成り茶が壮絶すぎて思わず書きたくなった小話 三日目-下

彼女が振り返る。私は彼女の目線の先に居た。

こちらを見ている。しっかりと、気が付いていた。

距離がやや近い。どんな表情か、よく分かった。

「…あっ、あの…さ、」

必死に声を絞り出す。けれど、穣子はくるりと私に背を向けた。

「顔、合わせない方がいい。そうした方が、心理学的に安心して話せるらしいよ。」

その声は少し冷たかった。

まだ、怒っているのか。

あるいは、他の理由があるのか。

「…で、言いたいことがあるんでしょ?」

私のことなんて、手に取るように分かっているようだった。

ただ、一つの感情を除いて。

私は何と言おうか必死に考えた。

考えた末、

「…芋プリン作って。」

「…はぁ?何で、あたしがあんたなんかに。」

それはもっともな意見だ。彼女は私が嫌いだ。私も、彼女のことが嫌い。

…嫌い、だった。

でも、今は。

「…ほら、昨日…作ってもらって、結局食べれなかったから。」

「昨日…あぁ、心配してくれたお礼で作ったね、そういえば。別に、芋プリンくらい他のやつに作ってもらえばいいじゃん。」

「私は、…穣子のがいいから。」

その一言が急に恥ずかしくなって、表情が見えていなくても思わず俯く。頑張って赤くなった顔を隠そうとした。

「ふーん…嫌いなあたしのがいいの。」

「きっ、嫌いじゃないっ!」

不意に彼女の言葉が詰まる。見えていなくても、驚いた表情をしていることくらいなんとなく察しがつく。

「…嫌いじゃない?何で?」

「何でって…そりゃ、最初は嫌いだったよ。でも、ここまで言い合えるやつなんて今まで居なかったし…それに…」

必然と、言葉が小さくなった。

「…始めての…友達だし…」

「……」

しばらくの静寂。やがて、

「…ね、友達居ないの。」

「…居なかったら悪いの。」

「やーいボッチボッチー。」

指をさしてあざ笑っている顔が容易に想像がつく。言い返してやろう、そう思った刹那、

「…って、いつもなら笑うんだけど。」

その言葉に、力はなかった。

「あたしも…最近まで、独りだったから。」

「……」

「…小さな神として生まれて、小さな信仰だけで存在して。人々に覚えてもらえることが稀で。…人となんて、長い間関わらなかった。どう振舞っていいか、今でもよく分からない。」

だから、つい相手を突き放そうとする。

…その、長い間は一体どれほどの長さだったのか。

もしかしたら、私が生きている間よりもずっと長いのかもしれない。

重い言葉から、そんなことを考えてしまった。

「別にいいんじゃないの?優しい言葉を使う穣子なんて穣子じゃないし。それに…そうやって離れていくやつらは、穣子のこと分かっていないだけなんだよ。」

「…あたしのこと、か。」

笑みを漏らす声が聞こえる。小さく、乾いた笑みを。

「…そんなの、あたしが一番分からないよ。あたし自身、あたしがどうしたいか分からない。」

「……」

「…ね。」

「ん?」

それは、ある意味一番望んでいた言葉かもしれない。

「…あたし達、友達っていえると思う?」

「……」

驚いた、けれど。

「…当たり前でしょ。」

「ふふっ…そっか。」

勝手に友達だとか言って、怒られるかと思ったけど。

「…ありがと。」

昨日聞いた言葉より、もっと、優しい言葉が返ってきた。



私は、きっと彼女と早苗のような関係にはなれない。

けれど、彼女のことが好き。

だから、せめて。

彼女の、二番でもいいから。

ずっと、彼女の記憶に残れるように――…









まず謝罪。
勝手に成り茶のこと小説にしたこと、つらねには昨日言ったからいいとして。
もう一つ。これは、キバリ、つらね、そして何よりもmina様に。
勝手なキャラ解釈して話を進めてしまってすいません!
「こんなキャラに成ってねぇよ」とか思ったら本っ当にすいませんでしたっ!
特にキスメちゃんはかなり犬の中で変えちゃったから…いやもうほんっと、すいませんでしたぁあああぁっ!!

コメ返…する時間が残ってないので、明日に全部回します。
そして。これでよかったのか。