正直言う。衣玖さんがただじれったいだけ。
近い距離にあって、けれど、近すぎることはない。
遠くは無い、けれど、不自然な隙間がある。
分かっている。このまま何もしなかったら進展は無いと。
分かっていても、なかなか動けない自分が居る。
思えば、それはいきなりのことで、前触れも何もありませんでした。
「思ったんだけれど…衣玖さんと穣子って、変な関係よね。」
そうぽつりと呟いたのは娘々。屠自古にべったりとくっつきながら、指を顎に当てて空を仰ぎながら仰いました。
「恋人でもなくって、親友でもなくって…友達以上恋人未満?とはやっぱり何か違うし…衣玖さんが穣子のことが好きってことは分かってるのよ。けど、穣子にとって、衣玖さんって何なのかしら。」
それを聞いた途端、私は急に怖くなりました。
確かに私は、穣子を想っている。ずっと好きで、でもその心は見せないようにして。
しかし、実際はまだ彼女のことは分からないことが多いのです。
表情から、仕草から本当の心を読むことは出来ない。嘘をつくのがとても上手いから。
本音も一緒。ひねくれた幼い神から、本音というのは滅多に出てこない。
思い返して、今まで穣子が私のことをどう思っているのか、それが分からなくなりました。
そう、そんな言葉が一切無かったから。
友達としか思われていないのか、それとも私と同じく想ってくれているのか。
それとも…何とも思われていないのか、嫌いなのか。
「…確かに難しい関係だよな。早苗と穣子は親友関係、これは明らか。…何か違うんだよな、衣玖さんと穣子が親友っていうのは。何がって言われると分からないんだが。」
…そうか。一つだけ、分かったことがあります。
私は彼女から、私に関することを聞いたことがないのです。
好きだとも、嫌いだとも、一緒に居て楽しいか辛いかさえも。
私に向かって、真っ直ぐに言ってもらったことが一度も無いのです。
そして、それは私とて同じ。
「…直接聞いてきては?」
と、心の読めるさとりの一言。少し複雑そうなその表情。それが、何を物語っているのか。
…さとりとて、分からないのだろう。あの神様が、一体何を思って私の傍に居てくれるのか。本音というものがいまいち読み取れない。
つまり、それは穣子自身も…
…何を悩んでいるのでしょうね、私は。
「…いえ。まだ、です。」
多分、今のまま答えを求めても曖昧な答えしか返ってこない。
分からないのですから、穣子自身も、自分がどう思っているのか。
だからせめて、私から何か、穣子に思ってもらえるように。
「…と言って、怖がって動こうとしないというのが貴方ですけれどね。」
痛恨の一言。私も思わず苦笑を漏らす。
…分かってはいるのです。自分から、何一つとして動けていないことに。
怖がって、矢印が自分に向けられるのが怖くて。
だから発展もしなければ衰退もしないこともよく分かっています。
分かっていても…
「…自分に正直になれたら、どれだけ楽になるのでしょうね。」
ぽつり、とその一言。さとりの目も同時に、何か怯えを帯びているように見えました。
ナニコレ。
えっとね。脳内で話も作らずに無意識に書くとこんなまとまりのない希ガスみたいな話が生まれるみたいだよ。そーなのかー。
…で、だ。ナニコレ。