遂に50だよ!もうこんなに続けてたんだなぁ…
昨日みたいなえげつない話じゃないよ。あと、とじさと。50なんだからさなみのいくやった方がいいんじゃって思うけど、あえてとじさと。
あ、夏の話、ね。
「要る物はこのくらいか?」
人里の帰り。屠自古とさとりは、食材置き場に足りないものを買うためにやってきていたのだった。
人間に恐れられ、嫌われているさとりは里に入るわけにはいかないので、行きかえりに荷物を持つのを手伝いをするためだけにいる。が、実は屠自古が頼んだわけではなく、自発的にやってきたのだった。
「そうですね。ではさっさと帰りましょう、あなたと居ても反吐が出そうになるだけですし。」
「じゃあ何で付いてきたんだ。」
あなたの手伝いになりたかったから、口にしているのは素直な言葉ではない、そんなこと言えるはずがない。
対する屠自古は心から自分は嫌われていると思っているため、どうしてもいつグーが飛んでくるかを内心で不安に思っていた。ちらっとさとりを見ても、不機嫌そうにしか見えない。
「散歩したかっただけです。家の中に居るだけでは体が鈍りますからね。」
「…やっぱそしたら付いてくる必要ないと思うんだけどなぁ…」
別に屠自古はさとりのことが嫌いというわけではない。仲間として好きだし、信頼もしている。
ただ、向こうはそういうわけではないので、どうしても自然と距離を置こうとしてしまう。二人の間には不自然な間があった。
と、そこへ。
「…あら、雨。」
初めはぽつぽつだったのが、すぐに大雨に変わる。夏によくある、にわか雨だ。
「あぁもう本当ロクなことがない!走りますよ!」
「ふっ…大丈夫だ。傘を持ってきているからな!」
そう言って謎のドヤ顔をしながら傘を出してさそうとする。ちょっと幼く見えて可愛いと思ったさとりの表情は白けていた。
内心と表情が一致していないのはいつものことだ。
「…おめでたいですね、あなた。」
「わ、悪かったな!ほ、ほら、お前も入れ、濡れるだろ。」
そう言って傘をさとりの方に少し差し出すが、さとりはぷいっと前を向いて、
「要りません。何が悲しくてあなたなんかと…あ、相合傘しなくてはいけないんですか。」
少しだけ頬が赤くなっていたものの、単純に相合傘という単語が恥ずかしかったとしか認識していない屠自古。強情な彼女に、流石の屠自古も呆れかえる。
「言ってる場合じゃないだろ。ほら、いくら夏とはいえ風邪引くとマズイ。」
「濡れていいです、引いていいです。」
「……」
プチッと、何か線のようなものが切れるような音がした。
「ああもうっ!じゃあこれでいいだろラチがあかない!!」
大声で叫んで、持っていた傘をさとりに突きつける。変わりに自分が傘から出て、にわか雨の中にその身を放り出した。
さとりも屠自古がこうするとは思っておらず、目を丸くする。
「ちょ、あなた何考えているんですか!?そしたらあなたが濡れるじゃないですか!」
「いーよ別に!私は亡霊だから風邪とか引かないし!お前が風邪引いたとか、私が許さん!」
嘘ではない、とサードアイのせいで心が読めてしまうさとりはその本心に直接触れてしまう。自分のことを想ってくれていると、嘘だと思いたくてもその能力が許さなかった。
強がりを言っているのが急に申し訳なくなる。自分の独りよがりを押し付けて、結局迷惑をかけることに繋がってしまったから。
「……ん。」
「…?いや、気にしなくていいよ。私は構わん。」
「…私だって、あなたが濡れるの…嫌ですから。」
表情を隠すように、屠自古から顔をそらせる。思わずぽかんとしてしまったが、やがて顔が緩み、
「…ありがとな。」
そう言って、さとりの本心に気が付かないままその傘の中に入った。
そのことに気が付いたさとりは、少しだけ、ほんの少しだけ、悲しそうな瞳をしていた。
おいこっちの方が絶対甘いだろ。