ほんのり小話 67-2

ー1って、前入れるの忘れてましたねてっへぇ!!





「っ…どうしたっていうんだよ…!」

氷の湖。そこでは、いつぞやの異変のときのように、紅い光を帯びた霧がかかっていた。そこまで濃度は高くないし、月の光を浴びているだけなので、それ自体は普通の霧と何も変わらなかった。

だが、明らかに異様なものが一つ。

「…どうしたっていうんだ?嫌ですね…こんな素敵な満月ですよ?どうにもならない方がおかしいでしょう?」

右手には緋色の衣が巻かれ、大きなドリルを形成していた。数センチしか変わらない身長なのに、遙かに大きく見えるような錯覚に襲われる。見下されている、そんな感じだった。
先ほど、いきなり龍魚ドリルで突かれそうになった。それがどういったつもりによる行動かは分からない。が、確実に、彼女は襲ってきたのだ。

…いや、おかしいのは衣玖だけじゃない。

「…く、」

力が入らない。何とか悟られないように立っているが、いつ倒れてもおかしくない状況だった。

力が何者かに奪われていく。いつ事切れるかは分からない。切れてしまえば…

その先は、本能が考えるなと囁いた。

「衣玖、待って!わたしが分からないのか!?」

「分かりますよ。雷鼓、私の道具です。分からないはずないでしょう?」

そう言い返す衣玖の目は、明らかに酔っていた。それでいて冷たく、心臓を凍らされそうなほどだった。

「だったら…何でわたしを襲う!?」

「我慢できないのですよ…貴方も聞こえるでしょう?今宵は宴、紅の月の…」

耳を澄ますと、衣玖のようになっている者が多数いることが分かった。

咆咾、咀嚼、殺傷、喧噪。あちこちからそのような音がいくつも聞こえた。荒々しい獣や妖怪の、狂ったかのような。

「ねぇ、相手になってくださいよ。戦いたくて戦いたくて、仕方がないのです…貴方は私の言うこと、何でも聞いてくださるでしょう?では、このお願いも聞いてくださいよ。」

「…嫌だ、わたしは衣玖を傷つけることなんかできない!」

主の頼みならば。いつもそう考えて、逆らうことなんてしなかった。そもそも、命令らしい命令など彼女からされることは滅多になかった。

頼みごとと言いつつ、命令だということは分かる。初めての命令無視。眉間にしわを寄せて、龍魚ドリルを構えた。

「戦いなさい。貴方は私よりも強い…それが、この月の下…果たしてどのくらい強くなられているのか…ああもう、待てません。待つことなんて、」

デキナイ。

その一言と共に、龍魚ドリルが前に突き出される。それをとっさに避わすと、すぐに第2手がやってきた。

「雷符『エレキテルの竜宮』!」

衣玖を中心とし、無数の雷が周囲に落ちる。辛うじて回避できたものの、やはり行動が鈍くなっている。

「くそっ…一鼓『暴れ宮太鼓』!」

不本意ながらも、牽制のための一撃。だがそれを何とも思わず、右手のそれですべて薙ぎ払ってしまう。

いつもなら、1つすら受け止めることができなかったのに。衣玖が強くなり、自分は弱る。この絶望的な状況に、ただ焦ることしかできなかった。

「どうしました?貴方、実力はそれほどだというのです?」

「…本気、出せるわけないだろ…!わたしにとって衣玖は大切な人なんだ!そんなの、できるわけない…!」

本能的にいやがっているのか、それともこの月のせいなのかは分からない。力が入らないのは事実だし、衣玖と戦いたくないのも事実だ。

だからこれは嘘でも何でもない。睨みつけるが、それをものともしないような冷たい目で返す。

「ダメですね…主人の言うことを聞かない子には、」

タンッ、と地面を蹴る音、

「お仕置きが必要です!」

大きく、たたきつけるような動作。大きな動作だけに避けやすい…が、異様なまでに素早い。とても衣玖とは思えない動きだった。

「…なん…で…!」

いつも通りだと構えているとどうなるか分からない。分かりたくもない。

