ほんのり小話 55-2

え、卑猥なシーン?1だけしかないよ?もうエロ無いよ?
そして長め。仕方ない、春休み終わるまでにこの物語終わらせたいなーって、思ったんだ。





「さてと。思い当たる節は何かないわけ?」

コップを片づけて、部屋に戻ってきた穣子に早苗がそう尋ねる。まださっきのことがツボに入ったままらしく、時々ブフゥッと吹き出していた。

衣玖はまだ立ち直ってない。

「うーん……」

顎に人差し指を当てて、最近何か変わったことがなかったか思い出す。

「最近変わったこと…変わったこと…衣玖さんの衣をたき火の薪代わりにしたことぐらいしか。」

「ちょっとぉ!?」

がばっと起き上がり、始末書ものなのですよと穣子に訴える。冗談だって、と穣子はそれに笑って答えた。

しかし、何か無かったか。尋ねられても、何も思い出せないのが事実。

「怪しい薬を作って飲んだ覚えもなけりゃ、扱いが難しい薬品を扱った覚えもない。大体聞いたことないよ、取り扱いを間違って母乳が止まらなくなりました、だなんて。」

苦笑し、じっと自分の胸を見つめる。すっかり止まって、いつも通りの胸だった。

最近はずっとアリスの家に引きこもって本を読むだけの毎日だったし…と、再び何か無かったかを考える。家にずっと居たから?そんな馬鹿な。それだったらあの図書館にいる喘息持ちなんか、毎日胸汁ブシャァアアアじゃんか。

「…様子見るか、あるいはそんな病気があるか聞いてみるか。」

「…母乳が止まらなくなる病気ってあるって、聞き回るの?」

「……」

出会い頭に、胸から汁が止まらないんだけどそんな病気知らない?と、尋ね回る。

ただの変態か、あるいは淫乱で踊り狂った阿呆か。

なんにせよ、ドン引きされる未来しか見えない。

「…別に害になるわけじゃないんだし、そのままでもいいんじゃないの?」

「服の感触気持ち悪い。」

「問題そこですか。」

早苗の冗談に、真顔で答える穣子。恥ずかしいだとか、そういう理由じゃなくて感触が嫌だという、恥じらいのはの字も無いその答えに衣玖は思わずツッコミを入れた。

流石幼い神。純粋極まりない。

「うーん…それじゃあ提案。衣玖さんはみのりんの母乳処理班、あたしとらっこさんでみのりんの素行調査班。そっちは出るタイミングを見計らって、何が原因になっているかを突き止める。あたしとらっこさんで、みのりんの素行から何か原因となりそうなものがないかを突き止める。この2点から攻めるのはどうかしら?」

まぁそれが妥当だよね、と穣子は賛成する。いきなり吹き出すのが怖い雷鼓も、穣子の方ではなく早苗に付くことを賛成。

ただ衣玖は、苦虫を噛んだような顔になっていた。

「…何よ反対?」

「賛成なのですが…母乳処理班というのが私が淫乱な妖怪にしか聞こえな
「よし賛成、じゃあこれでいきましょ。」

私の尊重はガン無視ですか、と言葉を途中で遮られた衣玖の無言の圧力。勿論早苗はそんなものには屈しない。

「でも素行って言っても、最近ずっとアリスの家から出てないし…仲間間での聞き込みだけになりそうだね。」

「そーねぇ…仲間皆に聞いたら永遠亭に行ってみたり、そんな経験がありそうな人に聞いてみるわ。」

「ありそうって、例えば。」

「けーね先生。」

あー、と3人は至極納得する。妹紅とチュッチュイチャイチャしてたら出ました、なんてとてもありそう。しかもあの人白沢だし。白沢って牛だし。

雷鼓はその人を知らないので首を傾げる。人間の里で寺子屋を開き、先生をやっていると衣玖は簡単に説明した。

それに付け加え、妹紅の旦那さんで、毎日イチャラブしているという情報を植え付ける早苗。止めようとしたが、止められなかった。

本当にやってそうなんだもん。

「…じゃあ、方針に異議なし、ね。衣玖さんとみのりんはしばらく二人で行動になるけど、それは衣玖さんにとったらご褒美だからいいわね。」

「ごほっ…!?」

否定しきれていないところあたりとても素直である。対する穣子は相変わらずその理由を分かっていなかった。

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「さてと。とりあえず二回どういうシチュエーションで吹き出したかだけメモしておくか。」

