私は独り歩いていると、偶然にも魔法の森の付近にいた。
そこで『私』は、二人目の人…もとい、半人と出合った。
「…珍しいですね、このような寒いときに外を出歩く妖怪…ですか。」
以前幽香に言われたのと同じような言葉。それもそう、このとき自覚はあんまり無かったけれど、私の能力は寒気を操る程度の能力を持っている。だから、自然と『私』がいるところはかなり寒かったらしい。
それ故、誰も『私』の前に姿を現さなかった。それにまだ気付かなかった『私』は首を傾げる。
「…そんなに寒いのかしら。」
「私が寒いと思うくらいですからね。相当寒いですよ、今日は…というより、ここは。」
半分死んでいるせいで、寒さには少し強い体質なんだとその人は言う。
『私』は無言で、自慢げに話すその声を静かに聞いていた。
「とは言っても、本当に寒いのに耐えられるかと言ったら、結構そうでもなかったりするのですよね。」
そう言って、体を震わせる。かなり無理していたんだと思う。
それが彼女の気遣いだった。出来るだけ寒いことを隠そうとしている…このときから、雪女か何か、彼女もまた気が付いていたのだろう。
勿論、そう思ってくれていることを『私』は知らない。
「…さて、と。あなたはどこか行くあてがあるのですか?私は今用事を済ませて帰るところでして…時間がありますので、よかったらそこまで送りますよ。」
「…あてなんて無いわ。」
だって、『私』はこの白い世界をさまようだけの存在。
ただふらふらと出歩いて、冬が終わると眠りにつく。
そんな妖怪の行くあてなんて、一体何処にあるというのか。
「あなた…もしかして一人なんですか?」
その一人というのは一体どういうことか。
この場には二人いるのに、一人と尋ねてくるその意味は。
流石にこれは、『私』にもどういうことか、すぐに分かった。
「…えぇ、ずっと『独り』。この先、これからもずっと…私は独りなのよ。」
「…そう、ですか。」
悲しい妖怪ですね、とでも思われたかもしれない。
少し彼女は考えて、やがて、
「…また、ここに来ますか?」
「…?どうして?」
『私』の知らない、とても温かい笑顔で、
「私…あなたと友達になりたいなって、思って…別に人助けだとか、可哀想だからだとか、そんなつもりは一切ありません。
ただ、自分とは全く違う世界に住んでいるあなたのことがとても気になったのです。」
『私』は勿論、首を縦に振った。考えるまでもなかった。何よりも、嬉しかったから。
それは『私』にとって、始めての友達になった。
そう、『私』にとって、は。
「…私の名前は魂魄妖夢です。冥界のお嬢様、西行寺幽々子様に仕えているので、毎日は来れないと思いますが…」
「いいの。…時折、姿を見せてくれるだけで…それだけで、私は満足よ。」
それから三度の冬、何度か会って、そして別れて。
『私』はもう、独りだと思うことは無くなった。
そうして…四度目の冬が来た。
時系列大丈夫かしら…