「…何で!何で戦う必要があるんだ!この月のせいだからか!?皆が騒ぐからか!?おかしいよ…こんなの、こんなの…!」

狂ったような、酷い奏楽。雷鼓からすれば、耳を塞いですべてを壊したくなるような、そんな酷いものだった。

「だから言っているでしょう。私が戦いたいから戦う。それだけだと。」

しかし衣玖にとってはそれが甘美に聞こえるのだろう。最早衣玖と呼んでもいいのか分からないが、確実に彼女は、

「…狂ってる…!」

風が強く吹く。霧が少し風に吹かれてどこかへ去った。

紅の霧。風もまた、紅。

風が弱まると同時に、衣玖は再び間合いを詰める。

「はああああああ!」

「ぐっーー!!」

その一突きを辛うじて受け止め、そのまま横へ受け流す。今回はできたが、多分できてもう一度だけだ。

「…わたしは戦わない!『ブルーレディーショー』!」

姿を隠し、軽快なリズムと共に弾幕を発生させる。リズムに乗せた弾幕は助々に衣玖を襲うが、今の彼女なら何ともないだろう。

それよりも、なるべくこのままやり過ごして、無駄な争いを避けたい。

「本当、頭の悪いーー」

一つため息をこぼし、弾幕に目もくれずにスペルカードを天に掲げ、

光星光龍の吐息』!」

刹那、無数の雷が空から降り注ぐ。圧倒的な数、それよりも、

「ぅ、ああああああ!」

当たらないようになっていたはずの雷鼓に、容赦なく雷が命中する。無防備な体勢だったために、モロに受けてしまった。

更にいつも以上に威力が強い。自分が弱っていることもあり、その一撃だけで地面に膝をつく。何とか意識は手放ずに済んだ。

「…紅の宴ですよ?逃げる姿勢も、その青も、全て浮いています。それにどうやら、ここまでやっても本気になってくださいませんし…」

ドリルを突きつけられる。胸元のやや左の部分ーー心臓の位置だ。

「死んでください。」

「ーー!!」

そのまま射抜かれて終わり…いや、自分は付喪神だ。人間の体を突かれただけでは、まだ生きている。

ただ流石に、こうも力が無いと無理かもしれないし、太鼓が壊されればそれこそ本当に

「ーーやっぱりね。」

終わる、そう考えようとして、一つ人影が増えていることに気がついた。

衣玖も彼女の姿を見つけると、すっとその武器を降ろす。微笑んで、彼女に尋ねた。

「…おや、穣子ではないですか。どうしたのです?貴方もこの月の宴の参加者なのですか?」

「月の宴、ねぇ…あながち間違っちゃいないかな。」

じっと空を見る。狂おしいほどに紅い、その月を。

雷鼓に豊符『穀物神の約束』で自分の霊力をわけ与え、その傷を塞ぐ。弾幕で使用する以外にも用途があるスペルカードを彼女はいくつか持っていた。それは、そのうちの一つだ。

霊力を分け与えるはずなのに、種族を選ばないという不可解なところがある。それは穣子自身よく分かっていない。

「…巻き込まれないとこまで逃げて。君は、この月の下では力を十分に発揮できない。だから、逃げてて。」

「……」

分かった、と小さな声で返答する。彼女を救いたいという気持ちは強いだろうが、何もできないことは先ほどの一撃で嫌でも分かってしまったのだろう。

不安そうな彼女を後目に、二人に言った。

「衣玖さんが…いや、妖怪がこんなにも騒いでるのは、今日が『妖の紅し夜』だからなんだ。」

それが、どういう日かを簡単に説明する。雷鼓はそれを聞くと、先ほどの衣玖の行動に納得ができたのか、少しだけ安心したような表情を見せた。

「そういうことでしたか…どこもかしこ、血まみれで紅だらけだと思いましたら…」

それならば、やることは一つだ。その説明を受けても、衣玖は羽衣を手放さない。

「穣子。月が綺麗ですね。」

「そうだね…あたしからしたらちょっと悪趣味だけどね。」

「遠慮することはありませんよ。さあ、」

 ー殺し合いましょう?

