切ってしまっているから。