なんか思いついたから、幽レティ。
雪女は寒いところに住む。
猛吹雪の中でも平然としている。
誰も想像しないし、できないと思うけれど。
…雪女って、一番の寒がりなのよ。
温かさを感じないと、ただ白いだけの世界に飲まれそうになる。
…けれど。分かってくれる人なんて、滅多に居ないの。
「…で、あれから進展はなしなわけ。」
今日は冬の太陽の花畑に来ていた。向日葵こそ咲いていないものの、真っ白で、雪がきらめく世界は誰もが一度は綺麗と言うのだろう。
私にとっては、その光景はもう見飽きていた。どれだけ綺麗な光景でも、毎日見ていれば飽きるものだ。…それに、それしか見ることが出来ないと、他のものも恋しくなる。
進展というのは。この間アリスと幽が一緒に出かけているのを見た。少しはいい関係になれたかと思えば、お互い特に発展したようには思えない。
「そんな簡単に進展するわけないでしょ。」
「まぁ、意外と肝心なところで、あんたってヘタレだものね。」
挑発するようにくすくす笑ってやる。少しむっとした顔が可愛くって。
けど。私としては早く二人が結ばれて欲しい。私達妖怪にとっては寿命は長いのだけれど、幽は全然見えないけれどかなり年老いた妖怪だし、アリスは読めない。
魔界人だけれど、寿命がどれくらいなのか。人間並みなのか、それとも他の妖怪のように長いのか。あまり話してくれないのでよく分からない。
「あ、あれよ、石橋を叩いて渡るっていう…」
「はいはい。そういうことにしておきましょっか。」
肩に積もった雪を払う。ついでに、幽に対しても。
人間から見ればそこそこ降っているというのだろうか。雪女の感覚だと、それほど降っていない。
「大体レティ、どうしてそんなに急かしてくるのよ。」
「別に急かしてなんかいないわよ。見ててじれったいだけだわ。」
「…へぇ。」
怪訝そうな目で見つめてくる。別に急かしてなんかいない。早く結ばれてしまえという感情は確かにあるけれど。
「…さ、それじゃそろそろ皆のところに行きましょっか。」
そう言って、幽はその場から動いた。向かうのは魔法の森。ここからはそれほど距離は無いし、冬は飛んでいくと白い世界に惑わされるから歩いて。
その背中を見て、何となく私から離れていくような感覚があって。
「…あぁ、そっか。」
不意に分かった。
幽を急かす理由。
…さっさと二人をくっつけて、"私"という存在を消したいのだ。
雪女は寒がりだから、心に冬が来ると、どうしても打ち負けてしまう。
…ただ、あなたを見るのが辛いから。
苦しみから逃げて、屈してしまいたいという想い。
…今日も、私の心に寒波はやってきた。
思いついたの。学校でトイレ行って階段下りてたら。寒かったから。