無邪気に、狂ったような笑顔を見せる。いつもの衣玖からはとても想像できない、そんな表情だった。

穣子はそれに対し、にやりと笑って、

「残念だけど、あたしは宴の参加者じゃない。」

スペルカードを、構えた。

「…反逆者だ!」

「…!」

数発弾幕を放つ。威嚇攻撃…いや、挑発によるものだった。

臨戦態勢。それを確認すると、にやりと笑った。

「…いいですね…では、楽しませていただきましょうか!」

避けるために後方に飛んだ衣玖が、一気に前に飛ぶ。振るわれる剣のようなドリルを避け、叫んだ。

「『ロストウィンドロウ』!」

スペルカードではないスペルカードの利用。その宣言と共に、強い痛みを覚えた。

手のひらを地面につける。その刹那、大地から一本の木が伸びたかと思うと、一本の杖のように変形した。

それを手でしっかりと握る。その光景を、ずっと衣玖は攻撃せずに見ていた。

「おや、そんなことができたのです?」

「まあ、ね…残念ながら…いや、君にとっては嬉しいことだね。」

くるくると手の上で踊らせ、構える。

「…反逆者だって言っておきながら。あたしも、月の余興に付き合わされてるみたいだ。」

この杖の召喚には膨大な力が必要となる。が、それは3つの力のどれでもいい。それならば、今一番飽和している妖力で作ってやれば、反動をほぼゼロにできる。

静葉の言葉は、このためだったのだろう。

「素晴らしい。ではーー」

ドリルが鋭くなる。まるで剣のようだ。

穣子のものは杖といいながらも、頑丈さの点ではあの天狗が持っているような刀よりも堅い。殺傷能力は無くとも、牽制程度なら十分に近接の攻撃にも使える。

「踊りましょう!」

「紅し夜が終わるまで、ね!」

そう、終わるまででいい。夜明けさえやってくれば、この忌々しい夜は終わる。

その間持ちこたえればいい。傷つけない、それはできればそうしたいところだが、自分の技量ではとても不可能だ。

本気でいかなければ、殺される。

「はああああああっ!」

剣をひらりとかわし、その杖を振るう。大地から数本の植物の蔦が串のようになり、一気に地上へと伸び上がる。

それを後方にジャンプして回避する。それを薙ぎ払い、己の剣が振るいやすい環境に作り替える。

その間も穣子の攻撃の手は休まらない。地面がやや盛り上がるのを感知し、ひらりと避ける。スカートの裾にひっかかったが、少し破れただけだった。

下がった分、また前方に横に反復しながら距離を詰める。

「『龍神の怒り』!」

回転音。突き出されたその先端に、杖の中心部分でなんとか受け止める。折れる気配はないものの、その威力に体が自然と後ろへ下がった。

「…おっかしーね、あたし。止めるだけのつもりだったのに、真っ向勝負を挑んじゃってるよ。」

「いいではありませんか。…一度、貴方とは本気で手合わせを願いたかったのです!」

本気と本気のぶつかり合い。互いに戦うことを好まないはずなのに、今は互いの血を求め、ただ争い合う。

月の、殺戮の宴。酒は力。肉は目の前の妖怪。それは、自身から奪いに行くもの。

何を我慢する必要がある?何を躊躇う必要がある?

宴は、始まったばかりだ。







4までですね。

祝、三周年!!&ほんのり小話 67

ほんっと皆様のお陰ですありがとうございます!
そして私は日付感覚がなくなり、クイズの存在をすっかり忘れていましたえっへぇ!!
ってことで、みのりんふぁんたじあ第6弾やりましょう(うごで出したあれ)。ただし、予告してた平和な話では全くないのであしからず!!
うごメモで見る方が今回の話はオススメだったりします。いやぁね、うご用に書いたら、のちのち要る複線が貼れてたから、もうこれ6にしちゃえっていう、そんな投げやりにあああああすみませんすみません、くっそ忙しかったんですこの夏休みこれで許してぇ!!
あとタイトル変えてます。本命のタイトルはうごの方です。検索避けだと思ってください…





「それにしても、すっかり遅くなっちゃったなー。」

穣子らの家からの帰り道。衣玖と雷鼓は二人並んで湖の方へと向かっていた。天界に帰るときや逆にやってくるときは、いつもここを経由することにしている。ここからでは帰れない、というわけではないが、夜で辺りが暗い分、少しでも慣れている道を通りたかった。

「すみません、私が長話をしてしまったばかりに。」

「いいよいいよ。楽しそうだったし、あんなに幸せそうな衣玖を止めることはできないよ。」

これでは雷鼓がのけ者になっていたように聞こえるが、別にそういうわけではない。彼女も会話に混じり、笑っていた。

ちらり、と雷鼓を見る。その顔には嘘は無かった。いつでも自分のことを一番に考えてくれている。申し訳なくなりながら、衣玖はその帰路をやや早足で進んでいった。

「…!」

そして、森を抜けて気がついた。いつから、いや、森に入ったときからだったのかもしれない。

湖面に反射する光から気がつき、辺りを見渡す。上を見上げると、その異変に気がついた。
 月が、紅に染まっていたのだ。

「……っ…」

「…?衣玖…っ…!」

異変に気がつくのはすぐだった。




 『月の宴の下で』




「…具合があんまりよくない。」

「そりゃあ、今日は『紅し夜』だもん。」

今日は、たまたま静葉の元へ訪れていた。つい話しこんでしまい、気づけば夜だった。秋姉妹の家で彼女ら…ともう一つ余分な陰がごろりとベッドの上で寝返る。奇跡の神の早苗だった。

