ほんのり小話 26

なんか思いついたから、幽レティ。



雪女は寒いところに住む。

猛吹雪の中でも平然としている。

誰も想像しないし、できないと思うけれど。

…雪女って、一番の寒がりなのよ。

温かさを感じないと、ただ白いだけの世界に飲まれそうになる。

…けれど。分かってくれる人なんて、滅多に居ないの。



「…で、あれから進展はなしなわけ。」

今日は冬の太陽の花畑に来ていた。向日葵こそ咲いていないものの、真っ白で、雪がきらめく世界は誰もが一度は綺麗と言うのだろう。

私にとっては、その光景はもう見飽きていた。どれだけ綺麗な光景でも、毎日見ていれば飽きるものだ。…それに、それしか見ることが出来ないと、他のものも恋しくなる。

進展というのは。この間アリスと幽が一緒に出かけているのを見た。少しはいい関係になれたかと思えば、お互い特に発展したようには思えない。

「そんな簡単に進展するわけないでしょ。」

「まぁ、意外と肝心なところで、あんたってヘタレだものね。」

挑発するようにくすくす笑ってやる。少しむっとした顔が可愛くって。

けど。私としては早く二人が結ばれて欲しい。私達妖怪にとっては寿命は長いのだけれど、幽は全然見えないけれどかなり年老いた妖怪だし、アリスは読めない。

魔界人だけれど、寿命がどれくらいなのか。人間並みなのか、それとも他の妖怪のように長いのか。あまり話してくれないのでよく分からない。

「あ、あれよ、石橋を叩いて渡るっていう…」

「はいはい。そういうことにしておきましょっか。」

肩に積もった雪を払う。ついでに、幽に対しても。

人間から見ればそこそこ降っているというのだろうか。雪女の感覚だと、それほど降っていない。

「大体レティ、どうしてそんなに急かしてくるのよ。」

「別に急かしてなんかいないわよ。見ててじれったいだけだわ。」

「…へぇ。」

怪訝そうな目で見つめてくる。別に急かしてなんかいない。早く結ばれてしまえという感情は確かにあるけれど。

「…さ、それじゃそろそろ皆のところに行きましょっか。」

そう言って、幽はその場から動いた。向かうのは魔法の森。ここからはそれほど距離は無いし、冬は飛んでいくと白い世界に惑わされるから歩いて。

その背中を見て、何となく私から離れていくような感覚があって。

「…あぁ、そっか。」


不意に分かった。

幽を急かす理由。

…さっさと二人をくっつけて、"私"という存在を消したいのだ。

雪女は寒がりだから、心に冬が来ると、どうしても打ち負けてしまう。


…ただ、あなたを見るのが辛いから。

苦しみから逃げて、屈してしまいたいという想い。



…今日も、私の心に寒波はやってきた。










思いついたの。学校でトイレ行って階段下りてたら。寒かったから。