小説調です。主要面子のお話で。サブも一応出るけど。
「きゃぁぁああああぁっ!!」
突然森の中に響き渡る悲鳴。魔法の森に居る者なら、それははっきりと聞こえただろう。
ばさばさと鳥が飛び立ち、動物は思わず逃げ出す。その群れの中、逆走するいくつかの影があった。
「どうしたのっ!?」
「な、何て事なの…!」
その場に駆けつけたのはレティと幽香。そこには一人の倒れている仲間、アリスの姿があった。
死んではいない。しかし、何があったのかを推測するには十分であった。
白銀の布が二枚ほど、少し離れたところに舞い落ちている。幽香はそれを拾い上げ、ぐっと握り締めて、
「…アリスのパンツが…真っ二つに…!!」
パンツ。それは乙女の恥じらいの象徴。また、デリケートゾーンの強固たる壁。その強固たる壁は、更にスカートやズボンといった多数の壁によって守られている。
その壁を求める者は多く、多くのものがその壁を求め、互いに策を出し、駆け引きを行う。一体どれだけの者がその一枚を求め、必死になってきただろうか。
しかし、そこには周りの壁を一切傷つけず、最も重要な壁だけを傷つけるという偉業を遂げているのだ。
「…要するにパンツが真っ二つに裂けてるだけじゃ…」
後から来た穣子だけは冷静だった。その顔には呆れとあほらしいといった感情が露になっている。
「……」
「…これは、何かによって切られたようね…ほら、断面がとっても綺麗だもの…」
幽香はレティに持っているそれを見せる。二人でまじまじとそれを見る光景を、後ろから穣子は何も触れずにただ見つめた。
「…ただのヘンタイにしk
「…みな、さ…ん…っ」
前方から唐突に声が投げかけられる。そこには刀を構えた妖夢の姿があった。
しかし、いつもの彼女で無いと、この場に居る者の誰もが感じた。禍々しいオーラを纏い、今にも襲いかかろうとしている彼女が居る。
「…どうしたのよ…あんたは…あんたは仲間に刀を向けるような奴じゃないでしょっ!」
「…すみま…せ……この…刀のせい…で…」
「…刀?」
よく見ると、手に持っていた刀は彼女の愛用している刀とは違っていた。
薄紫色に輝く刃を見て、レティはぼそりと呟いた。
「…なるほど、妖刀に取り付かれちゃったわけ…」
その言葉に幽香は思わずレティの方を見る。親指の爪を噛みながら、険しい顔で彼女はこう言った。
「…きっと、強固たる壁を撃破せんと、何度も何度もそれを可能にするための刀を作った。失敗を重ねても、その男は諦めなかった。そして、彼は死ぬとき、最後の想いをその刀に込めたのよ。」
そして出来たのが、
「…妖刀、『斬犯通刀(ざんぱんつけん)』…!」
「……!名前だけ、聞いたことあるわ…」
「ねぇよ。」
幽香が言うには、その刀を抜いてしまったものは、永遠にその強固たる壁を破壊し続けると。それは、取り付かれたものから刀を取り除くまで。
それは、つまり。
「妖夢から刀を奪えばいいのよ!」
幽香は自分の持っている傘を構える。それに反応して、妖夢も己の刀、いや、妖刀を構えなおす。
「…お願…逃げ…て……私は…もう……意識…が…」
冷や汗が伝う。彼女の意識がなくなったとき、そこに居るのは殺清鬼(さつじんき)である。真っ向からやりあって果たして勝てるだろうか。
「…ふっ、愚問ね。」
犠牲となった大切な者への想い。その想いを捨て、逃げ出すくらいなら。
「…アリスの敵、私が絶対に!!」
「…ぁ…ぁぁあああああぁああああぁっ!!!」
けたたましく、忌々しい咆哮が森に響き渡った。
「え、続くの。」
真面目になんつー話だ。