じっと、窓から漏れる紅の光を見つめる。が、すぐに気持ち悪くなってそれから目を逸らした。

紅し夜。年に数回ほど起きるか起きないかの、珍しい現象。魔素という、特定の力の源であるそれがいつもよりもずっとずっと濃くなり、月を紅色に染めてしまう現象。未だにその発生条件は謎で、分かっていることは必ず満月の夜に訪れるということだけだ。

一般的に、『力』は大きく霊力、魔力、妖力の3つに分けられる。霊力は妖力に強く、妖力は魔力に強く、魔力は霊力に強い。ジャンケンのような力の強弱の関係がそれにはある。

一般的にどのようなものが、どんな力を持つのか。霊力は、人と深く関わりがあるもの。幽霊や神、またはそれらに携わっているものはこの力を扱う。この力には陰陽があり、神など聖なるものは陽、幽霊など邪なるものは陰になる。互いに対立しているため、互いのその力同士も苦手である。

魔力は西洋のもの、あるいは人ならざるもの。魔法使いや吸血鬼などがその力を扱い、この力を変換させて属性を持たせることも可能である。その属性ごとに強弱関係があるが、属性は一口に言い切れないため、それぞれの魔術に対しての対抗の術を臨機応変にぶつけるしかない。

妖力は、東洋の人ならざるもの。妖怪や妖獣が持ち、これには属性の概念は無い。力と力のぶつかり合い、あるいは属性を持たせるのではなく『現象』を具現化させるものである。狐火や雷などが代表的だろう。

それぞれの力は基本的に1種類しか持たないが、例外がある。例えば、人間。唯一3つの属性を同時に持つ。初めこそは微弱な量しか無いが、その幅を広げることができる唯一の種族だ。故に神に携わることができたり、魔術を扱うことができたり、妖怪になることができるのだ。

「早苗さんは現人神故、魔素には弱くて仕方がないでしょう。」

紅し夜は神たちにとってはやっかいなもので、何故か霊力は強まることがない。魔力が強くなれば、霊力の塊である神は、どうしても具合が悪くなってしまう。

穣子がある違和感に気がつき、ぽつりと呟いた。

「…でも、変なの。今日は妖力しか強くなってない。」

「妖力なら影響ないんじゃないの?」

「いや、凄く濃い。いつも魔力と妖力が濃くなるのに、その魔力の分が全部妖力になっちゃってる感じ。」

「…2つほど質問。何で純粋な神のあんたらは平気なの。それと、みのりん。力の感知は同じ力を持たない限りできないはず。霊力しか持ってないあんたが、なんでそんなこと分かるわけ?」

よく考えるとおかしい。それも、昔から自然と分かっていたようだ。

それを指摘されて、悩むそぶりを見せる。しばらく唸っていたが、やがて困った表情を見せた。

「…考えたことなかった。」

「何それ怖い。」

自分が魔力や妖力を持っているのであれば、話のつじつまは合う。しかし、どうしてそんなことになっているのかということは分からない。少し怖くなって、穣子は静葉に何か知らないかと尋ねる。が、彼女は首を横に振った。

「…そういえば、お姉ちゃんも平気なんだよね。」

「えぇ、平気ね。何でかしらね。」

少しだけ、その言葉に違和感があった。深く追求してやろうかと考えたが、何をどう追求していいのかが分からない。それ以上は、穣子は静葉に何も尋ねることができなかった。

「とりあえず、今日はお泊まりになられてください。その様子ではとても帰れないでしょうし、道行く妖怪共が凶暴化しているでしょうから…あら?」

じっと、窓をのぞき込む。そこには天から降り注ぐ、いくつもの光の筋があった。大きな音と共に大地に衝突し、また逆に大地から天に向かっていくかのような光だ。

「…もしや。」

先ほど…といっても半刻前のことになるが、衣玖と雷鼓の二人を見送ったことを思い出す。片方は妖怪で、片方は付喪神付喪神は道具の魔力によって動いているので、力としては魔力を携えていることになる。

