ほんのり小話 62-1

秋神短編集、うごの方で更新しきったので(あとがきはうごでしか晒さないです)。
因みにこれ、文章直す前のものなので、ところどころ表現がおかしかったり誤字があったりします。







Ⅰ『絶対』


「さてさて問題です。ここにコインが一個あります。これを投げて、表と裏が出る確率を足すとどうなるでしょーか?」

いたづらな笑みを浮かべながら、穣子は私にそう尋ねてきました。その場には雷鼓も一緒に居ます。

「100%!」

「誰も百分率で、とは言ってないけど。」

勿論百分率、と言われても雷鼓は首を傾げるだけ。生まれて間もない付喪神の知識は、蚊が肌に刺す針の深さほど浅いのです。

その横で、私は回答を言いました。

「1、です。表も裏も、1/2ですから。」

「はーい引っかかったー。」

待ってましたと言わんばかりに、彼女は私を指指してケラケラ笑いました。人に指を指すなど失礼だ、ということは彼女の頭の中には無いようでした。

「答えは、限りなく1に近い、でしたー!いやぁここまで綺麗にひっかかってくれると気持ちいいもんだね!」

あぁ成る程、そういうことかと、私は思わず苦笑を漏らしました。雷鼓に至ってはそれがどういうことか分からず、相変わらず首を傾げているご様子で。

「絶対1/2になるなんて、誰が決めた?コインを投げて、戻ってこないことだって0に限りなく近くてもありうることなんだ。最近は、そう考えてくれる人も少なくなって、あたしとしてはその柔軟さの欠如はとてもつまらなくてしょうがないよ。」

「それはただ単に、貴方がひねくれているだけだと思いますけどね。」

「ひねくれてた方が、よっぽど楽しい。竹を割ってお姫様じゃなくっておじいさんが生まれるだとか、そんな面白いことを考えられる方がよっぽどね。」

それから、彼女がぽつりと呟いた、

「絶対なんて、この世にはありはしないよ。」



「…と、いう言葉がとても耳に残っているのですよ。」

その話を聞いたのは昨日のことだったか。穣子と二人きりになったときに、私からそんな話題を持ちかけました。

そんな彼女は、そういえばそんなことも言ったねと、とても淡泊な返答です。

「でも、何も間違ってないでしょ?」

「えぇ、そうです。不思議なことに、何も間違っていません。間違っていないからこそ、私は余計にその言葉が耳に残って、同時に一つの疑問が浮かんだのです。」

ふむ、と短い返事。何かを考える様子を見せた後、それで?と話の続きを要求しました。

「私ね、思ったのです。それならば、どうして、この世に絶対などという言葉があるのでしょうかと。」

「成る程、一理あるね。」

概念なきものに何故名称ができるのか、それは必ず、何かしらの必要性があるからだと、私も穣子も同じく思っています。

逆に言えば、概念あるものにはすべて何らかの名称があるということです。それは、必ず必要があるから生まれるのです。

「して、穣子はどうしてだと思いますか?」

少しだけ俯いて、親指の爪を噛みます。彼女が深くものを考えるときの癖で、そんな様子を見せるということは、私の質問にとても親身になってくださっている何よりもの証拠でした。

「…ただの戯言だと思うな。思慮分別の浅い、面白味の欠けた人の。固定概念、って言えば分かりやすくていいかな。人が勝手に設けた枠組み。それが、絶対。」

その言い方は、絶対という言葉がとても気に入らない様子でした。そんな言葉があるから、人々は柔軟な発想ができなくなるんだと、そう言いたげな様子でした。

しかし、それに対して私は、

「私は、そうは思いません。」

空を仰いで、その考えを言いました。

「それは元々、確率の話ではなかったのです。」

じっとそのまま天を見つめ、彼女の表情を気にせずに言葉を紡ぎます。自然と、泉のように沸き上がってくるのでした。

「それは本来、意志の話だったのです。こうしたい、ああしたい、と貫こうとする意志。しかし、そんな意志はどれだけ強くても、所詮意志、曖昧なものです。そんなふわふわしたものを、地面を踏み固めるがごとく、一つの言葉の強固な檻に閉じこめたのです。決して形の変えない、そんな檻に。」

どうですか?と穣子の方を見ます。そのときの彼女は、とても無邪気な笑顔でした。

心からの同意か、あるいは、求めていたひねくれた解釈ができていたことか。私は多分、そのどちらとも言えると思います。

「衣玖さんがそんな話をするなんてね!それは面白い、本当に面白い考え方だ!」

どうやらとても気に入ったらしく、忘れないように書き留めてくると、早足で私の隣を離れていきます。

そんな後ろ姿を見て、私はぽつりと、小さく呟きました。


 …絶対、この想い、貴方に届けますからね。






衣玖さん理論。絶対は意志を固める言葉。




コメ返。
<Amehanaさん
ちょっとずつ、しかし恐ろしい速度d((
私も今の静ちゃんの方が好きです。不思議なことに、内面的なものは変わっていませんからね…純粋(?)な彼女が、今でも大好きです。
みのりん愛し隊いらっしゃいませー!



ティーダさん
おぉ、ツイッターの方のイラストも見ましたかwあれですねきっと、さなしず詰めのあれですねwあれのシュールさは異常でした…ww

全く、大人気ですよ『みのりん愛し隊』。ってことでティーダさんも入りまsy((

長編小説読んでると、なんか物凄くルナサっぽいんですよね。蓮華草に出てくるとこの静ちゃんとか純粋に弱いけどかっこいいみたいな、そんな子だったのに…!!