ほんのり小話 57

わぁああああい今日エイプリルフールじゃんかぁぁああああああ!!
ってことで更に後回しにされる後書き。やりたかったネタがあったんです!!
今回ホールドアップさんには伝わるけどキバリんには多分伝わらない、そんなネタ。
そしてまたみのいくですはい。
あと元々うごでやろうと考えていた話のため、メンバーがさなみのいくらいしずですが、その辺は目を瞑ってください。







命題の逆の裏は対偶。

命題と対偶の真偽は同じ。

けれど、命題と命題の逆の真偽が同じとは限らない。

命題がpならqとしよう。

qならpが命題の逆。

pでないならqでないが命題の裏。

qでないならpでないが命題の対偶。

…さてと。衣玖さんは騙されるだろうか。




「おはようございます。」

朝早くに皆が集まる場所に出向く。そこにはお馴染みのメンバーがそろっていた。

奇跡の神に、紅葉の神…豊穣の神だけは今ここに居ないが、多分散歩にでも出ているのだろう。

「さてと、衣玖さん。今日は貴方の命日です。」

「…は?」

「お刺身になっていただきますね。ずっと食べてみたかったのですよ、貴方のお肉。」

くすっと笑って、手に持っていた何かを構える。それはよく磨がれ、太陽の光を浴びてギラリと光る、一本の包丁だった。

右手に持って、ふらりと近づく。やばい。本能的にそう感じた。

「ちょ、ちょちょちょ待ってください!!何て物騒なもの持っているのですか!それ置いて、置いてください!私のお肉美味しくありません!!」

「…何故、美味しくないと分かるのですか?」

慌てる衣玖に対し、静葉はにっこりと笑みを浮かべたままだ。黒い影やらなにやらが入っていることを除けば可愛いものなのに。

やや見下すように…と言っても衣玖の方がずっと身長が高いので傍から見れば見上げているようにしか見えないが、そうやって衣玖をじぃっと見つめた。

「貴方自分で自分を食べたことがあるというのですか?それなら検証する必要はないでしょう。しかし、そういうわけではありませんよね?食べない内から不味いとしているだけですよねぇ…?」

「そ、そうですけど…」

正論を返され、思わず反論できなくなる。いや、そもそも仲間を食おうとしている時点でかなり非道なことをやっていると思うのだが。

そんなやりとりを、早苗はただじいっと見ている。こいつら面白いなーとか、そんな感じの目で。

いいから助けてくださいよ。

「…衣玖、逃げて。」

「へっ…?」

思わず間抜けな声を上げる。ふっと、目の前に白い服が映った。

右手を横に出し、衣玖を守るかの体制に入るのは、ずっと彼女の傍についている付喪神だった。

「食べられる…仲間でも、許せないよ…!衣玖を傷つけるのは、わたしが許さない!」

「……」

僅かな沈黙。やがて。

「…くっふふふ。」

紅葉の神が、包丁を下ろして、唐突に笑い出した。

「ははっ、あはははははっ!もうー皆さんジョークが伝わらないのですからー。」

「…は?」

思わず二人もきょとんとする。早苗も笑いをこらえることができなくなったようで、腹を抱えてゲラゲラ笑い始めた。

そうか。ここに来てようやく思い出した。4月1日、エイプリルフールだ。

「今朝から静ちゃんとあたしとで考えた嘘よ。…みのりんも一緒だったんだけど、何か考えこんでるみたいで、この相談をした後に二人待たないで出て行っちゃった。多分湖辺りにいると思うけど。」