魔力は妖力に弱い。今日は妖力がいつもよりも、それもいつもの紅し夜よりも増している。力の制御も、恐らく難しい。

考えられることは、多分皆同じだろう。

「…行ってくる。」

「待ちなさい。…穣子ちゃん、どうするつもりなの?」

「どうするもこうするも、衣玖さんを止めに行ってくる。」

ドアの方に向かおうとする穣子の腕を掴む。振り返ることなく、ただ姉の、紅葉の神の質問に淡々と答えた。

「戦えるの?」

「戦わない。止めるだけ。」

「止められるの?」

「止められるじゃなくて、止めたいんだ。」

「無事じゃ済まないわよ?」

「済むよ。あたしは死なない。」

間髪入れない返答。やれやれと、あきれたように一つため息をついて。その掴んだ手に何かを持たせた。

「…お守り。お姉ちゃんのスペルカード。2枚渡しておくわ。上手く扱えば、こっちのスペルカードも使えるはずよ。」

そっと腕を離す。確認すると、葉符『狂いの落葉』と、枯道『ロストウィンドロウ』だった。前者は威力が低い威嚇用のスペルカードなのでいつでも扱えるが、後者は持っている霊力を全て使う程の危険性があった(静葉にとっては知らないが)。秋符『フォーリンブラスト』は流石に危険すぎるようで、手渡された中には無かった。

「…ありがとう。それじゃ、」

「ーいってらっしゃい。」

ぱたん、とドアが閉じられる。その後ろ姿を見つめる静葉に、早苗はぐったりとしていた体を起こして尋ねた。

「…いいの?とてもじゃないけど、勝算なんて無いと思うわよ。」

「スペルカードを経由してこちらから力を送ったり、反対にこちらへ戻ってこさせることができます。どうなっているかも感知できますよ。穣子ちゃんしかできないのですがね。それを利用して、強制的に戻してやることは可能です。」

それに、とくすりと笑って早苗の方に改まる。

「貴方も、止めなかったではありませんか。」

「…まぁ、ね。あんなの、止められないわ。」

苦笑しながら、起こした体を再び寝かす。早苗にはかなり苦しいらしく、嫌な汗をかいていた。

外の世界は紅一色で、胸くそ悪くなりそうだった。






長さ的には過去話と一緒です。3、4話くらいで終わるかと。

九十九姉妹と秋姉妹は仲良くてもいいかなって。

妖「タイトル通りですよー。」



弁「t 静「(パイルドライバー)仲良し?ご冗談を。」

八「おねえちゃぁあああああん!!」

穣「うん、いや、あのね?そろそろその即埋めやめない?」

静「害悪な蚊を手でプチッとやるのと同じよ。」

穣「違うと思うなー?」

八「…お、おね、おねーちゃ…」

穣「ほらもー、この子すっごいおびえちゃってるじゃんか。…八橋は埋めないの?」

静「え、八橋ちゃんは可愛いもの。」

八「ひっ…」

穣「…八橋は完全おびえてるけどね。」

静「まだ私たちのことに慣れていないだけよ。ねー、八橋ちゃん?」

八「…こ、来ないでぇ…!」

穣「あのー、絵面が幼女と犯罪者にしか見えないのあたしだけ?」

弁「…ったく…すぐ埋めんなこのアマァッ!!」

静「おや生きていたのです?そのまま微生物に食われてしまえばよろしかったのに…」

弁「やられてばっかりだと思うなよこのババァが!!」

静(ピクッ)

穣「(あ、まずい)八橋、ちょっとおいで。今からお姉ちゃん達が大切な話するから。」

八「え、あ、えっと…う、うん!」

穣(…弁々、今度こそ死んだね)





八「お姉ちゃん…何の話してるのかなぁ?」

穣「幻想郷の明日の株価。」

八「…かぶかってなぁに?」

穣「うーん、ツッコミが欲しかったなー。八橋にはまだ早いかー。」

八「…あ、あの!」

穣「ん?」

八「…名前、まだ聞いてなかったから…」

穣「そういえば。あたしは秋穣子…あの君から見たら犯罪者に見える人の妹だよ。」

八「そうなんだ。…あの、穣子ちゃんもその…」

穣「ん?あぁ、いや、あたしはあんなこと出来ない出来ない。あれはお姉ちゃんだけの必殺技(必ず殺す技と書いて必殺技)。あれはもう、理屈では証明できないしね。」

八「そっか…うん、何となく分かるよ。穣子ちゃん、とっても優しそーだもん!」

穣「初対面でそんなこと言われたのは初めてだよ。そんな風に見える?」

八「見えるー!」

穣(…からかえない人種っていうの、始めて見たなぁ…)






