祝、三周年!!&ほんのり小話 67

ほんっと皆様のお陰ですありがとうございます!
そして私は日付感覚がなくなり、クイズの存在をすっかり忘れていましたえっへぇ!!
ってことで、みのりんふぁんたじあ第6弾やりましょう(うごで出したあれ)。ただし、予告してた平和な話では全くないのであしからず!!
うごメモで見る方が今回の話はオススメだったりします。いやぁね、うご用に書いたら、のちのち要る複線が貼れてたから、もうこれ6にしちゃえっていう、そんな投げやりにあああああすみませんすみません、くっそ忙しかったんですこの夏休みこれで許してぇ!!
あとタイトル変えてます。本命のタイトルはうごの方です。検索避けだと思ってください…





「それにしても、すっかり遅くなっちゃったなー。」

穣子らの家からの帰り道。衣玖と雷鼓は二人並んで湖の方へと向かっていた。天界に帰るときや逆にやってくるときは、いつもここを経由することにしている。ここからでは帰れない、というわけではないが、夜で辺りが暗い分、少しでも慣れている道を通りたかった。

「すみません、私が長話をしてしまったばかりに。」

「いいよいいよ。楽しそうだったし、あんなに幸せそうな衣玖を止めることはできないよ。」

これでは雷鼓がのけ者になっていたように聞こえるが、別にそういうわけではない。彼女も会話に混じり、笑っていた。

ちらり、と雷鼓を見る。その顔には嘘は無かった。いつでも自分のことを一番に考えてくれている。申し訳なくなりながら、衣玖はその帰路をやや早足で進んでいった。

「…!」

そして、森を抜けて気がついた。いつから、いや、森に入ったときからだったのかもしれない。

湖面に反射する光から気がつき、辺りを見渡す。上を見上げると、その異変に気がついた。
 月が、紅に染まっていたのだ。

「……っ…」

「…?衣玖…っ…!」

異変に気がつくのはすぐだった。




 『月の宴の下で』




「…具合があんまりよくない。」

「そりゃあ、今日は『紅し夜』だもん。」

今日は、たまたま静葉の元へ訪れていた。つい話しこんでしまい、気づけば夜だった。秋姉妹の家で彼女ら…ともう一つ余分な陰がごろりとベッドの上で寝返る。奇跡の神の早苗だった。

じっと、窓から漏れる紅の光を見つめる。が、すぐに気持ち悪くなってそれから目を逸らした。

紅し夜。年に数回ほど起きるか起きないかの、珍しい現象。魔素という、特定の力の源であるそれがいつもよりもずっとずっと濃くなり、月を紅色に染めてしまう現象。未だにその発生条件は謎で、分かっていることは必ず満月の夜に訪れるということだけだ。

一般的に、『力』は大きく霊力、魔力、妖力の3つに分けられる。霊力は妖力に強く、妖力は魔力に強く、魔力は霊力に強い。ジャンケンのような力の強弱の関係がそれにはある。

一般的にどのようなものが、どんな力を持つのか。霊力は、人と深く関わりがあるもの。幽霊や神、またはそれらに携わっているものはこの力を扱う。この力には陰陽があり、神など聖なるものは陽、幽霊など邪なるものは陰になる。互いに対立しているため、互いのその力同士も苦手である。

魔力は西洋のもの、あるいは人ならざるもの。魔法使いや吸血鬼などがその力を扱い、この力を変換させて属性を持たせることも可能である。その属性ごとに強弱関係があるが、属性は一口に言い切れないため、それぞれの魔術に対しての対抗の術を臨機応変にぶつけるしかない。

妖力は、東洋の人ならざるもの。妖怪や妖獣が持ち、これには属性の概念は無い。力と力のぶつかり合い、あるいは属性を持たせるのではなく『現象』を具現化させるものである。狐火や雷などが代表的だろう。

それぞれの力は基本的に1種類しか持たないが、例外がある。例えば、人間。唯一3つの属性を同時に持つ。初めこそは微弱な量しか無いが、その幅を広げることができる唯一の種族だ。故に神に携わることができたり、魔術を扱うことができたり、妖怪になることができるのだ。

