ほんのり小話 46

今日は久々なCPを。…初期設定目指してみる。
時系列的には出会ってかなり間もなく。






ひらひらと空から雪が舞い落ちる。寒気が郷を襲い、辺りは白銀になっていた。

今日はクリスマス。プリズムリバー楽団もその日は特別ライブを行うそうで、支度をして早くから出て行った。行うのは人里で、人間達もその音楽を楽しみにしている。

それを知らない衣玖はいつものように彼女の家に向かう。到着したときには既に姿はなく、さとりとこいしだけがそこに残っていた。

「やはり来ると思いました。」

「さとりにこいし…他の人たちは?」

「クリスマスで皆さん出ていますよ。私は絶対あなたがここに来ると思って、来てからこいしと出かけようと待っていました。」

それは少し申し訳ないことをした、と心の中で謝罪する。こいしはそんなものおかまいなしに、庭で雪の上をぴょんぴょん飛び跳ねて、足型をいかにくっきり残すかという謎の遊びをしている。

「どうしましょう…折角のクリスマスですから、ルナサと一緒に過ごそうとしたのですが…せめて教えてくださればよかったのに…」

困った様子の衣玖をじっと見つめる。心に思っているのは、やはり一人の女の子。

少し考えたが、やがてさとりは小さく呟いた。

「…ルナサなら。」

「?」

「ルナサなら人里で、ライブをやると言っていました。開始は11時。今から行けば裕に間に合うでしょう。…しかし。」

どうして彼女がそのことを言わなかったのか。さとりはこれが気遣いからだと分かっていた。

だから、その理由を考えろ。そう言いかけて、言葉を止めた。

「…分かりました。少し支度してきます。」

にっこり笑って、家の中へ入る。少し驚いた様子で後姿を眺めていたが、大丈夫だと思ったのか、すぐにこいしを呼んで、さとりも家を出て行った。


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「ありがとー!あたし達のライブどうだったー!?」

正午になり、プリズムリバーの演奏会も終わる。里は熱気に包まれ、白銀の世界を溶かしてしまいそうな勢いだった。

彼女達が片付けを始めて、それを待っていたとばかりに里の男性陣が群がる。そう。クリスマスに一人で過ごすしかなく、けれどこの三姉妹が大好きなファンの皆様だ。

「ルナサさん!よかったらこの後一緒にどうですか!?」

「メルランさん!俺と!」

「リリカさん!」

あーやっぱりなっちゃったねと苦笑するリリカ。笑顔でごめんなさいねと断るメルランだが、弱気なルナサはラチられる寸前になる。

「あのっ…だからっ…」

「いいじゃんかよー、一人身なんだろー?」

嫌がる彼女をムシしてガッと腕を掴む。本気でメルランとリリカが止めようとするが、大柄な男性に敵うはずもない。

仕方ない、弾幕を軽く放ってやるか。そうしてトランペットを構えた刹那、後方から女性の声が聞こえた。

「ごめんなさい、午後は私との約束があるのです。」

青と紫の中間のような髪色、肩より少し長いくらいのそれがふわりと風になびく。

洋風な、けれど落ち着いた洋服を着て、この辺りの者では無いとすぐに分かったが、とても美しく、思わず見とれてしまう。

「…ルナサ。」

そっと手を伸ばす。はっと我に返り、その腕を振り払って、後ろを振り返って叫んだ。

「ごめんなさいっ…お、お気持ちは嬉しかったです…!!」

追ってくる様子は無かった。悔しいとか、そんなんじゃなくって。

男性陣にとったら、女性との、しかもあんな綺麗な人となら自分はつりあうわけがないし、急に申し訳なくなって。

姉妹にとったら。

「…姉さん、何時の間にあんな綺麗な人と友達になったの?」

「…さ、さぁ…?」

ただ顔を見合わせることしかできなかった。


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「あの、その…助けてくれてありがとう…」

ぺこり、と頭を下げる。女性はにっこり笑って、その頭を撫でた。

「…その様子でしたら、私が誰か分かったのですね。」

「うんっ…衣玖、さん…だよね?」

いかにも、といった様子で再びにっこり笑ってみせる。呼びかけがなかったら誰だか分からなかっただろう。

あまりにも帽子と衣が印象に残っているせいで、それらを外して別の服を着た瞬間だれだかわからなくなる。からかわれて言われたことだったが、実際にその事実が役に立つとは思わなかった。

どうしていつもの服で来なかったか。それは、衣玖が人間達に疫病神と嫌われているから。正体がバレてしまうと、間違いなく人間達は彼女を追い出すだろう。

だから、変装…ではないが、特徴となるものをすべて外し、その場に怪しまれることなく入ったのだ。

「…もしかして…」

「えぇ。素晴らしい演奏でしたよ。」

最初から聞いていてくれた。聞いて欲しかったけれど、叶わない願いだろうと思っていた願いが。

それが嬉しくて、思わず涙が零れ落ちる。あらあらと、困った、けれど少し嬉しそうに、少女の体を優しく抱きしめた。

「…さっきの、午後からのこと。」

「…?」

「…よかったら、一緒に里を見て回りませんか?」

「…っ…!!」

勿論と答えようとするけれど、上手く言葉にできない。

けれど、何が言いたいのか分かったのか。小さくお礼を言って、再びその手を握った。

午後の人里の雪は、冷たいはずなのに、どこか温かかった。






…正直言いましょうか。
これ間に合わせ話でっす!!予定してた話と変更してお送りしました!!
本当の話はさなみの…いや、みのさなだったのです!!けど当日に間に合わなくて急遽30分クオの本当の小話になりましたイェヤァァアアアアァァ!!

…けど、途中まで書いてて、もったいないのでその内仕上げますわ。

久々に衣玖ルナ。そういえばあったね、って、思っただろ!!犬も思ったわ(おま)!!
珍しくうじうじしない衣玖さん…てかね、最初はこんな衣玖さんだったんだよ!!みのりんと関わるようになってうじうじするようになったんだよ!!

たまには原点に戻るのもいいなぁって、実感しました。


…あと、キーボード壊れて、買いなおしたんですが、使いにくい!!誤字いっぱい!!
一番吹いた誤字。頭を『撫でた』が『投げた』。ホラーじゃねぇから!!!