こんな感じ?八橋ちゃん、最終的には静ちゃんにもなつきますが。
最終的の見え方はこんな感じで。

穣→静 優しい(?)お姉ちゃん
穣→弁 変態
穣→八 妹みたい

静→穣 命に変えても守り通すかけがえのない可愛い可愛い妹
静→弁 幻想郷をお前の血で染めてやろうか
静→八 可愛い

弁→穣 若葉
弁→静 美しく残酷にこの大地から逝ね
弁→八 (自分にとっての)嗜好品>八橋

八→穣 一番必要としてくれてる気がする
八→静 怖いけど悪い人じゃなさそう
八→弁 大切なお姉ちゃん



そんな私はどんどん八橋ちゃんちゃんの株が上がってきてやばいです。
もうこれ、みのやつ推していいんちゃうかな。

八橋ちゃんできる子!

妖「おまけ面子ですよー。」



八「えへへ…褒められちゃった!」

弁「……」

キ「どうしたの、そんな難しい顔して。」

弁「…八橋の方が、琵琶を弾くのが上手い。」

キ「え。」

静「貴方が下手糞なだけでしょう?」

弁「はっ、弾いたことのないやつに何が分かるっていうんだ。お前なんか、弾くことすらできないくせにな。」

静「あら、それは誤弁ですよ。なんなら私が…貴方のその琵琶、弾いて差し上げましょうか?」

キ「ほらほらやめい!喧嘩しないの!」

夢「いやー若いときに喧嘩するものよー?年いってからじゃなっかなかしないもの!」

キ「おめぇ何歳だ!ババァか!!」

夢「誰がババアですって!?」

布「喧嘩じゃ喧嘩じゃ!!」

キ「ただのツッコミだっての!!っていうかそこのアホ白髪も便乗すんな!!」

布「アホ白髪とは誰のことじゃ?」

キ「てめぇだよ!!」

静「…さて、と。で、八橋ちゃん、八橋ちゃんって何ができるのかしら。」

八「適正?適正はねー、(器用、精神)+(慎重、正直、平和、社交、内向)と、(敏捷、知力、生命)+慎重 に黄緑適正だよ!」

静「…敏捷、知力、生命?」

弁「こいつの能力どうなってんだ。」

八「能力的には器用さと精神がおんなじくらいみたい。えへへっ、これって珍しいタイプなのかな?」

静「生命の高い早苗さんですね。」

八「…!!」






八橋の能力
器用9 敏捷7 知力7 筋力1 生命6 精神9
盗賊早苗と比べると、八橋ちゃんは知力、生命、精神が高く、器用と筋力が低い。敏捷は同値。間違いなくこれ八橋ちゃんの方が使いやすいんじゃ。
正直無駄のなさすぎるパラメーター。早苗よりも生命高くて敏捷一緒とか、涙出るね。