こんなに面白いものが見れたのに残念だわぁと、笑いながらも残念そうな様子だった。

雷鼓はまだ状況が掴めてないようで、エイプリルフールって何だ?ときょとんとしている。

「…考え込んでいる…ですか。」

嘘を付いていい日に考え込む。

…それは、自分を騙すための嘘を考えているに違いない。

「…湖ですね。行ってきます。」

「あ、みのりんに会いに行くの?じゃあ伝えといてよ、『まんまと衣玖さんとらっこさん引っかかったよ』って。」

「自分の不名誉となることを誰がわざわざ言いますか。」

また二人はケラケラと笑い出す。ここまで笑い飛ばされると流石に居心地悪い。

早足に扉の向こう側に行き、湖を目指す。雷鼓にはすぐ戻るから少し待っていてと、二人のところでお留守番させた。

天気は晴れ。少しばかり雲があるものの、今日もいい天気だった。





穣子の姿は意外とすぐに見つかった。氷の湖の辺に座ってぼんやりと物思いにふけていた。

こちらにはまだ気が付いていない。だったら、背後から驚かせてやるのもありかもしれない。

毎日散々遊ばれているのだから、たまには遊び返してもいいかもしれない。

「……」

背後に静かに近づき、そして、

「衣玖さん、わってしても気が付いてるからね?」

「……」

バレてた。

流石にこれは恥ずかしい。何も言えなくなって彼女の隣に座る。多分顔はかなり赤い。

それを照らそうと湖が光るものだから更にバツが悪くなる。大人しく帰るには帰るで気が引けた。

「…どうして気が付いたのですか?」

物音を立てた覚えは無い。気配も最小にしたのに、気付かれた。

納得がいかない様子で、衣玖は穣子に尋ねる。返ってきた答えはとても曖昧なもので。

「ん、んー……何となく?」

自分でも何で分かったのか分からない、そう言いたい様子だった。

…嘘を付いてる様子は無い。多分本当に分からないのだろう。

「…なら、いいです。では質問を変えて…ここで何をしているのですか?」

「考え事。真と誠、偽と嘘について。」

これまた、嘘を付いている様子は無い。どうやらどうやってこちらに嘘を付こうかと考えているわけではなかったらしい。

が、また難解なことを考えているのには違いなかった。

という、衣玖も彼女の哲学を聞くのは大好きなのだが。

「…衣玖さん。」

待ってましたとばかりに話題が振られる。その表情に笑顔はなく、真剣な瞳だった。

それは湖の光を映し、静かに一つの光に焦点を当てている。

「誠を真、嘘を偽っておいてさ。ある人の真実を命題として、その人の命題が嘘だとして、その嘘の真を言ったつもりでも、それは命題に戻ってきて、対偶でないことをどうして疑う人は少ないのかな。」

「……」

…なんのこっちゃ。

今回はまた難しい話のようだ。聞き手に回るしかできないだろう。

時々、彼女の言うことが難しすぎて分からないことがある。

多分今回は、数学の話に基づいて真偽について説いているのだろう。

全く、よく分からない話だ。

「人の言葉が真。嘘っていうのは、その逆。で、その人が言う真実は裏。皆そう思うんだろうね、何故か。それが、逆の逆で、命題に戻ってきているかもしれないって気付かないで。」

じっと、ただ聞いている。返す言葉など思いつかない。

すると、ある人が持ってきた面白い話をしてあげる、とくすくす笑って、ようやく笑顔になって言った。



昔、明るい女の子、大人しい女の子、傲慢な女の子が居ました。

明るい女の子は大人しい女の子に自分のちょっと恥ずかしい話をしました。

あまり賢くなかったのでしょう、最後に「誰にも言わないで」と言ってしまいました。

その最後の言葉を聞いた傲慢な女の子は、二人に何を話していたのか問い詰めました。

傲慢な女の子は、二人にとっていじめの主犯者でもありました。

大人しい女の子は話していたことを言いました。

明るい女の子もその次に話していたことを言いました。

恐らく、二人の言ったことはバラバラだったのでしょう。傲慢な女の子は、こう言いました。

「大人しい女の子は嘘を付いている!」と。



「……それが、面白い話ですか?」

分からない様子で、衣玖は首を傾げる。まだ分からない?と穣子は笑いながらも呆れたように小さなため息をついた。

「傲慢な女の子は明るい女の子が真と言ったけど、もしかしたら大人しい女の子が真だったかもしれないし、どちらも偽だったかもしれない。でも、明るい女の子の方が偽だったかもしれない…ま、本当のこと言うと、明るい女の子が真で、大人しい女の子が偽だったんだけど。でも、そう断定する材料なんて何処にも無かった。」

