ほんのり小話36

妖「幻想郷、小説調、そしていつものただの会話です。」




「あ…レティ…」

「あら、ルナサじゃない。珍しいわね、こんなところで会うなんて。」

二人は氷の湖でばったり出会った。ルナサは何となく気が向いたからここにやって来、レティは少し涼むためにここへやって来た。

互いにあまり話をすることは無いが、互いに好きな者の恋路を応援するものとして、少し湖の日陰に腰を下ろし、話をすることにした。

「…ルナサって、衣玖さんのこと好きなのよね。」

「うん…大好きだよ。…穣子のこと、恋愛的に好きでも…それでも、私はその想いは絶対に変わらない。」

「…そう。」

悲しそうな素振りはなかった。むしろ、どこか嬉しそうな。

それは多分、衣玖が人と仲良くしようとせず、常に独りになろうとしていた。それがある少女に恋をし、少しずつその考えが変わってきた。それがルナサにとってはとても嬉しいことなのだろう。

「…そういえば…穣子。…感情がいくつか無くなったみたいなこと聞いてるけど…あれも治ったのかな…」

「治った、と言うにはまだまだね。あの子が泣いたとこ一回しか無いし、本気で怒ったことも無い。人を本気で好きになるってのもまだ曖昧だし、言うとなればマシになったってとこね。」

彼女は独りになりたくなくて、心が読めるようになり、それで人と仲良くなろうとしていた。結局離れる一方で、上手く信仰が集められず死ぬ覚悟までした彼女は、感情を表現するということが上手くできなくなってしまったようだ。

それでも、早苗に触れ、衣玖に恋をすることで、彼女もまた少しずつ変わってきている。それははっきりと二人にも分かった。

「…あんた、強くなったわよね。」

「そう…?だってレティだって…幽香さんとアリスの恋路、応援してるでしょ…?」

「そう、だけど…」

レティは確かに幽香アリスの恋を応援している。しかし、その一方で幽香とずっと一緒に居たいという想いが確かにある。

ルナサのように、すっきりと割り切ることができず、ただ自問自答を繰り返すだけ。そんな自分が嫌いだった。

「…聞いていい?何であんたは衣玖さんのこと、そんなにすっきり割り切れるの?」

「割り切れるって…自分の好きな人が別の人に恋をして、それを素直に応援できること…?」

静かに首を縦に振る。ルナサはしばらく指に顎を乗せて考えていたが、やがてレティの方を向いて、優しい笑顔で言った。

「…多分、早苗の言葉のお陰だと思う。」

「早苗の?」

「うん…早苗ね、一回こんなこと言ってたの。一番の愛人にはなれなくても、一番の友人にはなれる。どっちかを選べって言われたら、その人は絶対に選べない。それだけでいいの、って…」

「…一番の友人、ね…」

レティはその返答に、思わず空を見上げた。

はっきりと分かった。自分の中で、彼女の中で一番になりたいって。

それも友達という関係で済ませたくない、そう思う自分が確かに居る。

親友という関係が安直なものだと思ったことは無い。しかし、嫉妬にも似た感情が確かにある。

「…本当に…強くなってるわ。」

「そんなことないよ…私はただ、衣玖さんに救われただけ…だから、今度はこっちが…恩を返す番なの。」

「…十分、返せてるわよ。」

最後の言葉はルナサに聞こえないくらい小さい声。

衣玖があそこまで変われたのは、ルナサの差し伸べる手があったから。だから、今の彼女がある。

…救われた、か。自分も幽に救われて…境遇はほとんど同じなのに、抱く感情はこんなにも違う。



私も、ルナサのように考えることができるのなら、どれだけ楽になれるだろうか…









あっるぇー何かレティさんついに恋心にまで発展しちゃったよー?
ていうか犬得の関係大分変わっていたなぁ…そろそろサイト説明更新した方がいいなぁ。