衣玖さん。

妖「あ、皆さんもうすぐ15日…犬得3周年ですよー。だからなんだって怒られそうです。」





穣「衣玖さん。」

衣「何でしょう。」

穣「衣玖さんの涙腺が崩壊しててびっくりするしかないんだけど。」

衣「…はい?」

穣「あと敬語が荒くなってきてる。」

衣「え、そ、そうでした?え、あの、それっていつかr

穣「衣玖さんってホントに衣玖さん?」

衣「え、えぇ、私は衣玖ですよ

穣「ドッペルゲンガーとかじゃない?」

衣「ち、違います、違いますって

穣「ホントに違うって断言できる?」

衣「え、あ、う…そ、それは…」

穣「あ、いや、できるか。」

衣「そ、そうなのです?」

穣「ドッペルの中には死んだ本人にそっくりに成り代わる…それは記憶も、見てきたものも、感情も…そんなタイプのドッペルだったら、証明できる。」

衣「そうじゃなかったらできないということですね。」

穣「言動からしてそのタイプのドッペルだろうから…衣玖さん。」

衣「はい。」

穣「うぉおおおおおおお死ねぇえええええええ!!」

衣「!!?ぎゃぁああああああああああっ!!?」






穣「という夢を見た。」

衣「物騒すぎますし、いらない不安植えつけないでください。」

べべーんおめでとうってことで。

自動車の卒検受かりました!
味噌の姉さんとこのイラコンでべべーんが一位取りました!!
ってことで。






弁「はっはっはっはっ!!まーあー?これが私の時代ってやつー?あのフランやこいしを差し押さえて私が一位…どうだ!」

レ「もうマイナーなんて言わせないわ…私ももうマイナーなんて言わせないわ…!!」

穣「うわあ。」

藍「うわあ。」

弁「あーこれはこれはどーもー?過去にイラコンに出場して『メイキング見たい賞』と『2位』っていう脆弱な賞にしか入れなかったお・ふ・た・り・さぁん?」

レ「私たちより人気なのにかっわいそーwwwやっぱり弱者が勝つ時代なのよ弱者が…ははははははは!」

穣「…なんか、とてもうざいねあれ。」

藍「だな…まあ、元々反省点あること承知で出されたのが私たちだったからなぁ…」

穣「その点べべーんは力作だって言ってたもんね。そりゃあ、賞取れない取れない。」

弁「運がなかったんだなーははっ、かっわいそー!」

穣「まぁ取れなかったものは犬の力不足だとして…なにこれ。」

 犬のイラコンの作品メモ

穣「……」

 ・レティのやつ
良点:氷頑張った、布の透明感、風のような演出のあれ
悪点:モアレ放題、線の処理が甘い、青すぎて残念感
でも比較的いいものではある。

穣「…ちゃんとレティのやつにも反省点あるじゃん。」

レ「自分のやつ見てみなさいよそしたら。」

 ・みのりんのやつ
良点:頑張りは認める
悪点:色が汚いってか配色完全ミスって悪魔とか魔界を連想させられる
   ごちゃごちゃしすぎて汚い
   汚い
   とにかく汚い

穣「…予想以上にボロクソ言われてた。」

藍「嫁キャラだというのに容赦ないな。」

弁「で、これが藍か。」

 ・藍のやつ
良点:尻尾綺麗
悪点:シンプル

藍「短っ!?」

穣「まとまりすぎてとても地味に見えるってやつか…ご愁傷様。」

レ「それを見るとまだ穣子のやつに愛を感じるわね。」

穣「ボロクソに言われてるのに愛を感じるってのも変な話だけどね。」

弁「で、最後に私っと。」

 ・べべーんのやつ
良点:虹色の弦と演出がとても綺麗、ガラスっぽい花びらが綺麗、太もものチラリズム
悪点:スカートのめくれ方がとてもおかしい
   ぶっちゃけこれ気づいたらとても違和感

弁「…うん?」

穣「あ、確かに。左足、明らかにスカートおかしい。」

藍「もう少し手前にスカートが来ていれば正しいのだが…」

レ「めちゃくちゃ平面ね。」

弁「…まあ、気づかなければよし!」

穣「これは気づくよ!?」





反省ポイントをまとめると絵が上手くなるって、おっちゃん言ってた。




コメ返。
ティーダさん

初めから分かっていた。確信していた。
ただ無意識のレベルだっただけで。自分でそれに気付くことができなかっただけで。

けれど、跳ばなかったらきっと分からないままだった。
気付くことは出来なかった。

それだけでも、あたしにとっては大きな収穫だったのだと思う。


哲学楽しい((
私の書く小説って大半哲学ですしねー。


あら、こっちの方来たのですね。京都とか頑張れば行けますね私w
ただ京都は実は結構行きにくいんですよねぇ…岡山と大して距離変わらないはずなのに、岡山は最早散歩感覚ですよ(ただし大都会岡山周辺限定)。

あぁすいません、言い方が悪かったですね。
自由行動で、15時に集合だったのに、私たちのグループ14時に集合したんですよw先生も流石に早ぇよ!って苦笑してましたw
その後暇だったから親友と近くの森ではしゃいできました。

