レティ過去話 0

なんか、急に書きたくなった。あれかな、冬がそろそろ終わりそうだからかな。




「レティ、ちょっといいかな?」

私に声をかけてきたのは、仲間の中で一番の狡猾さを持つ穣子だった。

表面上はにこにこしているが、中で何を考えているかは分からない。そういえば言っていたわね、笑顔は最高のポーカーフェイスだって。

「なに?珍しいわね、私に声をかけるなんて。」

大体早苗と一緒にいるせいで、寅丸やパルスィはともかく、私に自分から声をかけてくるなんて、何かたくらんでいるとき以外滅多にない。

だから、今回も何かたくらんでいる、そう思った。

しかし、彼女のそれはただの好奇心だったのだ。

「レティって雪女なのに、どうして冬以外も普通に行動できるの?…いや、できるようになったの、か。」

恐らく、彼女は気が付いていた。

何かの術か、あるいは、何かの道具の効果か。

「…知りたい?」

「うん、とっても。」

やれやれ、この子の好奇心はどうにかならないものか。

私は辺りの温度を確認してから、胸についているブローチを取った。

「これのお陰よ。」

それを手にとって確認する。特別な金属を使っているようでもない。しかし、穣子はその仕組みにすぐに気が付いた。

「…ふーん…魔法がかかってるんだね、これ。これは…アリスと藍によるものかな?で、効果内容が、季節の干渉の無効化、か…成る程ね。」

流石魔法の知識をかじっているだけある。彼女の魔法の知識は魔法使いのものとしてではなく、あくまでも好奇心。

知りたいから知った、使ってみたいから使えるようにした、所詮、そんな軽いものだ。

彼女はありがとう、と一言言って、私に返した。私はそれを付け直すと、これで満足かと問う。

まさか、と彼女は笑って見せた。

「あたし言ったよね、どうしてできるようになった、か。できるか、じゃなくって。」

「…あぁ、それ、そういう意味だったの。」

できるか、それは結果しか尋ねていない。

できるようになったか、それは、結果と過程も尋ねている。

私はため息をついた。話してもいいのだが、あまり話したい内容ではない。

…別に、バレたからどうというものは全く無い。無いのだけれど、何となく話しづらい。

まぁ、穣子から逃げられるとは思わないし。執拗に追い掛け回されるならまだしも、何か弱みでも握られて吐けと言われるようになったらのちのち面倒である。

「…はぁ、いいわよ。全く、ほんっと、あんたって物好きよねぇ。」

「へへっ、そりゃどーもっ。」

誉めたつもりはないんだけど。

私はどこから話していいか迷ってなかなか話し出せなかったが、ゆっくりと、段々話すペースはあがってきた。






ブローチの設定後付けっぽく聞こえるかもしれないけど、実は犬得出来て一週間ぐらいのときにはすでにあった設定。CWでは十字架。

だから…夏にあれを外すとどうなるか…分かるな?