「早苗さんは現人神故、魔素には弱くて仕方がないでしょう。」

紅し夜は神たちにとってはやっかいなもので、何故か霊力は強まることがない。魔力が強くなれば、霊力の塊である神は、どうしても具合が悪くなってしまう。

穣子がある違和感に気がつき、ぽつりと呟いた。

「…でも、変なの。今日は妖力しか強くなってない。」

「妖力なら影響ないんじゃないの?」

「いや、凄く濃い。いつも魔力と妖力が濃くなるのに、その魔力の分が全部妖力になっちゃってる感じ。」

「…2つほど質問。何で純粋な神のあんたらは平気なの。それと、みのりん。力の感知は同じ力を持たない限りできないはず。霊力しか持ってないあんたが、なんでそんなこと分かるわけ?」

よく考えるとおかしい。それも、昔から自然と分かっていたようだ。

それを指摘されて、悩むそぶりを見せる。しばらく唸っていたが、やがて困った表情を見せた。

「…考えたことなかった。」

「何それ怖い。」

自分が魔力や妖力を持っているのであれば、話のつじつまは合う。しかし、どうしてそんなことになっているのかということは分からない。少し怖くなって、穣子は静葉に何か知らないかと尋ねる。が、彼女は首を横に振った。

「…そういえば、お姉ちゃんも平気なんだよね。」

「えぇ、平気ね。何でかしらね。」

少しだけ、その言葉に違和感があった。深く追求してやろうかと考えたが、何をどう追求していいのかが分からない。それ以上は、穣子は静葉に何も尋ねることができなかった。

「とりあえず、今日はお泊まりになられてください。その様子ではとても帰れないでしょうし、道行く妖怪共が凶暴化しているでしょうから…あら?」

じっと、窓をのぞき込む。そこには天から降り注ぐ、いくつもの光の筋があった。大きな音と共に大地に衝突し、また逆に大地から天に向かっていくかのような光だ。

「…もしや。」

先ほど…といっても半刻前のことになるが、衣玖と雷鼓の二人を見送ったことを思い出す。片方は妖怪で、片方は付喪神付喪神は道具の魔力によって動いているので、力としては魔力を携えていることになる。

魔力は妖力に弱い。今日は妖力がいつもよりも、それもいつもの紅し夜よりも増している。力の制御も、恐らく難しい。

考えられることは、多分皆同じだろう。

「…行ってくる。」

「待ちなさい。…穣子ちゃん、どうするつもりなの?」

「どうするもこうするも、衣玖さんを止めに行ってくる。」

ドアの方に向かおうとする穣子の腕を掴む。振り返ることなく、ただ姉の、紅葉の神の質問に淡々と答えた。

「戦えるの?」

「戦わない。止めるだけ。」

「止められるの?」

「止められるじゃなくて、止めたいんだ。」

「無事じゃ済まないわよ?」

「済むよ。あたしは死なない。」

間髪入れない返答。やれやれと、あきれたように一つため息をついて。その掴んだ手に何かを持たせた。

「…お守り。お姉ちゃんのスペルカード。2枚渡しておくわ。上手く扱えば、こっちのスペルカードも使えるはずよ。」

そっと腕を離す。確認すると、葉符『狂いの落葉』と、枯道『ロストウィンドロウ』だった。前者は威力が低い威嚇用のスペルカードなのでいつでも扱えるが、後者は持っている霊力を全て使う程の危険性があった(静葉にとっては知らないが)。秋符『フォーリンブラスト』は流石に危険すぎるようで、手渡された中には無かった。

「…ありがとう。それじゃ、」

「ーいってらっしゃい。」

ぱたん、とドアが閉じられる。その後ろ姿を見つめる静葉に、早苗はぐったりとしていた体を起こして尋ねた。

「…いいの?とてもじゃないけど、勝算なんて無いと思うわよ。」

「スペルカードを経由してこちらから力を送ったり、反対にこちらへ戻ってこさせることができます。どうなっているかも感知できますよ。穣子ちゃんしかできないのですがね。それを利用して、強制的に戻してやることは可能です。」

それに、とくすりと笑って早苗の方に改まる。

「貴方も、止めなかったではありませんか。」

「…まぁ、ね。あんなの、止められないわ。」

苦笑しながら、起こした体を再び寝かす。早苗にはかなり苦しいらしく、嫌な汗をかいていた。

外の世界は紅一色で、胸くそ悪くなりそうだった。






長さ的には過去話と一緒です。3、4話くらいで終わるかと。