その話を聞いて、この話の言いたいことは分かった。どちらが真で偽か、それは本当は分からない状況なのに、傲慢な女の子はすぐさま真と決め付けた。

…しかし、何故ここでそんな話を持ってくるのか。

「衣玖さん。」

先ほどまでの眼差しとは打って変わって、満面の笑顔を見せる。

「衣玖さんのこと、大好きだよ。」

「はい…っえ?」

告白すれすれのその言葉。聞いて、思わず心臓が飛び上がりそうな感覚がした。

それはもしかして。

「あの、そ、そそそそれは、」

しかし、期待はつかの間。

「なんてね。今日はエイプリルフール、嘘だよ!」

べっと舌を出して、してやったりという笑顔。おまけにVサインまで付けちゃって。

「……ひ、引っかかった…!」

「あっはははは!君、その様子だとお姉ちゃん達にもしてやられたでしょ!ほんっと、衣玖さんってばひっかかりやすいんだから!」

と、ケラケラ指指して大笑いする穣子。

もしかして、この入り方は自分を騙すためのすべて嘘だったのではないか。

実は本当は大した意味など無かったのではないか。

ただ何も言い返せなくなって、赤くなった顔を必死に隠すのが精一杯だった。






「……」

その後、衣玖と別れた穣子が、ぽつりと呟く。

「…ははっ、騙せた騙せた。あんなにヒント出してあげたのに、それでもなお気が付かないなんて。」

いたずらな笑みを浮かべて、先ほどのやりとりを思い出していた。

…あのとき、嘘を付いたのは『今日はエイプリルフール、嘘だよ!』という、この部分。

嘘と言ったのが嘘で、大好きだというのは真だった。

人は疑わない。嘘の嘘が、対偶でないということを。

嘘が真実の逆で、その真実が裏だというのは勝手な決めつけ。

嘘が真実の逆で、その真実がまた逆で、結局振り出しに戻っているのかもしれないのに。

人はその事実に気が付かない。

それは何故か。

それは、人が知っているから。

疑いすぎて、失うものがあることを。


 …いつか、気付いてくれるといいんだけどね。







えっとね、意味分からなかったと思うから要約すると、『ごめーん嘘付いてた!本当はこうなんだ!って言われたときの『こう』って、あんまり疑わないよね』ってことです。あ、そういう職業についてる人は別。
私はそれでいいとおもいますけどね。こないだの信じることについてのうんぬんじゃあありませんがw
因みに命題やら真偽やらあれ。数A(高1)で習いますよ。また習ったら『あーそんなこともあったなぁ』と思い返していただけると嬉しいですねw
あとそうそう、途中で出てきた女の子の話。あれ私の実話だったりします。明るいってのが私でしたwいやぁ何かずっと引っかかっててねー、この歳になってようやくその引っかかってた謎が解けました。スッキリスッキリ!

…まぁ流石に、この流れでラストのみのりんに騙された、なんて人は居ないわな。居たらびっくりだよ。


コメ返。
<キバリん
マジかあれ美味しかったのかwwwみのもこ…あれみのりん攻めwww
いや、やりたかっただけだから私の中での慧音の死ネタじゃないけどねwIF物語的に『思いついたけど設定ぶっ壊すから全くの番外編本編絡まないで』みたいな、そんな感じww
もっと酷くなるのかもこたん…きっとうちの衣玖さんのグチグチさを超えてくれるんだn((
実は獣=慧音先生への想い(未練)、魔物=周りへの逆恨み、みたいな描き方してあったりします。途中の『その魔物は手当たり次第人を、妖怪を、獣を襲った。』っていう、この文章。この最後の獣、自分の飼っている獣を襲い、魔物が支配したという隠喩を込めてあったりするんだぜ!気づかなかっただろうけど!!
静ちゃんはちょっと幻想郷を離れて何もないところに行きました。

全く関係ないのにwwwまさかそこで来るとは思わなかった…!
うーむ、上手いことできたと思ったが…予想外すぎてもうwww

穣「うわぁ毒人形は好きだろうなぁ…」
静「あ、意外かもしれませんが私も大好きですよ。」
早「…葉っぱつながり…?」
そうだね、大変なことになりそうだねwうち獣藍しゃまくらいしかいないからな…割と大丈夫だわ。

みのいく最終的にリア充になる気しないわ私はwww