昨日雷鼓さんのあの話持ち出してきたの…分かったか…?
というわけで、今回は「衣玖さんが寿命で死んだその後」って話で。…IF物語でやれよってツッコミはなし。
あと。重たいよ。
これは何度目の雨だろう。
これは何日目の朝だろう。
気が付いたときには考えることをやめていた。
衣玖が死んでから、ずっと彼女のお墓の前に居て。
帰ろう、その言葉を無視して、ずっと一人でそのままぽつんと座っていた。
太鼓も一緒においていて。
わたしにとって雨は天敵だった。
わたしは大丈夫だけど、太鼓は雨に濡れると簡単に壊れてしまう。
でも、それでよかった。
自然と消えて、なくなりたかったから。
君のすぐ傍で、私も一緒に。
涙のように流れる雨に、温かみなんて無かった。
何を考えるわけではなく。
何を待つわけでもなく。
ただわたしは、そこに居た。
もしかしたらわたしは、この現実をまだ受け入れることができていないのかもしれない。
ただ単に、言葉としてだけ受け止めて。
その意味、本質は多分、まだ理解できていないんだ。
ずっと、意味も無くそこに居て。
傍に居る心地なんて無くて。
けれど、不思議と離れることは出来なかった。
そろそろ太鼓が朽ちてきた。
雨に打たれて、風に吹かれたそれは、もうほとんど形なんて残っていなかった。
わたしもいよいよもって、体が動かなくなってきた。
存在も消えかけて、体が消えようとしていた。
そのことに気が付いた瞬間、何でか嬉しかった。
もうすぐ君のところへ行けると思ったからかな。
今日もあの冷たい雨が降る。
わたしはその冷たい雨を、目を閉じて感じていた。
そろそろかな。
体はもう、言うことを聞かなくて。
あちこち折れて、傷ついて、砕けて。
太鼓の損傷の痛みは、どうしてか感じなかった。
そこにあるのは、早く早くとせかす心だけ。
雨に打たれるのもこれが最後。
そう考えると、あんなに冷たかった雨が優しい何かに思えてきた。
しとしと降る雨音を聞きながら、わたしはその中で目を瞑った。
今から君のところへ行くよ。
君は待っててくれてるのかな。
向こうの世界でもう一度 君が主人だったら いいのにな…… ・・ ・
「ったく…誰だよこんな人様…いや、妖怪様のところにこんなゴミを置いているやつは…」
「君はその人の知人なの?」
「いいや?ただ、ここいらの掃除に当たった妖怪。いるよなぁこういう奴。」
「…君には、それがゴミに見える?」
「…?何だよ秋の神様が。」
「そこに、置いていてあげて。それが一番、どっちのためでもあるから。」
それはゴミなんかじゃない。
認めたくないけれど。
それはこの世で二つとない、美しい、報われた太鼓だよ…
妖怪には妖怪の墓場があるかなって思った。妖怪の山辺りに。
しかし。豚乙女のピアノアレンジをBGMにして書くと、雰囲気が合ってて書きやすかった。
切ない話書くときはありがたいな。
あと一言。重たい。