ほんのり小話 30-1

妖「面子はバラバラ、更に犬得外のキャラが一名、小説調、幻想郷話です。早苗は神設定で。」




秋が終わり、冬がやってきた。冬の幻想郷は一面が銀世界となり、静寂と無色で飾られる。冷たい世界に身を震わせる者も居れば、自分の大好きな世界だと大喜びする者も居る。

「…悪いな、手伝わせて。」

「いえ、このくらいお安い御用ですよ。」

雪が止んだ昼下がり。アリスの家に居るのは藍と衣玖だった。

他の仲間は冬に備えての買出しや、主人に命令されてその仕事をこなすまでこちらに来ることが出来ない。関係の無い者たちも、仲の良い者の手伝いに行っている。

藍は紫が冬眠することもありかなり自由な身。橙に仕事を任せれば、こちらに来ることが出来る。衣玖はそもそも天界の住人だ、冬なんてものなど関係ない。

今年は誰もが冬への備えを万端にしようとする。というのも、今年の寒波は厳しいとレティが予想したからだ。彼女の能力無しに、今年の冬の自然は猛威を振るうだろう、そう言っていた。

彼女は冬が嫌いだったが、いつの間にか冬が好きになっていた。冬が私という存在を作ってくれたから、そんな冬に今は感謝している。成る程、彼女らしい。それを思い出して、少し藍はくすりと笑った。

「…?どうしました?」

「いや、何でもない。少し、仲間のことを思い出しただけだ。」

「この季節ですし…レティさんのことですか?」

流石、空気を読む衣玖は鋭い。こんなどうでもいいことを瞬時に読んでくるのだ。…まぁ、彼女はそんな能力を持っているからな。藍は心の中で少しため息を付いた。

「…そういえば。穣子…」

「…?穣子がどうかしましたか?」

「あいつは…能力無しに、他人の考えを嫌というほど読んでくる。お前や、さとりなら分かる。あるいは私達にはほぼ無縁の神子様とか。そういう能力を持っているからと他人の言いたいことが分かる。どう考えているか分かる。…それで、すべてが片付くだろう?」

空気を読む衣玖、人の心を読むさとり、人の欲を聞く神子…それぞれが持つ、そんな『程度』の能力。努力無しに身に着いた能力だ。現に、さとりはこんな能力欲しくなかったと言っている。

