みのいく過去話 1

先に言います。割りと長いです。多分5か6くらいまで続くかな…?
あと、時系列上、早苗が神になる前の話(裏面子が出来てまもなくの話)なので、早苗ちゃんは人間で、穣子はまだ静葉と仲直りしてません。




私はずっと前から彼女に恋心を抱いていました。

きっかけはささいなこと、しかし。


…私にとって、それは恩人でもあったのです。





「あ〜づ〜い〜…」

「全く…だらしないなぁ。」

7月も中頃に入り、真夏の日差しが容赦なく照りつけ、幻想郷の気温を上昇させていた。植物にとってはありがたい環境なのだろうが、人間や妖怪にとっては過酷でしかなかった。

蝉がうるさく鳴き、その鳴き声が余計に夏の暑さを感じさせる。風鈴をつけてみたところであまり意味はなく、アリスの家に居た早苗はぐったりと寝転がっていた。

その醜態さに冷ややかな目線を送る穣子。彼女は神のため、暑さを感じない。いや、厳密に言えば感じるのだが、『人形(ひとがた)』をとっているだけの彼女はそれを『熱』としか感じない。自分が危機にさらされるような高温でしか熱いとは思えず、暑さなんてものはむしろ暖かいぐらいのものだった。

「そう言われても…あんたは神だからそんなことが言えるのよ…」

「あたしとしてはある意味その暑いって感覚知ってみたいけどね。」

「そりゃあ夏の風物詩だけど…いらないわよ、こんなの。」

すっかり早苗は参っていて、何を言われても動けそうになかった。何も弱っているのは早苗だけではなく、あちこちの人間、妖怪もくたばっていた。

今年の夏は去年と比べても遙かに暑い。ある意味異常気象と言ってもよいくらいのものだった。

早苗が水を取ってと要求するので、穣子は文句の一つも漏らさずにコップを取り、水を注いで早苗に渡す。ありがとうと小さくお礼を言い、冷たい水に口をつけた。

「ふーん…暑いってそんなに難儀なもんなの。」

「難儀もへったくれもないわよ…暑くなかったら今の、自分で動けたもの。」

確かにね、と困った笑みを漏らす。冥界にでも行けばここよりは涼しいのだろうが…そこまで行くのもおっくうな上、そこの気温に一旦慣れてしまうと、ここへ戻ってこられなくなる。それを恐れ、しぶしぶ早苗はここで我慢していた。

しかし、いつまでもそうしていられないのも事実。神奈子に頼まれていたことがあり、ここから動かなくてはならなかった。

「あー…誰かあたしの代わりにこの手紙届けてくれないかなー…」

「……」

「ここに親切な人が…いや、神様でいーんだけどなー…」

「……」

「そーんな親切な豊穣の神様とか居ないかなー…」

「…もうそれ、あたしに行けって行ってるよね。」

分かってて無視をしていたが、ついに耐えられなくなり、思わず言葉を返してしまう。待ってましたと言わんばかりに、早苗は寝転がったまま驚喜の声をあげた。

だらしないことこの上ない。

「ホントっ!?いやー悪いわねぇー別にそんなつもりじゃなかったんだけどねーいやーありがとうみのりんやっさしー!……暑ぇ…」

「…やれやれ。」

面倒くさそうに頭の後ろを掻き、手紙を置いている場所を尋ねる。そこのテーブルの上にあると聞き、見ると本当に上に丸投げされていた。

早苗曰く、神奈子様は重要な手紙だから丁重に、なくさないようにしろと言われていたそうだが…完全にほっぽりだしている。

大切な手紙とは一体なんだったのか。そう尋ねたくなるような状態に、呆れの声も出なかった。

「じゃーそれ…神子さんとこに持ってってねー…」

「…やっぱりあたしが行かなきゃだめか。」

力なく手を振る早苗に、もう一度怪訝な顔を見せる。本人はそんなことお構いなしだ。

手紙をじっと見る。封筒には何も書かれてはいない。それが逆に重要さを物語っているー…と言われても分からなくはないかもしれない。

大きくため息をつくと、重たい足取りで穣子は部屋を出て、外へと歩を進めた。







多分ラストだけ異様な長さになりますw
それと全く関係ないことですが。倉庫二ヶ月ぶりに更新しましたw