差し込んでくる光が少なくなってきた。辺りはまだ明るいので、先ほどから1、2時間経ったくらいだろうか。
探しているキノコはなかなか見つからず、難儀しているようであった。結構簡単に見つかるものだと勝手に思い込んでいてしまっていたことに、思わず苦笑を漏らした。
まだ奥の方は探していないし、日が沈むにはまだ時間はある。穣子は更に深くへと歩いて行った。
いや、行こうとした。
「…そこ、誰か居るでしょ。」
自分より数メートル先のところを指指す。観察力は悪くない方だ、不自然に茂みが動いたのが見えたから既にバレてるよ、と言葉を付け足した。
「あらあら、勘の鋭いことね。」
そこから見覚えの無い人影が3つほど現れる。身なり、三人だけで魔法の森に居る、そもそも人間が魔法の森になんてまず近づかない、これらの要因からして妖怪である可能性が高そうだ。
じっと身構えていると、その3人は穣子が逃げられないようにぐるりと囲むように近づく。逃げる姿勢ではなく、様子を伺うような姿勢をとった。
「…あたしは君達のことを知らない。君達は何か用があってここに居る。で、さっさとその用とやらを吐いてくれない?」
相手を探るために、あえて強気な態度に出る。自分のことを出来るだけ話さずに、相手のことを探る。生きる上で大事な技術だ。
相手はまるで穣子を小馬鹿にするように鼻で笑う。それだけでも、今の自分より優位な位置に居ると思っていることが伺える。
「憎たらしい口きいちゃって…これが誰のか分かるでしょう?」
そう言って、一人が羽衣を取り出す。あちこちがほつれ、破れ、並のことではこうはならないというような状態であった。
穣子は、その衣の持ち主をよく知っている。
「…衣玖さんの…?」
「そ。…これだけで、あんたのその大切な人が今どうなってるか…容易に想像できると思うんだけど。」
…なるほどね、と親指を噛む。彼女はしっかりと冷静さを保っていた。
別れてからの時間を考えて、自分の知らないところで討たれたと考えることは十分に出来る。しかし、衣玖さんが簡単にやられるとは思えない。
考えられることは二つ。本当に強い妖怪なのか、あるいは、衣が彼女のものに似せた、あるいは竜宮の使い、同業者であり、自分に仕掛けられた罠であるか。
「…ふぅん、でも衣玖さんがそんな簡単にやられるとは思えないけどな。」
鎌をかけてみるか。少し笑って相手の反応を待つ。
その言葉を聞いて、待ってましたとばかりに1人がにやりと笑う。それと同時に、穣子は自分の体の異変に気が付いた。
先ほどまで自由に動かせた体が、唐突に動かなくなったのだ。
「…金縛り、かな。」
「えぇ、私は人を金縛る程度の能力があるの。どんなに強い者でも、これじゃあ逃げられないでしょ?」
分かったかしら、とその能力を解く。…これで逃げられないことが分かった。
可能性として、前者も捨てられなくなった。思わず苦笑を漏らす。
「…なんにせよ、今は君達に従うしかないってことか。」
抵抗する気がなくなったことを伝えると、3人は思惑通りといったような笑みを浮かべた。
それから場所を移動し、人気のないところということで無縁塚を勧めた。
どうもこの辺りの地理は詳しくない様子。…同業者である可能性が高いと穣子は睨んだ。
…やばい…これ、このペースだと余裕で7とか行く…!!
あと。次回暴力シーン入りまーす犬書けるかなぁ暴力苦手なんだけどなぁ。