ほんのり小話 61

大丈夫、更新日時は7日d((

去年3DSで私とフレコを交換していた人は、そのときの話と対応しています。あのときってみのりん、衣玖さんにベクトル向いてたのね…温泉成り茶後だったのかな?

今回はみのいく…いくみの?で。去年はとじさとだったから。






今年の七夕は、見事なまでに大雨だった。天から滝のように雨が降り注ぎ、幻想郷の大地を濡らしていく。今年は天の川は見れそうにない。

特に期待をしていたわけでもなかったのだが、穣子はアリスの家の自室からじっと空を見つめていた。雲の上にある運河を想像しながら、じっと手に持っていた短冊に触れる。

皆が短冊を飾るときに飾れなかったものだった。




早苗が笹を持ってきた。アリスが短冊を用意していた。それもちゃんと、赤、青、黄、白、黒の五色。七夕の短冊の色は陰陽五行説に基づいて決められている。それぞれ願い事を、色ごとに決められた意味に対して書くのがルールなのだが、皆はそれを知らないので自由だった。

「藍は何を書いたのですか?」

「『ゴキブリをいこの世から消せ』。」

「命令形…」

願い事を書くのが早い者も居れば遅い者も居る。藍や妖夢、アリス、娘々達は短冊を受け取るなりすぐに書いてしまい、笹に飾っていた。それを後目に、穣子は悩んでいた。

みのりんは書かないのかしら。『衣玖さんと両想いに』って。」

「皆見るのに書けるわけないじゃんか。」

ふぅ、と一つため息をつく。ちらっと隣を見ると、同じように苦悶している衣玖の姿があった。

少しだけ、衣玖さんはなんて願い事を書くんだろう、と脳裏をよぎった。刹那、くだらなくなって頭を横に振る。その一部始終を、早苗はニヤニヤしながら見ていた。

「…そう言う早苗は?」

「『うめぇ』。」

「願い事じゃないし。」

そういえば去年も同じ願い事をしていた気がする。全く進展していないことに気がついて、またため息が漏れた。

去年も願って、結局飾ることができなかった短冊。とっくに捨てたけれど、内容は何だったか覚えている。

「…そういえば、去年の衣玖さんの願い事は『皆の願いが叶いますように』、だったよね。」

「ん、んー……あぁ、そうね。」

実はもう少し複雑な状況で、穣子の知っている衣玖のその願いは嘘のものである。早苗は衣玖の願いがどんなものであったか知っていたが、そのまま正すことなく流した。

言ってしまっては、とても面白くない願い事だ。

「…決まった。今年の願いは、これでいいや。」

「どれ。…『衣玖さんの願いが叶いますように』、ねぇ。なぁんだつまんないわ。もっと積極的になればいいのに。」

「そりゃあ、なれるもんならなりたいさ。でも、できない。だから、せめて衣玖さんの願いが叶えばなーって。衣玖さんの願いごとが叶うことは、少なくてもあたしの幸せの一つだから。」

いくじなしだなって、君は笑うかな?少し悲しそうな瞳で、穣子は早苗に返答を求めた。その表情は、か弱い女の子同然だった。

今までが、彼女は大人びすぎていたのだ。幼い子供ながらも、気を休めるところは無くて…ボロがでている自覚はあるのだろう。自分らしくない、彼女は彼女なりに分かっている。

だから早苗は、それを鼻で笑った。

ほんっと、バカらしい。

衣玖さんの願い事も、ほとんどあんたと同じだっていうのに。




まだ腹をくくっていたほうだった。今年は短冊に自分の本音を書いて、気づいてもらおうって。

この時点で穣子はすでに願い事を決めていた。あとは、それを形にする勇気だけ。書いて、見てもらえれば、少なくとも少しは前進する。

分かっている。いつの間にか、自分の弱点になりつつあるということが。できることなら、それを書いて、終わらせたい。断ち切りたい。思うことはできても、実行できるかは別問題。

今回こそは。自分に何度も言い聞かせる。少しだけでもいいから伝えよう。

伝わらないことが嫌なのではない。伝えられない自分が、自分で許せない。自分の思い通りにできないのがもどかしい。…いや、それは少し違う。伝えたいと思うと同時に、『まだこのままがいい』と願う自分が居るのだ。

伝えることによって関係が崩壊するのが怖くないと言えば嘘になる。しかし、もっと別の理由で、どこかでそう思っている自分がここにいる。

それは何故か。分からない。

多分、分かるまで、形にはできない。

…皆が願い事を書くまでに、その理由は分かるだろうか。




帰る前に、衣玖と二人で夜空を見に行った。

雲行きは怪しくなかったが、衣玖は雨が降ると予想していた。空気の読める彼女だからこそ分かること。ほぼ確実に当ててしまうから恐ろしい。

「…雨が降ってしまうと、織り姫と彦星は出会えないのですよね。」

少し悲哀を込めた声だったから、よく覚えている。何てロマンチストだと鼻で笑ってやりたかったが、何故かできなかった。

空想を思うのは個人の自由。人の思い、考えに介入することは許されない。個々が答えを求め、たどり着いた結果を、とても笑うことなどできない。

出会えないという話は信じていなかった。雲の上にいるのに、どうして出会えないのか。ずっと疑問だった。だから、別の説を信じていた。お気に入りの説で、ずっとこっちを信じている。


…知ってる?七夕に降る雨は、二人が出会うことを隔ててるんじゃない。

 あれは、織り姫の涙、そのものなんだよ。




雨が降る。止まない、大雨が。







後で調べたら、天の川渡れない→涙→雨、ってことだったようで。でもこっちの方が面白いって思うんですよねぇ…

それはともかく。今回ね。めっちゃくちゃ話の構成上手くいったと思うんです…!!
7日夜(現在)→昼→朝→6日夜って、だんだん過去に戻っていくんです。それで、最後の言葉で、7日夜と繋がる。しかも、またリターンして読んでも意味が通じるのですよ。無限ループ!

今回もまた対比ですね。今回は分かりやすいですね。裏に込めたものとしては、
「隔てているものは無い。出会える。しかし、想いを伝えられるかといったら別問題。

織り姫の涙は、出会えて嬉しいことか、それとも、伝えられないもどかしさか。」
蛇足になったので入れなかったのですが、これを意識した瞬間、最後と最初を繋げた意味が分かるかと…!

更にどんどんみのりん視点になるように地の文を書いていることにも注目していただけると嬉しいです。客観的な回想からみのりんの回想に入っていくこれも今回なかなか上手くいったかと。


短いですがかなりお気に入りの小話なので、もしよろしければ感想ください!




あとごめんなさい、コメ返する時間なくなってしまったので次回まとめてします!