彼女が振り返る。私は彼女の目線の先に居た。
こちらを見ている。しっかりと、気が付いていた。
距離がやや近い。どんな表情か、よく分かった。
「…あっ、あの…さ、」
必死に声を絞り出す。けれど、穣子はくるりと私に背を向けた。
「顔、合わせない方がいい。そうした方が、心理学的に安心して話せるらしいよ。」
その声は少し冷たかった。
まだ、怒っているのか。
あるいは、他の理由があるのか。
「…で、言いたいことがあるんでしょ?」
私のことなんて、手に取るように分かっているようだった。
ただ、一つの感情を除いて。
私は何と言おうか必死に考えた。
考えた末、
「…芋プリン作って。」
「…はぁ?何で、あたしがあんたなんかに。」
それはもっともな意見だ。彼女は私が嫌いだ。私も、彼女のことが嫌い。
…嫌い、だった。
でも、今は。
「…ほら、昨日…作ってもらって、結局食べれなかったから。」
「昨日…あぁ、心配してくれたお礼で作ったね、そういえば。別に、芋プリンくらい他のやつに作ってもらえばいいじゃん。」
「私は、…穣子のがいいから。」
その一言が急に恥ずかしくなって、表情が見えていなくても思わず俯く。頑張って赤くなった顔を隠そうとした。
「ふーん…嫌いなあたしのがいいの。」
「きっ、嫌いじゃないっ!」
不意に彼女の言葉が詰まる。見えていなくても、驚いた表情をしていることくらいなんとなく察しがつく。
「…嫌いじゃない?何で?」
「何でって…そりゃ、最初は嫌いだったよ。でも、ここまで言い合えるやつなんて今まで居なかったし…それに…」
必然と、言葉が小さくなった。
「…始めての…友達だし…」
「……」
しばらくの静寂。やがて、
「…ね、友達居ないの。」
「…居なかったら悪いの。」
「やーいボッチボッチー。」
指をさしてあざ笑っている顔が容易に想像がつく。言い返してやろう、そう思った刹那、
「…って、いつもなら笑うんだけど。」
その言葉に、力はなかった。
「あたしも…最近まで、独りだったから。」
「……」
「…小さな神として生まれて、小さな信仰だけで存在して。人々に覚えてもらえることが稀で。…人となんて、長い間関わらなかった。どう振舞っていいか、今でもよく分からない。」
だから、つい相手を突き放そうとする。
…その、長い間は一体どれほどの長さだったのか。
もしかしたら、私が生きている間よりもずっと長いのかもしれない。
重い言葉から、そんなことを考えてしまった。
「別にいいんじゃないの?優しい言葉を使う穣子なんて穣子じゃないし。それに…そうやって離れていくやつらは、穣子のこと分かっていないだけなんだよ。」
「…あたしのこと、か。」
笑みを漏らす声が聞こえる。小さく、乾いた笑みを。
「…そんなの、あたしが一番分からないよ。あたし自身、あたしがどうしたいか分からない。」
「……」
「…ね。」
「ん?」
それは、ある意味一番望んでいた言葉かもしれない。
「…あたし達、友達っていえると思う?」
「……」
驚いた、けれど。
「…当たり前でしょ。」
「ふふっ…そっか。」
勝手に友達だとか言って、怒られるかと思ったけど。
「…ありがと。」
昨日聞いた言葉より、もっと、優しい言葉が返ってきた。
私は、きっと彼女と早苗のような関係にはなれない。
けれど、彼女のことが好き。
だから、せめて。
彼女の、二番でもいいから。
ずっと、彼女の記憶に残れるように――…
まず謝罪。
勝手に成り茶のこと小説にしたこと、つらねには昨日言ったからいいとして。
もう一つ。これは、キバリ、つらね、そして何よりもmina様に。
勝手なキャラ解釈して話を進めてしまってすいません!
「こんなキャラに成ってねぇよ」とか思ったら本っ当にすいませんでしたっ!
特にキスメちゃんはかなり犬の中で変えちゃったから…いやもうほんっと、すいませんでしたぁあああぁっ!!
コメ返…する時間が残ってないので、明日に全部回します。
そして。これでよかったのか。