穣子の自室に二人が入る。特にいつもと変わったことがないように思われた。窓も閉じられ、部屋は綺麗に片づいている。

が、衣玖が一つ変わったことに気が付いた。

なにやら変な臭いがする。スーッとした、そんな感じ。自分としては好きな香り。しかし、穣子がさせるには何となく違和感を覚える、そんな臭いだった。

その臭いの元は分からない。何かの薬品を使ったのだろうか…穣子の部屋はもっと甘ったるい香りがしているはずだ。

きょろきょろして、落ち着かない様子。不思議に思っている衣玖に気が付いて、穣子がこの臭いの理由を説明した。

「あぁ、変な臭いしてるの分かった?これミントの臭いなんだ。」

「ミント…また、何故に?」

それを尋ねると、うーんと少し悩んで、苦笑した様子で答えた。

「アリスにもらって焚いてみたんだ。いい香りするからって。でもこれ、紅茶や洋菓子で楽しむものだったんだよね。いや、間違いじゃないみたいなんだけど。」

結構前に焚いたのに、しっかり臭い残っちゃったと話す。別に嫌いな臭いでもないしね、と最後に付け足した。

「……」

何か、引っかかった。

もしかすると、何かが嘘なのかもしれない。

秋に関連する香水を作り、その香りをさせる穣子が、全く関係のないものを好む(いや、貰いものを焚いたというだけであって、特別好んでいるわけではないのだろうが)ことに、とても違和感を覚えた。

それに、決定的なものが一つ。

「…穣子。」

何故、窓を開けないのですか?

少し鎌をかけた質問だった。そこには本当に自分が結構気に入ってそのままにしている香りなのかもしれなかったし、確信は無かった。

けど、何となく、違和感を感じたから。

「……」

少しだけ間が空き、再び苦笑して答えた。

「…何日前だったかなぁ…忘れちゃったけど、始めは窓開けてたんだよね。でも、全然取れないから、諦めた。」

今の間。間違いなく、何かを隠すか、嘘を付いている。

しかし、それが何かが分からない。そもそも、今の時点で、嘘をつく理由が分からない。

もしかして、本人は母乳が止まらない理由が分かっているのではないか。

と、あれこれ考えていて気が付いた。

「穣子!胸っ、胸!」

「へ?あ、出ちゃってる。」

間抜けな声を出し、再び小さな胸を露わにする。やや黄色いドロッとした液が柔らかい肌を伝った。

「凄いね、今日で早くも三回目だよ。」

「…あの。」

けらけら笑う穣子に、深刻そうな表情で尋ねる。

きっと、否定されるだろうけれども。

…無理をしているんじゃないかと、思ったから。

「…理由、分かっているのでは?」

「は?」

何言い出してるのこいつ、と言いたそうな表情。思わずこれには衣玖も面食らった。

理由が分かってるんなら、早苗や雷鼓さんに迷惑かけたりしないでしょ?と、正論を返される。

特に、嘘を付いているようには思えなかった。

「…疑ってるね。」

「貴方の嘘はわかりにくいですからね。怪しいことはずっと怪しいと睨んでいないと、大きな罠にはまるのです。」

酷い言われようだと、楽しそうに笑う。ひねくれ者が誉め言葉である彼女にとって、それは嬉しいことなのだろう。

とりあえず飲んでくれない?と、その胸を差し出す。白濁した液がポタポタと地面に滴り落ち始めていた。

「……」

口に入れ、舐めとる。

気のせいか、少しだけ震えている気がする。

…何が理由になっているのか分からない。これは多分、本当だと思う。

しかしこの香りのことには、必ず何か裏がある。

それできっと間違いないのだろうが、理由が全く分からない。

分かっていないことが嘘だとすると、一つ矛盾が出てくる。

それならば始めに、何も前触れが無かった(ように見えるだけで、実際は何かあるのかもしれません)あのときの慌てよう。

あれは、とても演技ではない。

しかし分からないことが本当だとしても、それならばどうしてこの臭いのことに嘘をつくのか。

やりとりから考えられることは二つ。

自分が意図的にやったこと。しかしこれは、理由が分からない。

そしてもう一つは、誰かが無理矢理して、それを穣子が庇っている。

一応後者だとするなら、筋は通る。しかし誰が、何のためにかは分からない。

「…たい。」

…何にせよ、情報が足りない。

早苗の話を待ちつつ、何かもう少しひねりだせないか…

「痛い痛い痛い痛い!!歯ぁたってる!!もげるっ、もげるって!!」

穣子の大声にはっと我に返る衣玖。どうやら考えているうちにかなり強く噛んでしまったようで、歯を抜くと白色ではなく、赤色の液体がだらりと出てきた。

「うわぁあああごめんなさい!!」

「悩むのはいいけど歯は立てないでよ!痛いものは痛いんだからぁっ!!」

舐めようとしても顔届かないし、ふーふーしようとしてもやっぱり届かないし、と付け加える。仕方なく机から木綿を引っ張りだし、出血したところに当てた。

その後、衣玖さんが腹パンされたのは言うまでもない。








出たからといってエロに発展するとは限らない(確信)。