人のことが分かる。それはとてもいいように聞こえるが、同時にとても辛いことでもある。人の感情が真っ直ぐ自分に届く。このことが、一体どれほどまでに辛いことか。

「…何故、自ら…読心術とでも言わせて頂きましょうか。そのようなものを身に着けたか、ですね。」

「あぁ。お前と話していると、すぐにこういうことが伝わって楽でいいな。」

「…ストレートにおっしゃいますね…」

何となく、だが。穣子はまだ、仲間に心を開いていない気がするのだ。

彼女は打ち解けているつもりなのだろうが、私達からすれば、何となく距離を置こうとしているようにしか見えない。

本音を喋ってるようで、どこかで嘘をついている。どこかで私達を突き放そうとしている。

…何となく、そんな気が二人にはしていた。

 「すいませーん、誰か居ますかー?」

突然、玄関の方で声がする。今やっている作業を藍に任せ、代わりに衣玖が相手に会いに行く。

扉の向こうで立っていたのは、金髪で頭に紅葉のような髪飾りを付け、赤から黄色の綺麗なグラデーションのかかったスカートを着た、それほど背の高くない女性だった。

「えぇっと…貴方は?」

「始めまして。静葉と申します。」

そう言って、彼女はぺこりと一礼をした。礼儀正しい子だという第一印象を受ける。衣玖も自己紹介を簡単にし、寒いのに外話をするのもなんだと思い、中に上がらせた。


「簡単なものしかだせませんが。」

「いえ…ありがとうございます。」

アリスの家にあった紅茶を勝手に使わせてもらう。後で彼女に言えば問題ないだろう。

藍もひとまず休憩ということで、静葉と一緒に話をすることにした。…あまり紅茶は好きではないのか、玉露を自分で持参して、自分で勝手にたてて飲んでいる。

「ところで、今日はどうして紅葉の神様が内に来たんだ?」

「あのですね…私の妹を知りませんか?」

「…妹?」

二人とも初対面なので、いきなり妹と言われても分かるはずが無い。しかし、特徴を聞いただけで、すぐに誰か分かった。

「帽子を被っていて、その帽子には葡萄が付いていまして

「あぁ、分かった。穣子か?」

「はい!そうなんです!良かった…やっと見つかった…!」

ここに居るとはまだ一言も言ってない。大体居ることに変わりはないので黙っておくが。

様子を見るなり、かなり探していたのだろう。それほどまで二人は互いに会っていないということか。

「…で、穣子がどうかしたのです?」

「…いえ、無事が分かっただけでいいんです。…もう、何年も会ってなくて…家にも戻らないし、ずっと探していたのですよ。」

「……」

思わず、二人は顔を見合わせる。

若干、穣子の振る舞いと、この静葉という人…もとい、神と言っていることが微妙に違うのだ。

「…なぁ、顔に出さなかったが…お前、穣子に姉が居るって知っていたか?」

「いいえ…初めて聞きましたよ。」

静葉に聞こえないように、互いに小声で話す。

まず、二人とも穣子に姉が居ることは知らなかった。彼女の口から、姉に関する言葉が出てきたことが今までに一度も無い。秋に紅葉を見ても、ただ今年も紅葉が綺麗だと、そんな一言しか漏らさなかった。

次に、彼女は穣子が家に戻らないと言っていたが…穣子は、どうせ帰ったって一人だから、ここに住ませてもらうよと、確かにこう言ったのだ。静葉の口ぶりでは、ずっと家に居て、穣子の帰りを待っていた…そんな様子だ。

…ここから導き出されることはいくつかあった。

「…穣子は…姉が居ることを隠している?」

「…あるいは、穣子は姉のことを知らないのでしょうか?」

「それは無いだろう。姉は妹のことを知っているのだったら、少なくとも二人は会ったことがあるはずだ…それに、神だから幼少といっても、今と変わらない姿と頭をしている。」

「…あるいは。姉のことを忘れようとしています?何か忘れたくって…それで。」

「…その可能性はあるな。」

「どうなされました?」

二人の会話に気が付き、少し不安になった様子。二人はすぐに何でもないと、平然を装った。

「…穣子は、元気にしていましたか?」

「あ、あぁ、元気にしている。」

少し言葉がつっかえたが、彼女にはそれが伝わらなかったらしい、安心のため息をついてくれた。あの腹黒い穣子なら、この一瞬をも聞き逃さないだろう。姉とはえらい違いだ。

「…優しいでしょ、穣子は。」

「…え?」

「あの子は素直で、とても心優しいんです。いつも明るくって…人のことをよく想ってくれる子です。だからいなくなったときは本当にどうしたのかと…」

「……」

再び、顔を見合わせる。

穣子が、素直で、心優しい?…こいつ、言ってること正気か?

あの腹黒で、ひねくれてて、人をからかうのが大好きな穣子が…人のことをよく想う、いい子…?…言ってる本人は本気のご様子ですが…?

「…では、今日はありがとうございました。妹の無事が聞けただけで…それだけで、十分です。」

「?会わなくていいのか?」

いや、会ったら会ったで色々ショックを受けそうなのだが。

「…いいんです、こんな心優しい方々の元に居るのであれば心配ないでしょう。でも、また顔を見に訪ねてもいいですか?」

「か、構いませんが…」

ありがとうございます、そう言って一礼をして、彼女は帰っていった。

「…さて、と。…これは、穣子に一度聞いてみるべきか。」

頭の中で情報を整理しながら、藍と衣玖はカップの洗い物にとりかかった。一人帰ったせいか、温かかった少し部屋が冬の寒さを取り戻した。






…何これ長。


コメ返。
>つらね
穣「だってちゃんと4月1日ですって書いたじゃんかww」
衣「それはそれで面白い気がしますけどね…あと、コメントの件了解いたしました。こちらも無理を申し上げてすみません…でも、コメント約一ヶ月ぶりにもらってとても嬉しかったのですよ。」
穣「…で、衣玖さん総受けゲーいいよねっb」
衣「ちょ、ちょっと!?って、魔理沙さんも何乗ってるのですかっ!!」

成り茶風に返してみましたwやっぱこの二人動かしやすいわww
交ノの順番は最初以外で((え
下紙の色は気まぐれで個人個人がってやったらどうかな?