ほんのり小話62-5

ラスト。昨日ガチで更新忘れていました…





Ⅴ『真実』




薄紫色の草原。風が吹くと、その小さな花はそよそよと揺れた。

その光景は幻想郷では珍しいものではない、むしろ年を重ねるにつれて、それはどんどん増えていった。それがどういうことか、花は何も語らなくともそれを暗示している。

外の世界で、失われつつある世界。外の世界で忘れ去られようとしているものは、この幻想郷に流れ着いて、その数を増やす。この花もそうだった。

蓮華草。その花が、穣子はどの花よりも大好きだった。秋の神が春の花を好きになることに矛盾を感じるが、それはとても自然なことであった。

その花は豊作をもたらす。田圃に植えてやると稲のための肥料になる。まるで稲の為に咲くような、儚いその花に穣子は感謝し、愛するのであった。

その花が一面に咲き乱れる世界の中にぽつんと、そんな秋の神は寝ころんだ。仰向けになり、じっと空を見つめる。

空はとても高く、青かった。



綺麗で儚い花といえば、間違いなくこの花。

そう思うのは私だけだろうか。

綺麗で儚い、皆は桜を想起するに違いない。いや、皆とは言わない。あたしがそう言うのと同じように、他の花を指す者は間違いなく居る。

古来から儚い花の象徴とされてきた桜の花。咲いたと思えばすぐに散るその花は、確かに儚さを感じさせるのかもしれない。

けど、あたしから見れば、桜の花よりも蓮華草の花の方がずっと献身的で、儚く美しく見えるのだった。



園芸の本を漁った。そこに、蓮華草の名前は無かった。

雑草の本を漁った。そこに、蓮華草の名前はあった。

当然と思う人ばかりだろう。しかし、あたしはとても、それが罰当たりなことのように思えた。

田圃で豊作の為に育てられる。豊作の為に、その花は散る。その花は人為的に散らされるが、稲と同体になって、再び咲き乱れる。

稲の花というものも儚い。白く小さな花が数時間咲くだけで終わってしまう。あたしはそれは、蓮華草が儚い終わりを迎えたのと呼応して、稲も同じく儚い終わりを迎えるのだと信じている。



…笑う人が殆どか、あるいは何という夢想家かと馬鹿にする人か。人の為に咲き、人の為に尽くす花などこの世に存在するものか、と言われて終わり。

あたしはそれでも構わないと思っている。人にとって、それが真実なのだ。しかし同時に、あたしにとっても、あたしの思うところが真実。干渉されない領域にある、不変の宝物なのである。

真実というものはやっかいなものである。どれだけ純粋なものを手に入れようとしても、それは人の目、耳を通したときに簡単に恣意的に歪められてしまう。

その歪められた真実を、あたし達はそれを勝手に純粋な真実だと信じ、疑わない。それは、果たして真実だと言えるのだろうか。

それぞれが違う、異なった、恣意的に歪められたそれを、おかしなことに純粋なものと信じる。



あたしは、そんなもんなんだと思う。

ある人は言った。それでは、純粋な真実には未来永劫触れることができないのかと。

ある人は、こう答えた。

私たちは夢を見る。純粋な真実に触れる夢を。

そうだ、その通りだ。触れられないのであれば、触れようとすればいい。

それぞれに真実というものは違って見える。人は、その真実を笑い、変化させようとするかもしれない。しかし、その真実はその人にとっては純粋な真実に違いないのだ。

純粋な真実に触れる夢。それは、決して他人の真実に歪められてはいけない、否、歪められるものを真実とは呼べない。

真実を変えていいのは自分自身。自信が何を信じ、信じていたものが違っていたときに、それを変える、その強さ。そして、それを幾人に出会っても歪められない、崇高なる絶対、不可視の幸福、屈託のない信念、

それらが混ざり合い、超越したときに見えたものこそ、それがーー





気が付くと、目の前には竜宮の使いの顔があった。ここで寝ころんで、じっと空を見ていたあたしが気になって、のぞき込んでいたのだけれどなかなか気付かれず、目を開けて寝ているのか疑問に思ったのだと。

あたしは目を瞑った。しばらくして、目を開けた。そこにはまだ、竜宮の使いの姿があった。

寝ていた。成る程、間違いではないかもしれない。あたしは思わず笑って、隣に来ないかと尋ねた。


夢想への片道切符。帰り道は竜宮の使いが運んできた。







みのりん理論。蓮華草すばらすぃ。





はい、原案でした。一応うごやっていない人がいらっしゃるので、ね。

それから、今年は9/15に犬得クイズやらない予定でしたが、多分やります。初級、中級、上級みたいに分けて、選んで解いてもらう形になるかなーっと(中級の人は初級、中級と解く、みたいな形になるかな?)。

初級…ミバス毎日見てる人にとったら楽勝
中級…ブログ見てないと分からないものがちらほら、ひっかけのようなものもあり
上級…ブログ読んでないと絶対に分からない、読んでても分からない
神級…私も分からない(!)

みたいな難易度になるかと思います。今回は筆記オンリーで!
景品は今年もつきますよー。