ほんのり小話 66

とても、短いみのいく。






帰るところがある。

帰るところには灯りがある。

灯りがあるから迷わず帰ることができる。

その灯りがあるところが、帰るべきところとなる。



その灯りって何だろう。

些細な疑問だった。

あたしにとって、疑問というのは好奇心。

好奇心というのは恐ろしい、人を殺すというのもよく分かる。

止められない、どうしようもなく、それは止められない。

あたしは一つ好奇心を抱けば、そのためにまっすぐになる。

一途になって、周りが見えなくなる。

熱中なんて、生ぬるい。

分かっていても、止められないから恐ろしい。





「……ふぅ。」

妖怪の山には大きな崖がある。あたしは過去に、ここから落ちたことがある。

別に死にはしないし、ちょっと大きな怪我を負うくらい。か弱い種族ではないから、その内治って、また歩けるようになる。

だから別に怖くない。

「…それじゃあ、いってみようか。」

トンッと、その場を跳んだ。

恐怖なんて全く無かった。

だってすべて、それは好奇心によるものだったから。

殺意よりも、憎悪よりもあたしはそれが恐ろしいと思う。

そこには悪気も何もない。ただ無邪気に、知りたいという、そんな気持ちがあるだけだから。

善悪なんて関係ない、それ以上に恐ろしいことをあたしは知らない。


さて、あたしはこれで、どこへ帰ろうとするか。

多分そこが、あたしが帰るべき場所なのだろう。



「…うん?」

跳んだ、つもりだった。

しかし気づけば、それは叶っていなかった。

誰かに抱きしめられるような感触。強く、手放さないようにぎゅっと力を入れられていた。

「…貴方、何を考えていたのです!?何をしようとしていたのです!?」

半狂乱になった声だった。耳元で大きな声を出されると、流石に煩い。

ただ、何を慌てて、そんなに泣きそうになっているのか。それが、分からなかった。

「何か思いつめるようなことがあったのです!?それでしたら、私にまず相談してくださいよ!何が、何が貴方を…!!」

「…あぁ、」

そういうことか。ここまできて、やっと分かった。

好奇心はこれだから怖い。そんな風に見えるなんて、眼中に無かった。

これがいつも通りなら、多分すぐに気づけたのだろう。

「そっか。確かにこれじゃあ、『自殺』だね。」

「そうでしょう…って、え?」

「ごめんごめん。気づかなかった。」

流石にあっけにとられてぽかーんとしてるのか、声が返ってこない。あたしはその様子に、自分の過ちに少し苦笑した。

崖から落ちて、怪我を負って。そこから、どこへ帰ろうとするのか。その帰ろうとしたところが、多分あたしにとっての灯りがあるところで、帰るべきところなのだろう。そう思ったから、ここから落ちて、怪我するつもりだった。

そう説明すると、手に篭る力が強くなった気がした。

「…もしそれで、死ぬことはないかもしれませんが、本当に、本当に死んだ場合、どうするつもりだったのです?」

「そこが帰る場所だったってことじゃないのかな。」

「バカです…本当に、貴方は。」

ぱらぱらと、崖の土が少し落ちる。それをじっと見つめた。

下には緩衝材となりそうなものは何も無い。落ちたらそれこそ、大怪我を負う、いや、負った崖だ。

飛び降りる恐怖が無いというのは、無鉄砲だったこともあるけれど、それ以上に多分、こんな意味があるんだと、今になって思う。

「酷い話だ。もうあたしには灯りが何で、どこが帰るべき場所か、自分で分かってたんだ。」

「…はい?」

「分かってたから、帰る場所がしっかり分かってたから飛び降りるとき、恐怖がなかったんだ。道に迷う自信がないし、目的もしっかりしてる。だから、あたしは迷わず跳ぼうとしたんだ。なぁんだ、最初から全部分かってたってことじゃんか。酷い話だ、ホント、酷い話だ。」

その言葉に、何を言っているのか分からないといったような、戸惑う声が漏れていた。それに対して、くすくす笑いながらこう答えた。

「帰るべき場所。跳ぼうとしたから、帰れた。」

「…??」

やっぱりその意味も、彼女は分かっていなかった。











何だこれ。
文章的には一つ工夫がありまして。穣子、一切後ろを振り返っていません。だから衣玖さんという単語は文中に一切無かったし、彼女を『見ずに』分かる情報しか地の文には無かったりします。




コメ返。
ティーダさん
米俵ビーム、あんぎゃぁあああああ

一応今は仮免許は持ってますよー。ど田舎なので、自動車免許持ってないとどこにも行けないという悲しい現実がですね…

修学旅行は私は中学のときは嫌でしたね…高校は楽しかったのですが。
頑張ってください(何を)…あれは、条件次第では本当に辛いですからね…!
というこっちは中学のとき、自由行動のグループが男子が比較的平和な人だったわ唯一といっていいくらいの仲良しの友達と組めたわで気楽でした。人酔いして半分くらいフラフラしてましたが…
集合時間の一時間前に到着したのは最早伝説。

オレカバトル楽しいですが、まぁお金がぶっ飛びますね。
しかし1プレイでフロウさんの声が聞けると思えば((おいヤメロ


<なーちゃんさん
いやぁ本当に長らく更新できずに申し訳ない…10日くらいになれば多分平日更新に戻ると思います。

やっぱり秋はいいですよね!気候は涼しく、金色の稲穂、広大な夕焼け、鮮やかな紅葉…至高の季節ですほんとに!!

私も間違いなくペーパーになります。少なくても大学生のうちは絶対乗りませんw
あ、始めたんですねー。時々落書投稿しますのでよろしくお願いしまーす。