なんと藍みょん。小説調…のつもりだけど、会話多い。
「…さてと、お前ならどうする?」
肘をつき、手をあごの下で交差させる。妖夢もそれを見て、とても困った様子に、
「…どうしましょうね…」
ただ、苦笑するしかなかった。
二人は、今魔物に襲われている真っ只中だった。
その魔物は人の足を見ると喰らい付き、そうして解放させず、そのままいたぶり倒す…人はそこから動くことも出来ず、ただ、自分の無力さに絶望する。
「…全く、恐ろしいものだな…」
「はい…全く、動けません。」
…二人は顔を見合わせ、笑いあうしかなかった。
この凶悪な敵から逃げられず、ただ己の無力さを笑うことしか出来ない。
…そう、この凶悪な魔物…
…コタツ、から。
「…さてと。今回の食器の洗い物の当番…どっちだったかな。」
極寒の地、台所。一時期の天国であるコタツから、誰が進んでそこに行こうとするものか。
一度ぬくもりを知ってしまえば、それを手放すのは困難。二人はよく分かっていたのに。
「今日は藍だったと思いますよ。」
「…は?お前だろ?」
「いいえ、あなたですよ。私は一昨日やりました。」
「いいや、お前だ。私は昨日やった。」
「おや、昨日やったのは幽香ですよ?」
「何だその寝言は…私はちゃんとやった。何だ?この私を疑うのか?」
「はい…正直、コタツの中でそんなこと言われても説得力皆無といいますか。」
「それはお前もだろう。」
藍は不意に時計を見る。…この口論を始めて、一時間も経っていることに気が付いた。
早く洗わないと悲劇が待っている。それはよく分かっている。しかし。
…体が、それを拒むのだ。寒さを拒み、この場へと縛り付ける。
「ほら、早く行かないと橙の水に浸けていないお茶碗を嘆くことになるぞ。」
「何で浸けさせないんですか。それは主人であるあなたが注意してください。」
「お前、馬鹿か。橙は水が嫌いだ、何回言って、何回たまねぎを罰として食べさせたか。」
「うっわーこの人猫殺しじゃないですかー。」
はっきり言って、藍のやっていることのほうがかなり惨い。
「私の言うことを聞かないからな。お前なら…十字架でも投げつけるか?」
「そんなことしたら私信者いますって。」
「信者いますって何だ。死んじゃいますだろ。」
アンデットだからね腐っても。
さてと、どうしたものか…このままではラチがあかない。そう判断した藍は、一つ平等に物事を決める手段に出た。
「…よし。」
それは古くから平等にもめた意見を解決してきた、とても古典的な方法。誰もが知っている、魔法の方法。
「…ジャンケンしよう。」
「…はい?」
「お前が負けたら、お前が洗い物。」
「…いいですよ。しかし、あなたが負けたら、あなたがやってくださいね。」
「いいだろう。」
高らかに響く、最初はグーの声。
そして、藍はグーを、妖夢はパーを出した。
「…っし!」
「なん…だと…!」
がっくりとうなだれる藍。それに対し、思いっきりガッツポーズをする妖夢。
「それでは…お願いしますね?」
「ふ…ふふっ、馬鹿め、誰が一回勝負だと言った?」
「うわ、汚い手だ。三階勝負っていう汚い手じゃないですかヤダー。」
「何とでも言え。これはな、狡猾と言うんだ!」
「ただの負けず嫌い…いえ、洗い物嫌いでしょう?」
「あぁ、嫌だな。…だから、どうした?さぁ、やるぞ!」
「え、ちょ、ちょっと!」
…結局その勝負は夕方まで続いたそうな。
それを見た早苗はボソッと、こう呟いた。
「…今日の洗い物あたしだったんだけど…ま、終わったし、面白いから放っておきましょっと。」
藍みょんはこんなくだらない関係美味しいです。